Mybestpro Members

松田友和プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

ミネラルを知る~各論編1~

松田友和

松田友和

テーマ:生活習慣

ミネラル摂取に関して知っておくこと

ちまたにあふれている食の情報に振り回されないためにも、食に関して、あるいは栄養素に関しての基礎知識を身に着けておく必要があります。その一環として、前回はミネラルについての総論を勉強しました。今回は、ミネラルそれぞれの特徴について考えていきたいと思います。
ミネラルには、体内に存在する量に応じて、多量ミネラルと微量ミネラルがあります。それぞれ、食事から摂取する場合に、過剰摂取に注意すべきものと摂取不足に注意すべきものに分けてみていきましょう。

〇多量ミネラル(5種類)
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン
〇微量ミネラル(8種類)
鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン


過剰摂取に注意すべきミネラル

◎ナトリウム
多量ミネラルの1つであるナトリウムは塩の主成分です。つまり塩分を摂りすぎるとナトリウムの過剰摂取となってしまいます。塩分の過剰摂取は、血管や心臓に負担をかけてしまいます。血管や心臓に負担がかかることで高血圧を引き起こします。さらに高血圧は、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなります。高血圧以外にも、腎不全や骨粗鬆症、胃がん(JPHC研究)などの発症にも関与していると言われています。一方で日本人の塩分摂取量は多いことでも有名です。「日本人の食事摂取基準」では、摂取目標量は1日に7.5gとされていますが、日本人の食塩摂取量は1日に10g程度と推測されています。ちなみに高血圧や慢性腎臓病重症化予防のための目標値は1日に6gです。
 ナトリウムは、醤油やみそなどの食塩を含む調味料の他、ハム、ウインナー、練り製品、即席めんなどの加工食品や漬け物などにも多く含まれています。さらに日本人の好きなうま味調味料などの食品添加物の多くにもナトリウムは多く含まれています。ラーメンやうどんのお汁にもナトリウムはたくさん含まれていますので、お汁は勇気をもって残すようにしましょう。

◎リン
多量ミネラルで過剰摂取が心配されるものにリンがあります。もしリンが不足した場合は、脱力感、筋力低下、貧血(溶血)などの症状を引き起こします。しかし、リンは食品中に広く分布するため、普通に食事をしていれば、不足することはほとんどありません。実は、リンは加工食品に含まれる食品添加物として汎用されていますので、最近では摂取過剰が危惧されています。リンを摂りすぎることで、カルシウムの吸収を妨げてしまい、骨がもろくなってしまいます。特に腎臓の働きが弱っている場合は、尿へのリンの排出量が減少して、血液中のリン濃度が増加しますので、注意が必要です。
後述しますが、カルシウムの摂り過ぎはリンの吸収を妨げます。そのためカルシウムとリンは、バランスよく摂取することが望ましいとされています。加工食品の食べ過ぎには要注意です。

◎カルシウム
リンと同じ多量ミネラルに含まれますが、カルシウムは摂取不足が心配されるミネラルです。カルシウム摂取不足は、骨粗鬆症を引き起こすことはよく知られています。極端に不足した場合は、筋肉のけいれんやてんかんを引き起こすこともあります。
実は過剰に摂取した場合も様々な健康被害を引き起こしますが、通常の食品を普通に摂取している範囲では、過剰摂取となることはまれです。しかし、カルシウムのサプリメントやビタミンD製剤内服中の方は要注意です。カルシウムは、魚介類、藻類、乳製品、豆類、野菜類に多く含まれますので、出来れば食事で上手に摂取してください。

◎カリウム
多量ミネラルの1つです。カリウムは様々な食品に豊富に含まれているので、通常の食事ではほとんど欠乏症はみられません。しかし、食事量が長期間減っている場合、激しい嘔吐や下痢の場合、利尿剤の長期使用の場合などで、低カリウム血症になるケースが散見されます。カリウム欠乏の主な症状は、脱力感、筋力低下、食欲不振、骨格筋の麻痺などです。なんだか力が入らないとおっしゃる場合に、低カリウム血症が隠れている場合があります。カリウムは様々な食品に含まれていますが、特に生野菜や果物に多く含まれています。カリウムは、多少摂りすぎても腎機能が正常であれば、尿中にどんどん排泄されますので、問題ありませんが、腎機能が低下している場合は要注意です。そのため腎臓病の方では、生野菜や果物の摂取を控えるように注意されている場合もあります。高カリウム血症は、致命的な不整脈を誘発しますので、腎臓病の方は、ご自身の血液検査のカリウム値を把握しておきましょう。

◎亜鉛
微量ミネラルの1つである亜鉛は、欠乏することで味覚障害を引き起こします。味覚障害の精査で、亜鉛の摂取不足であることが明らかになる場合がしばしばみられます。一方で、通常の食事で亜鉛の過剰摂取が起こる可能性は低いです。ただし、サプリメントによる過剰摂取は時々みられます。その場合は、胃の不調や貧血の原因となります。一方で、亜鉛サプリメントの摂取で、空腹時血糖を下げるという報告もあります。サプリメントで亜鉛を摂取される場合は、主治医の先生に時々亜鉛の血中濃度をチェックしてもらうのが良いかもしれません。亜鉛は、魚介類や肉類に多く含まれます。他にも様々な食品に亜鉛は含まれますので、やはりバランスよく食事を摂ることが望まれます。

◎鉄
微量ミネラルである鉄は、摂取不足で鉄欠乏性貧血になります。息切れや顔色不良、疲れやすいといった症状がある場合は、鉄欠乏性貧血も鑑別が必要な疾患です。特に女性で上記の様な症状がある場合に、鉄が不足しているケースをよくみかけます。鉄は、肉類、魚介類、藻類、野菜類、豆類に多く含まれています。

◎セレン
微量ミネラルの1つです。今までのミネラルと違い、耳慣れない名前だと思います。古くから毒性の強い元素として知られていましたが、比較的最近になって、人にとって必須の微量元素であることが認識されるようになりました 。生体内で、抗酸化反応において重要な役割を担っており、必須ミネラルの1つとなっています。一方で、毒性が強く、必要な量と中毒を引き起こす量の差がとても小さいため、サプリメントなどの摂取には注意が必要です。セレンを慢性的に過剰摂取すると、爪の変形や脱毛、胃腸障害、下痢、疲労感、焦燥感、末梢神経障害、皮膚症状など多彩な症状を引き起こします。セレンは藻類、魚介類、肉類、卵黄に豊富に含まれており、通常の食事で不足することはありません。

ミネラルを知る~各論編2~ 
に続く

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

松田友和プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

チーム体制で患者を支える糖尿病医療のプロ

松田友和プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼