災害に備えていまできること
1型糖尿病の種類
実は1型糖尿病には、インスリン分泌が低下していくスピードに応じて3つの種類があります。それぞれ、「劇症」「急性発症」「緩徐進行」と言われます。
1、劇症1型糖尿病
最も早くインスリン分泌が低下します。約1週間でインスリン分泌が枯渇してしまうため、
糖尿病性ケトアシドーシスという重篤な状態に陥ってから診断されることもあります。腹痛や著明な全身倦怠感といった、糖尿病とは気づきにくい症状で受診されますので、診断に苦慮するケースもあります。
2、急性発症1型糖尿病
1型糖尿病の中で、最も頻度の多いケースです。数ヶ月かけてインスリン分泌が低下していきます。体重減少、全身倦怠感、口渇、多飲、多尿などで気づきます。
3、緩徐進行1型糖尿病
「45歳女性。数年前から健康診断にて高血糖を指摘され、内服薬が開始された。食事も注意しているし、運動も適度に実践しているのに、なかなか血糖値が下がらない。」
「59歳男性。35歳頃から糖尿病を指摘された。内服薬で治療していたが、45歳頃からインスリン治療となった。」
「38歳女性。今年の健康診断で初めて高血糖を指摘された。空腹時血糖132で、HbA1c 7.3%だった。家族に糖尿病の人はいない。5年前から体型も変わっていない。」
これらの症例は、2型糖尿病と診断されていることが多いのですが、実は「緩徐進行1型糖尿病」という1型糖尿病なのです。診断(発症)されてからしばらくの間はインスリン治療が必要ないのですが、徐々にインスリン分泌能が低下していき、3か月から長い場合は10年以上かけてインスリン治療が必要な状態になっていきます。
また、早期に緩徐進行1型糖尿病であることがわかっていれば、早期にインスリン治療を導入することで、将来の膵臓からのインスリン分泌能を守ることができるとも言われています。2型糖尿病として内服治療を受けている方で、思っている以上に血糖コントロールに難渋していらっしゃる方は実は緩徐進行1型糖尿病かもしれません。
1型糖尿病と2型糖尿病との違い
自己免疫が原因で、インスリン分泌が低下する。そのインスリン分泌の低下する早さで、「劇症」「急性発症」「緩徐進行」の3つに分けられる。これが1型糖尿病です。生活習慣病の要素はありません。
対して2型糖尿病は、生活習慣病の1つです。しかし、大切なことは生活習慣だけで2型糖尿病は発症するわけではありません。実は、2型糖尿病の発症にも、インスリン分泌の低下が非常に重要な要素になります。全く肥満ではなくても、むしろ痩せ型の方でも、2型糖尿病を発症する方はたくさんいらっしゃいます。このような場合に、食事制限していただくのは大きな間違いです。
実は1型糖尿病であっても2型糖尿病であっても、インスリン分泌能低下が病態の本質です。2つの違いは、絶対的なインスリン分泌低下である1型糖尿病と、相対的なインスリン分泌低下の2型糖尿病であると言えます。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」
糖尿病は生活習慣が守れない人の病気ではありません。正確に病態を把握して、正しい対処をして、生活の質(QOL)を低下させることなく、元気に長生きしていただきたいです。