出口が見えない認知症のトンネル入った日
今日のコラムは、
認知症介護の記録記事です。
お袋が認知症になった頃、
受け入れることができずに
悩んでいる時に、
専門医の友人から下記の
コメントを頂いたので紹介します。
コメントの中で
ご本人も仰っていますが、
全ての認知症患者に適応すると
いうことではありませんが、
希望の光になれば嬉しいです。
--------------ここから--------------
私自身は介護の経験がないので、
偉そうなことはまったく言えないのですが、
認知症患者を診ている医師として
少し発言させてください。
介護する側としては、
される側のことを親身に考えて
いろいろやってあげる、
やってあげざるを得ない
という状況が毎日続くわけで、
心理的に本当に大変だと思います。
可能な限り、デイサービスや
ショートステイを利用して
介護する側の肉体的心理的負担を
軽減するとともに、「年老いた」
「呆けた」親を介護してあげる
のではなく、まだ正常だった頃の
親子関係を演じるように、
「子どもとして」
「親であるあなたを頼りにしている」
「子供である自分を親として心配してほしい」
という心理的な接し方は、
(いつもは無理でしょうが)
時に必要なのではないかと考えます。
アルツハイマー型認知症であれば、
レビー小体病や前頭側頭型認知症に
比べれば、人格性格の変化は
大きくないはずで、記憶障害、
特に手順記憶の障害が中心のはずです。
すると20年前、30年前の
認知症ではなかった時期の
親子関係を再現しようと試みれば、
認知症になってしまった今の
お母様ではなく、何十年か前の
正常だったお母様と小橋さんの
関係が少しの時間でも築ける
可能性があると思います。
そうすることで、
お母様にも「患者」ではなく
「母親」として、
子供を守ってあげなければ、
という心理的な変化、
それに伴う行動の変化が
生じる可能性があると、
自分が診ている
患者さんと家族の関係を
見て思います。
できないこと、
忘れたことをを何度注意しても、
何回言っても、認知症なのですから
それはほとんど意味がありません。
昔の、正常だった頃の話を、
写真を見ながらするとか、
何か昔の好きだった食べ物や趣味の
話題をするとかで、「介護する側」
に対する「介護される側」の見方、
考え方が変われば、
何か変わるかもしれません。
介護をするのは、
本来家族の仕事ではなく、
家族は一緒にいて寄り添う立場の
はずなのです。
介護事業も医療も
その辺は遅れているというか、
思ってもなかなかできない
葛藤があります。
最初から焦らずに、
ゆっくり試すように
実践してみてください。
たとえば、
小橋さんが子供のころの
お母様と一緒の写真などを見せて、
「これどこで撮ったんだっけ?」など、
答えられなくても、
あまり興味を示さなくても、
眺めるようだったらまず成功、
ぐらいの気持ちでいいと思います。
それを少しずつ、
回数や時間を増やしていくと、
「今」=H27年ではなく、
「今」=S40年代という風に
お母様が、今を昔だと思うように
なっても大丈夫です。
本当の認知症の方なら、
翌日には、またはその日の
うちにそのことを忘れるか、
わからなくなります。
ただ、その時間だけ
タイムマシーンのように
時間を巻き戻し、
その時の親子関係を演じて
「介護してあげてる」感をなくす、
できればお母様が
「我が子を慈しみ育てている」
気持ちを思い出させてあげることが
変化のきっかけになるかもしれません。
これは、そういうことがあった、
という患者さんとご家族の
事例から言っているだけで、
万人にうまくいくかどうかは
わかりませんが、脳の働きとしては
昔の記憶は保持されているはずなので
何らかの良い反応が得られるのでは
ないかと思います。
--------------ここまで--------------
以上がコメントを頂いた全文です。
もちろん、ご本人の許可を得た上で
掲載させて頂きました。
もし、介護で悩んでいるとしたら
あなたにも気付きがありますように。
【小さな実践】
介護のみに専念せずに
できるだけ自分の時間を作り、
その時間を楽しめることを見つける