糖尿病自己管理行動に動機づけレベルが及ぼす影響 ~糖尿病学会での活動報告 第1回(3回シリーズ)~
2022年5月12日から5月14日にかけて、神戸にて開催された日本糖尿病学会年次学術集会において、当院と共同研究をしている神戸市看護大学の稲垣聡先生が、医療スタッフ優秀演題賞を受賞しました。
演題名は、「2型糖尿病患者の自己管理行動規定因子の探索」です。
この研究によって得られた結果を簡単に紹介させていただきます。
研究の結果
糖尿病自己管理行動に最も大きな影響を与える因子は、療養行動への自律的動機でした。
(自律的動機とは、自分の中から湧き上がる動機のことです。)
次いで自己効力感、教育入院経験、経済的負担感、合併症が自己管理行動に影響に与えていました。
食事療法の遵守には、自己効力感、自律的動機が関与し、年齢や飲酒習慣は食事療法に負の影響を与えていました。
運動習慣には、自律的動機と教育入院の経験が関与しており、肥満傾向や自己注射歴は負の影響を与えていました。
これらの結果より、患者さんの特性が自己管理行動に影響を及ぼすことが示唆され、療養支援において個々の患者背景を把握することの重要性を再認識しました。
さらに、自己管理行動全体、食事療法、運動療法のいずれにも、自律的動機が関与していることが明らかになりました。
つまり、療養行動の自律的動機は糖尿病自己管理の重要な予測因子となり、自律的動機を高めることが患者さんのセルフケアを促進する可能性が示唆されました。
まとめ
この研究は、私たち糖尿病診療の医療従事者が、クリニックに通っていただいている糖尿病を持つ方に対して、どうようにして関わらせてもらうことが、その方々の人生を豊かにすることに繋がるのか、という疑問から生まれました。
研究によって明らかになったことを活用していけるように、これからも臨床や研究に邁進していきたいと考えています。