期待と失望のあいだで、人間関係は少しずつ変わっていく

小橋広市

小橋広市

テーマ:関係性コンディショニング

「なんでわかってくれないの?」そんな気持ちが募るとき、私たちは、知らず知らずのうちに相手に“理想”や“期待”を重ねているのかもしれません。でも、その期待が大きすぎたとき、関係はそっと距離をとり始めることもあります。失望するのは、期待していた証。その“あいだ”にあるものを、一度、静かに見つめるのもいいかもしれません。
期待値のズレ
私は一人っ子なので、どこでも上手に一人の時間を楽しめます。もちろん、友だちと過ごす時間も大好きです。でも、話が合う相手なら何の問題もありませんが、ちょっと気を使う相手だったりすると“話の間”が怖くなってしまい、つい話題を探しながら喋り続けようとしてしまいます。

そんなとき、自分の中に「こうあってほしい」という無意識の期待があることに気づきます。人間関係がギクシャクする時って、たいていこの“期待”が過剰になっている時ではないでしょうか。

昔、こんなことがありました。私がまだ音楽に夢中だった頃の話です。友人と話していたとき、私がずっと探していたレアモノのレコードをその友人が持っているということが分かりました。

「えっ、それずっと欲しかったやつ!」と私が反応すると、友人は「もう聴かないし、お前にあげるよ」と言ってくれました。私はうれしくなって、彼の気が変わらないうちに約束を取り交わし、連絡を楽しみに待っていました。

ところが、何日待っても音沙汰がありません。しびれを切らして電話をすると、彼はこう言ったのです。「渡す前に、最後に一回だけ聴いたら、やっぱり惜しくなっちゃってさ」と。

当時、自分でも驚くほど腹が立ちました。結局その一件がきっかけで、しばらく絶交状態になりました。今思えば、ダビングしてもらえばよかっただけの話です。でも当時は、それすらも冷静に考えられませんでした。

この出来事から学んだのは、人間関係の不満は、たいてい“期待値のズレ”から生まれてくるということ。相手の言葉や行動が、自分の想定していたとおりにならないと、落胆や怒りにつながってしまうのです。

とはいえ、相手にまったく期待しないというのも、なんだか味気ないものです。人との関係において、期待しすぎず、しなさすぎず。「ちょうどいい距離感」と「少しの余白」が大切なのだと、今では思っています。

 

【小さな実践】
あなたが誰かに期待していたことが、思い通りにいかなかったとき。感情的になる前に、あらかじめ“切り替えのパターン”を持っておくと助けになります。
・「まあ、そういうこともあるよね」と、心の中で一度つぶやいてみる
・別の選択肢を事前に準備しておく(ダビングでもよかったように)
・相手の立場に立って、「惜しくなった気持ち」も理解してみる
心に少しの“余白”があることで、関係を壊さずにすむ場面は、意外と多いのかもしれません。

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小橋広市(講師)

一般社団法人Self&Lifeコンディショニング協会

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