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松田友和(まつだともかず) / 内科医

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コラム

糖尿病自己管理行動に動機づけレベルが及ぼす影響 ~糖尿病学会での活動報告 第1回(3回シリーズ)~

2022年6月6日

テーマ:学会・勉強会

コラムカテゴリ:医療・病院

2022年5月12日から5月14日にかけて、神戸にて開催された日本糖尿病学会年次学術集会において、
糖尿病内科まつだクリニックから3つの演題を発表してきました。
今回から3回シリーズで、学会で発表した内容をご報告させていただきます。

初回のタイトルは、
「糖尿病自己管理行動に動機づけレベルが及ぼす影響」
です。

【研究の目的】

糖尿病療養において自己管理行動は重要な要素です。
しかし、どのような療養指導が自己管理行動支援に繋がるのか明確ではありません。
私たちは、より有効な療養支援を実践するための指標として、動機づけ(自律的動機・統制的動機)に注目し、
日本語版糖尿病自己管理行動の動機づけ尺度 (TSRQ-DJ: TSRQ for Diabetics in Japanese)の開発を行っています。
そこで、動機づけレベルと自己管理行動との関連を調べることを目的としました。

統制的動機とは、「人からいわれるから」「やらないと怒られるから」などの外部からの刺激により行動を起こす、という動機です。
自律的動機とは、「自分のためだから」「自分がやりたいから」などの内面からの刺激により行動を起こす、という動機です。

【研究の方法】

インターネット調査会社のモニター登録者から、スクリーニング調査により2型糖尿病の患者を抽出し研究協力依頼をしました。2021年に調査を実施し、510名を有効回答としました。アンケート項目は、患者特性およびTSRQ-DJ(動機づけレベル)、J-SDSCA(自己管理行動)、SESD(自己効力感)、PAID-5(うつ傾向)の各尺度票としました。

【研究の結果】

・統制的動機および自律的動機のいずれであっても、高い群は、低い群と比べて、自己管理行動の総点が有意に高いという結果でした。

・統制的動機および自律的動機のいずれであっても、高い群では、低い群と比べて、自己効力感(やればできるという感覚)が強いことや、運動や食事などの自己管理行動の点数が有意に高いということがわかりました。

・統制的動機が高いと、うつ傾向である割合が高くなっていましたが、自律的動機の高さと、うつ傾向には関係がありませんでした。

・自律的動機が高いと、HbA1c(血糖の平均値)が低くなり、BMI(肥満度)も低くなっていました。

・自律的動機の方が、統制的動機より、自己管理行動に対する影響が強いことが明らかになりました。

【考察・結論】

統制的動機および自律的動機ともに、動機づけレベルの高さが自己管理行動の実施と相関していました。また、統制的に動機づけされているよりも自律的に動機づけされている方が、抑うつ傾向を引き起こすことなく、自己管理行動に強い影響を及ぼしていることが明らかになりました。

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