一番観えてないのはあなた
先日、久しぶりに昔の知人とランチをしました。お互いの近況を話している中で、「最近、部下との関係が難しくて…」という悩みが出てきました。彼は管理職になって数年。上司としてどう接するべきか、叱るのも褒めるのも、以前より慎重になったと言います。
その話を聞きながら、ふと、最近私のもとにも増えてきた「ハラスメント」に関する相談を思い出しました。とくに多いのが、「パワハラかもしれない」「どこまでがセクハラなの」といった曖昧なグレーゾーンのケース。
職場のすれ違い、その背景にあるもの
こうした相談には、明確なハラスメントもありますが、実は「誤解」や「思い込み」から生じていることも少なくありません。言葉の受け取り方や、そのときの感情、立場の違いによって、同じ出来事でも見え方が大きく異なるものです。
例えば、「無視された」と感じた部下がいたが、実際は上司がただ忙しかっただけだった。「厳しく注意されて怖かった」と言う部下に対して、上司は「それだけ期待していた」というような話もよくあります。職場で起きる“すれ違い”の多くは、このように「相手の意図を正確に捉えきれなかった」ことに起因しています。
グレーゾーンの難しさと時代の変化
ハラスメントには明確な基準があるようでいて、実際には“グレーゾーン”のケースが少なくありません。誰かが「傷ついた」と感じれば、それは一つの事実として受け止める必要がある一方で、すべてがハラスメントと断定できるわけでもない。この判断の難しさが、現代の職場の大きな課題です。
私が新人だった頃は、上司の言うことには「はい」と従うのが当たり前で、今思えば、かなり厳しい環境だったかもしれません。けれど今は、上司のほうが部下に気を遣い、叱ることさえためらわれる時代です。こうした変化が、職場の空気や生産性に影響していることもあります。
「期待値のズレ」に気づくということ
実際、上司と部下の間ではこんなやりとりがよくあります。
上司:「もっとやる気を見せてほしい」
部下:「ちゃんと指示してくれない…」
上司:「数字を見て判断しているだけ」
部下:「評価されていない気がする」
お互いに悪気はないのに、受け止め方がズレてしまう。こうしたケースに共通しているのが、「期待値の違い」です。上司と部下、それぞれが何を期待し、どのような基準で判断しているのか。その“違い”に気づくことが、良い関係性の第一歩になると私は思っています。
柔らかく進化する関係づくり
これからの時代、伝え方も人間関係のあり方も、より“柔らかく”進化していくのかもしれません。関係性を築くうえでの基本は変わらなくても、そこに「思いやり」や「想像力」という柔軟さが加われば、誤解は減り、働きやすさが広がっていくはずです。
【小さな実践】
ネガティブな出来事が起きたとき、「自分の受け取り方を少し変えてみる」
その小さな意識の変化が、人間関係をやわらかくしてくれるかもしれません。



