まちの専門家をさがせるWebガイド マイベストプロ香川
谷澤優花

人を敬う心“接遇”を伝えるビジネスマナーのプロ

谷澤優花(たにざわゆうか)

谷澤優花

コラム

職場内での感動共有で、接遇意識の向上

好印象の為に、今すぐできる職場でのマナー

2015年10月21日 / 2018年8月8日更新

職場内で情報を共有することの大切さ

クレームがあると、職場内で同じことが再発しないように、事案を検証し、改善策を考えることは、組織にとってとても大切なことです。ですが皆さんの職場ではクレーム事案の共有だけでなく、お客様や患者さんから頂いた嬉しい言葉、励まし、心温まるエピソードといった、「感動」を共有しているでしょうか?
 実は、この感動を共有するということは、接遇意識を高める上でも重要なことと言えるのです。今回のコラム、「好印象の為に、今すぐ出来る職場でのマナー」では、感動共有と接遇意識の向上について、お話ししていきたいと思います。

誰もがクレームは、受けたくないものです。出来れば避けて通りたいと思います。
ですが、近年どの業種においてもクレームは増加しています。クレームの内容はそれぞれですが、お客様や患者さんを不快にし、満足頂けなかったという事実は、企業や病院内でしっかりと受け止める必要があります。その為にまず行うことは、職場内で情報を共有するということ。頂いたクレーム事案について、全員が把握し「なぜいけなかったのか?」「その時どうするべきだったのか?」「今後は、どのように改善していくことが出来るのか?」を、経営者も含めみんなで一緒に考え、認識していく必要があります。この時に大切なことは、クレームの直接の原因を追究していく中で、その時の担当者に全て責任をおしつけたり、犯人捜しをしてしまうことが無いようにすること。あくまでも、「もしかしたら、私も同じ過ちや失敗をしていたかもしれない」という受け止め方・意識でクレーム事案を共有していくことが大切です。しかしながら、多忙な職場環境では、パート・アルバイトの方と正規社員の方との勤務時間やシフトが合わず、なかなか全員が揃って話し合うといった場を設けることが出来ない現状があります。また、担当者の受け止め方で、「これくらいのお客様のお怒りは、別に報告するまでも…」と、言われた内容を改善せずそのまま放置しておくといったこともあるでしょう。そのようなことが積み重なると、どうなるでしょうか?同じような事案が発生し、お客様から度々お怒りを頂き、企業の信頼を落とすことになりかねません。ちょっとしたことでも、積み重なれば、それはとても大きな過ちやお客様や患者さんのお気持ちを傷つける原因となるのです。
病院であれば、クレームを言いたくても言えない状況があります。なぜなら、自分の体を診て頂いている・世話になっているという負い目から、医師や看護師に直接クレームを言えないからです。そういった患者さんは、クレームを言わない代わりに、どのような行動を起こすのか…。それは、病院を換えて、違う病院で診察をお願いするという行動をとること。無記名でのアンケート実施で、そのご指摘の多さや言えなかったけれど実はこんな対応がいやだったという内容に、職員一同ショックを受けたというケースも、これまで見てまいりました。このように報告・連絡・相談(ほう・れん・そう)とサイクルが組織の中でうまく機能しないと、また同じことでお客様や患者さんを怒らせてしまうことにもなりかねません。その為にも職場の中であったことは、「逐一みんなで共有する」が鉄則です。




日々の『感動』も互いに共有することの大切さ

とはいっても、クレームについての話し合いは、とても辛く誰もが心が折れる厳しい場でもあります。再発防止に向けて考えるといっても、答えがすぐにみつからないこともあるでしょう。クレームが多ければ、その分職場の雰囲気も暗くなるのも当然といえます。
私が企業や病院でお勧めしているのは、『良いことも・悪いことも、みんなで共有する』ということを日頃から定着化させることです。「クレームがあったから、みんな集まって話し合いましょう…」仕事がおわった後に、これほどがっかりすることはありません。またそのことに関係している部署の方や担当者にとっては、これからの希望・明日からの仕事のやりがいが見いだせなくなります。なにかあったから全員集合ではなく、定例化して行う。例えば朝礼で報告する場を設ける、週に一度、職員全員で集まる機会を作るなどして、日頃の業務の報告・連絡だけでなく、お客様から頂いた喜びの声や自分が嬉しかった出来事、心がほっこり温まるような場面を発表できるようにしてみてはいかがでしょうか?こういった取り組みから、職場内で話し易い雰囲気、報告しやすい環境作りが出来ます。そして、先ほど述べたようなクレームにならないようにする為にどう行動すべきかといった、良い応対の模範例がたくさん出てきます。答えが導き出せなかったクレーム改善策のヒントが、感動共有の話し合いの中に含まれていることも、実は多いのです。「先輩も私と同じようなお客様からの喜びの声を頂いていたんだ…」「そういうお声かけの仕方が、お客様には喜ばれるのね…」「今までは、良かったことも自分の心の中で『やったー』としか思っていなかったけれど、発表することで職場のみなさんが嬉しそうにしてくれたから、何倍もの喜びに変わった」など、その効果はとても大きいといえます。

『とらや』赤坂本店休業に伴う社長挨拶から学ぶ、感動共有

今年10月2日に、とらや代表取締役社長 十七代 黒川光博氏が『ご愛顧くださった皆様へ』とホームページ上で行った休業のお知らせとご挨拶には、「感動共有のセオリー」が詰まっています。
 ~とらや 赤坂本店休業のお知らせより抜粋~
この店でお客様をお迎えした51年のあいだ、多くの素晴らしい出逢いに恵まれました。
三日にあげずご来店くださり、きまってお汁粉を召し上がる男性のお客様。
毎朝お母さまとご一緒に小形羊羹を1つお買い求めくださっていた、当時幼稚園生でいらしたお客様。ある時おひとりでお見えになったので、心配になった店員が外へ出てみると、お母さまがこっそり隠れて見守っていらっしゃったということもありました。
車椅子でご来店くださっていた、100歳になられる女性のお客様。入院生活に入られてからはご家族が生菓子や干菓子をお買い求めくださいました。お食事ができなくなられてからも、弊社の干菓子をくずしながらお召し上がりになったと伺っています。
このようにお客様とともに過ごさせて頂いた時間をここに書き尽くすことは到底できませんが、おひとりおひとりのお姿は、強く私たちの心に焼き付いています。
        ~虎屋 17代 代表取締役社長 黒川 光博氏 のご挨拶より抜粋~
いかがでしょうか?社長自らの目でみた光景も、社員が思わずお一人でお見えになったお子様を心配し、店の外に駆け出した時の様子も、長年ご愛顧下さったお客様のその後のご様子を伺ったエピソードも、全て社長だけでなく社員一同も感動を共有出来ている。きっと表には出ることのない、とらやをその手で作り上げ、支えてきた和菓子職人にとっても、一つ一つのストーリーが仕事を続ける上でのやりがいとなり、人生の『宝物』になっていると思います。
私は、香川の地ですので「とらや」は言うならば少し遠い存在でもあり、特別で高級なイメージ。私にとっての「とらや」はその菓子折りの持つブランド力や誰からも愛され喜ばれる和菓子である為、何かの折に・特別な方への贈り物として、お贈りすることが通例でした。思い返せば・・・、教育委員会委員任期満了での退任のご挨拶の時、これからお世話になることへのご挨拶の折り、そして春先の祝いの御しるしには「御代の春」というさくらを形どった最中を紅白でお送りしたこと…、これまでお礼やお祝いの品として、何度となく買い求めてきた和菓子。それが、私にとっての「とらや」です。
お届けした時のお相手の喜ぶ姿や、和菓子を手にして嬉しそうになさったお顔が、今でも思い出されます。そして何よりショーケースに並んだいくつもの種類の和菓子に、お届け先のみなさんのお顔を思い浮かべながら選んだ、その時々も思い出されます。そう、選びながら私自身も、お贈りする時ならではのドキドキ・ワクワクを満喫したものです。



この、とらや社長である黒川氏の本店休業のお知らせと挨拶文がネットで、「感動的すぎる!!」「これぞ商人の鑑」「江戸っ子らしい粋な社長」「涙がでそうになった…」と、大変な反響を呼び称賛されました。社長ご自身もとらやの社員の皆様も、きっとこの反響から新店舗への期待や愛されている喜びを実感したと思いますが、日本全国のとらやファンにとっても嬉しく誇らしいことであったと思います。なぜなら私もこのニュースを聞いて感じたように、日本中のどの方も、このような素晴らしい老舗和菓子舗の品を、大切な方にお贈り出来たという喜び、店選び・品選びに間違いなかったという自信、そしてやはり美味しいだけではない、一つ一つの和菓子に込められた社長や社員の思い…を、共有できたからにほかなりません。
贈った人も、贈られた人も、召し上がった誰もが、満足できる「とらや」。商品のクオリティもさることながら…、一人の幼稚園児に対しても社長自ら文面で、「お一人でお見えになった」「お客様」「お買い求めくださった」と、礼を尽くした言葉遣い。これこそが「商人の鑑」といわれる理由であり、お客様を心からもてなすこと、つまり『接遇』の神髄ともいえます。とらやの『おもてなしの心』は、普段と変わらぬ店先のちょっとした光景、ふとしたお客様のご様子を見逃さない、社長と社員一同が共有する「感動」から生まれるのです。
みなさまの職場でも、『感動の共有』。取り入れてみてはいかがでしようか…。

この記事を書いたプロ

谷澤優花

谷澤優花(たにざわゆうか)

谷澤優花プロのその他のコンテンツ

Share