神戸大学大学院保健学研究科で「大学院講義」をしました。
妊娠糖尿病と言う言葉を聞いたことはありませんか?
妊婦さんが注意すべき糖代謝異常(血糖値の異常)には、大きく分けて3種類あります。
もともと糖尿病と診断されていた方が妊娠された場合を、「糖尿病合併妊娠」と言います。
また「妊娠中の明らかな糖尿病」は、妊娠をきっかけに明らかになった糖尿病のことを言います。そして「妊娠糖尿病」とは、妊娠中に糖尿病とまではいかない程度に血糖値が上昇してしまう状態をさします。
実は、妊娠期に血糖値をコントロールすることは、母体や新生児にとても重要であるということが明らかになっています。周産期のトラブルを予防するためにも、新生児の健康のためにも、空腹時血糖で70-100 mg/dl, 食後2時間で120 mg/dl未満という厳しい目標値が設定されています。
妊娠すると、食の好みが変わってしまい、ついつい甘い物を食べたくなったり、偏食になりがちです。また運動不足になってしまうとも言われています。さらに、週数を重ねるごとに成長する胎盤から出るホルモンが、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作られる量を減らしてしまったり、インスリンの働きを弱めてしまいます。その結果、特に妊娠中期以降に血糖値のコントロールが難しくなっていきます。
食直後の血糖値は、食べた炭水化物量で決まりますので、血糖値をコントロールするために食事を分割して食べるという方法があります。最近、よく耳にする低炭水化物食という概念があります。確かに、炭水化物を食べなければ食後の血糖値は上昇しません。しかし、大事なことは、胎児のためにも栄養はしっかり取る必要があるということです。栄養状態の良くないお母さんから生まれたお子様は、大人になってからメタボリック症候群を起こしやすいということもわかっています。
分割食をしても血糖値がコントロールできなくなってきたら、インスリン治療をすることになります。
妊娠されたことで喜びとともに不安もあるなかで、血糖値という悩みを抱えておられる妊婦さんはたくさんいらっしゃいます。上手に管理すれば、必ずコントロール出来ます。妊娠中の血糖上昇に限らず、ほとんどの糖尿病は血糖値があがりやすい(インスリンを出す力が弱い)という体質に依るところが大きいことがわかってきています。
血糖値と上手に付き合って、より良い人生を歩んでいけるように一緒に考えていきましょう。