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松田友和(まつだともかず) / 内科医

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コラム

インスリン治療の実際 ~後編:インスリン治療を知る~

2022年4月18日

テーマ:インスリン治療

コラムカテゴリ:医療・病院

インスリン治療の種類と意味

血糖値をマネージメントするためには、インスリン分泌パターンを生理的な状態に近づけることが大切になってきます。いくつかの内服薬にもインスリン分泌パターンを改善させる効果があります。これらの内服薬では、インスリン分泌パターンを是正できない場合にインスリン治療が登場することになります。
内服薬でインスリン分泌パターンを是正できない場合とは、著明な高血糖時と、インスリン分泌パターンが著しく障害されている時の、2つのケースがあります。著明な高血糖時には、内服薬によるインスリン分泌パターンの是正が困難であるため、インスリン治療を必要としますが、適切にインスリン治療をすることで、血糖値を改善させてあげると、再びインスリン分泌が復活してくることが、しばしば認められます。
つまり、「インスリンを打ち出すと、やめられないのでは?」という問いに対する回答としては、「インスリン治療をすることで、しっかりと血糖のマネージメントをすれば、インスリン治療が不要になるケースはたくさんあります。」となります。

実際のインスリン治療に用いられるインスリン製剤には、用途に合わせて多くの種類があります。しかし、基本的な考え方は、生理的なインスリン分泌パターンに近づけるための製剤を選択するということです。追加分泌を補うためのインスリン製剤と基礎インスリンを補うためのインスリン製剤を適切に使用することで、生理的なインスリン分泌パターンに近づけていきます。特に1型糖尿病は、インスリン分泌障害が血糖値上昇の原因ですので、血糖のマネージメントのために最も大切なことは、インスリン注射を用いて、生理的なインスリン分泌パターンに近づけることです。食事をインスリン注射に合わせるのではなく、自由な食事にインスリン注射を合わせることが、治療の本質となります。

インスリン注射の針と痛み

インスリンの注射と聞くと、痛みを心配される方が多いのではないでしょうか。いわゆる採血時に使用するような針と、インスリン注射で使用する針は、全く異なります。
インスリン注射専用の針は非常に細くて短いことが特徴です。また、針先にも工夫があり、痛みが少なくなるよう設計されています。インスリン注射は、小さなお子様から、90歳代の方まで、幅広い年齢層で使用されますが、痛みが要因で、中断するケースはほとんど見受けられません。痛みが心配で、インスリン注射を躊躇されている方は、まずは針をお試しになってみてはいかがでしょうか。


インスリン注射の安全性

インスリン開始のお話をさせていだくときに、安全性に対する不安をおっしゃる方もいらっしゃいます。実はインスリン自体は、もともと膵臓で作られているホルモンですので、体内にあるものです。その体内にあるホルモンが不足しているため、注射で補っているのが、インスリン製剤です。サプリメントなども含めて、内服薬には、多かれ少なかれ、副作用があります。実際のところ、それらに比べても、インスリンの副作用は多くはありません。
もっとも注意すべき副作用は、インスリンの過量投与による低血糖です。低血糖に対しては、インスリンの適切な投与量、投与タイミングを把握することは必要ですが、これらは充分に習得可能と考えています。一緒に学んでいきましょう。
インスリンの安全性を危惧されている方に、糖尿病をお持ちの妊婦さんや授乳されている方のインスリン使用についてのお話をさせていただいています。実は、糖尿病をお持ちの方が妊娠されますと、内服薬は全て中止し、インスリン注射による血糖マネージメントに変更します。それは、内服薬より、インスリン製剤の方が、胎児に与える影響が少ないからです。もともと、インスリンは体内にあるものですから、胎児にも影響がないのは、ご納得いただけたのではないでしょうか。
したがって、「インスリン注射は最終手段では?」という問いの答えも明確です。妊婦さんや授乳されている方以外にも、大きな手術の前後にも、一時的に内服治療からインスリン治療に切り替えることがあります、これも手術前後の安全性を高めることが目的です。
それら以外にも、安全に的確に血糖マネージメントを必要とする際に、あえてインスリン治療を継続するようなケースはたくさんあります。

さいごに

インスリン治療の意味や安全性について説明してまいりました。みなさまが思っているほど、大層な治療方法ではないのは確かですが、問題点もあります。
インスリン製剤の管理は、器機の進歩により、シンプルにはなってきていますが、内服薬と比べると、どうしても煩雑であることは否めません。血糖値を自分で測定することも必要になります。また、医療費の問題もあります。インスリン治療がより良い治療方法であるようなケースでも、治療費のために躊躇される場合もあります。必要な人に適切な治療ができるように、国にも検討していただく必要があります。
インスリンに限らず、どの治療方法を選択すべきなのかは、利点と欠点を天秤にかけて、考えていく必要があります。ご自身のために、より良い選択ができるようなお手伝いができればよいと考えています。

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松田友和

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