法施行まであと1か月余りになった同一労働同一賃金
今回改正された「同一労働同一賃金」の下では、
正社員とそれ以外の労働者(契約社員やパート等)との間で、
基本給や賞与、手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。
そして、不合理な差を図るモノサシとして、
「均等待遇」と「均衡待遇」という考え方が採用されています。
法律や各種パンフレットの中には、「均等待遇」「均衡待遇」という似たような言葉が登場しますので、
非常に混乱しやすいため、一度整理しておきましょう。
「均等待遇」というのは、同じ待遇にするということ。
等しい(イコール)という文字からイメージできると思いますが、
正社員とその他の労働者の待遇の取扱いを同じにしなければならない、ということです。
これに対して、「均衡待遇」というのは、待遇のバランスがとれていることを指します。
つまり、正社員とその他の労働者との間で違いがあることを前提に、
待遇にあまりにも大きく差が開いていなければOK、という考え方です。
この2つの考え方ですが、正社員とその他の労働者が、
同じ仕事をしていたら、「均等待遇」が求められます。
例えば、保育園で正社員とパートの保育士がいた場合、
同じ仕事をしているのであれば、「100:100」の待遇にしなければなりません。
そして、同じ仕事でない場合には、次に「均衡待遇」が求められ、
仕事内容等の差によって、「100:80」や「100:60」等のバランスが求められるのです。
どの程度バランスが取れていたらよいのか、不合理な差でないと言えるのかは、
法律で定められているわけではありません。
国が示したガイドラインによると、
「各社の労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれる。」とあり、
結局は労使でしっかり話し合うことが必要です。
そして、トラブルになった場合には最終的に裁判所が判断することになります。
一例を挙げると、大阪医科薬科大学事件で、平成31年、大阪高裁は、
時給制のアルバイトに対して正社員の60%を下回るような賞与では
バランスを欠いていて不合理な待遇の差である、という趣旨の判断をしています。
私の経験上、「均等待遇」の対象になる労働者はそれほど多くはありません。
正社員と同じ仕事をしているパート等がいた場合、その方は正社員に登用されていることが多いからです。
そのため、「均衡待遇」への対応が取り組みのメインといえるでしょう。