「糖尿病内科かいせいクリニック」を開院
5大栄養素である、糖質、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラルに加えて、食物繊維は、第6の栄養素であると言われています。ほんの100年くらい前までは、「食べ物のカス」と考えられていた食物繊維ですが、昨今では整腸作用のみならず、血糖値の改善作用、コレステロールの低下作用や大腸癌の予防など、様々な良い働きが知られています。柔らかい食感が好まれるようになってきたことなどから、多くの日本人に不足している栄養素である食物繊維を積極的に摂取することが大切です。
食物繊維の歴史
食物繊維とは、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで達する食品成分のことを言います。
古代ギリシャのころから、小麦の表皮成分(食物繊維が豊富に含まれる)に整腸作用があることは知られていました。しかし、エネルギーにならないことや、他の栄養素の吸収を阻害させているのではないかと考えられ、食物のカスではないかと考えられてきました。
しかし、1930年代になって、アメリカの医学博士であるケロッグさんが、小麦の表皮成分に注目し、便秘患者や大腸炎患者に対する効果を科学的に明らかにしました。そのケロッグさんが開発した食品が、コーンフレークです。その後、食物繊維の摂取量と健康長寿や心疾患や動脈硬化症との関連が相次ぎ、1950年代にイギリスの医師であるヒップスレーさんが、「ダイエタリーファイバー(食物繊維)」と言う言葉を最初に使用しました。1970年代になって、イギリスのバーキット博士が、食物繊維の摂取量が少ないと大腸癌などの腸の病気だけでなく、虚血性心疾患(心筋梗塞など)や糖尿病、脂質異常症など、様々な疾患を誘発する可能性があるという「食物繊維仮説」を発表しました。この仮説は現在、たくさんの研究により証明されています。
食物繊維の種類
食物繊維にも種類があることをご存知でしょうか。大きく分けて、水に溶ける水溶性と水に溶けにくい不溶性の2種類があり、それぞれに違った特徴があります。
〇不溶性食物繊維
野菜、穀物、豆類、キノコ類、果物類、海藻などに含まれ、ボソボソ、ザラザラとした食感が特徴です。保水性が高いため、胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便通を促進します
〇水溶性食物繊維
昆布、わかめ、こんにゃく、果物類、里いも、大麦などに含まれています。ネバネバ系とサラサラ系があります。粘着性により胃腸内をゆっくり移動するので、お腹がすきにくく、食べすぎを防ぎます。さらに、糖質の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急激な上昇を抑えます。また、吸着性があるため、胆汁酸やコレステロールを吸着し、体外に排泄します。不溶性繊維質より大腸内で発酵・分解されやすく、発酵されることで、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。
食物繊維の摂取量
日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には1日20g以上ありました。しかし、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い、1970年代までに急速に低下し、現在の平均摂取量は1日あたり14g前後と推定されています。
厚生労働省が推奨する「日本人の食事摂取基準」では、1日の目標量は、男性20g以上、女性18g以上となっています。1日あたり24g以上の摂取で、心筋梗塞のリスク低下が観察されるとの研究報告もあります。まずは1日あたりプラス3~4gを目標に、摂取量を増やしてみませんか。
1日のうち1食を玄米ごはん・麦ごはん・胚芽米ごはんに置き換えると、効率的に食物繊維が摂取できます。また、豆類・野菜類・果実類・きのこ類・海藻類などにも多く含まれていますので、少しずつでも摂取量を増やしてみてください。
特に、そば・さつまいも・切り干し大根・かぼちゃ・ごぼう・たけのこ・ブロッコリー・納豆・あずき・おから・しいたけ・ひじきなどは、1食あたり摂取する量の中に食物繊維が2~3gも含まれています。効率的に食物繊維をとるには、これらの食材を上手く取り入れてみてはいかがでしょう。