経団連が「配偶者手当廃止」の提言
人事院は、年収130万円未満の配偶者に国家公務員の「配偶者手当」(月額13,000円)を2017年度から、課長級以上は段階的に廃止、課長級未満の職員については、段階的に50~73%(室長級で最終的に3,500円、その他の職員で6,500円)まで減額することを勧告する方針とのことです。
女性の就労意欲の低下を招いている制度
今までは、配偶者が年間130万円以上稼いでしまうと、「配偶者手当」は支給されません。月額13,000円ですから年間では、156,000円になります。これが無くなるくらいなら、中途半端に130万円を超えるくらいならこれ以上は働きたくない、という心理が当然出てきてしまいます。少子化による労働人口が減少する中で、女性や高齢者に働いてもらわなければならないのにこれでは、就労意欲が低下し本末転倒です。アベノミクスでは1億総括役社会を掲げていますから、それを達成するためにも今回の「配偶者手当」廃止が必要となった背景があります。
ただ、「配偶者手当」を廃止したとしても、年収で130万円を超えると今度は、社会保険(健康保険・国民年金3号被保険者)の扶養からも抜け、自身で何らかの社会保険に加入しなければならないことと、配偶者の収入が103万円を超えると納税者が受けられる配偶者控除が減ることも女性の就労意欲を低下させている要因になっていて、これらはまだ残っています。社会保険の方は、10月より大手企業(501人以上)については、1週20時間以上年間所得106万円以上での加入が義務づけられ、広く浅く対象を広げるようにはなってきますが、こういった制度を含め全体として改革していく必要があるでしょう。
「配偶者手当」廃止には、手順があります
国が1億総括役社会を目指すため「配偶者手当」を廃止するなら、当社も廃止してしまおう、と簡単には考えないで下さい。国としても「配偶者手当」を廃止する代わりに、子どもに対する手当を6,500円から10,000円に増額します。民間企業でもトヨタ自動車が「配偶者手当」を廃止しましたが、同じく子供に対する手当を5,000円から20,000円と4倍に引き上げています。つまり、「配偶者手当」を安易に人件費削減の材料にしてはならないと言うことです。「配偶者手当」を廃止することで、子供の居ない世帯は所得が減りますが、子供の居る世帯は所得が増えます。企業全体で見れば総人件費は減額になっていない、ということがないと「不利益変更」になってしまい、民事上は認められないことになるのです。
国も民間の大手企業でも「配偶者手当」を廃止の方向ですが、自社で行う際には、上記のように子供に対する手当を増額するなど手順を踏む必要がありますので、注意して下さい。