- お電話での
お問い合わせ - 047-393-6220
コラム
労災で療養中の労働者の解雇条件を最高裁が、法解釈を緩和
2015年6月16日
労災で療養休業中の労働者に対し、平均賃金1,200日分の打ち切り補償を支払い解雇した事件で、労働者側が解雇無効を訴えていました。最高裁が、「労働者が労災保険を受給していれば、使用者が療養補償をしていない場合でも雇用打ち切りの補償金を支払って解雇できる」との初判断を示しました。一、二審判決を無効とし、労災で療養中の労働者に対する解雇条件の法解釈を緩和しました。
ややこしいのでまずは解説
労働基準法第19条で、「労働者が業務上負傷し又は、疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇してはならない。ただし、3年を経過して平均賃金の1,200日分の打ち切り補償を支払う場合はこの限りでない。」とされています。これだけ見れば、今回の解雇は何も問題ないように思えます。しかし一方で、労働基準法第75条で「業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者はその費用で必要な療養を行わなければならない。」、労働基準法第81条で「第75条の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1,200日分の打ち切り補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」とされています。つまり今回、労働者側は、、あくまで治療費や休業補償は労災保険から受けており、第75条の言っているように直接会社から療養費を受けている訳ではない以上、例え打ち切り補償を支払おうと解雇は出来ないはずだ、と訴えていたのです。一審、二審では、法律を杓子定規に解釈して、解雇を無効としました。しかしながら、実態として使用者は労災保険の保険料を支払い、業務上や通勤途上の災害はそちらから給付を受けさせています。最高裁は、この労災を受給していることが、直接会社から療養費や休業補償を受給していなくても同じ取り扱いである、と解釈して、一審、二審を無効にした、ということです。
今後の影響について
解雇が緩和された、などと報道されると少々不安な気持ちにもなりますが、個人的には、今回の最高裁の判断は至極もっともだと思います。療養開始後3年も経過している訳ですし、その間の企業の負担は大きなものがあります。3年間、全く働かくても使用者は社会保険料を負担しなければなりませんし、代用要員も用意しなければなりません。また、今後10年労災での治療がまだ続くとすれば、それでもその間解雇出来なくなっってしまいます。労働者にとっても、解雇されたからと言って、労災での給付も終わってしまう訳ではありません。治療費、休業補償等は、継続して受給できます。症状が固定して治癒となった場合には、障害等級にもよりますが、障害補償年金なども給付される可能性もあります。
ですので、今回の最高裁の判断が、あまりに使用者側に有利で、雇用不安が拡がる、などという懸念はまずないでしょう。
関連するコラム
- 「ディズニーに再燃する労働トラブル、問題点は?」がJIJICOで掲載されました。 2014-06-25
- パソナ子会社の追い出し部屋のアウトソーシング? 2016-04-07
コラムのテーマ一覧
- 育児・介護休業法
- 人手不足
- 社会保険労務士
- 年金
- 雇用保険
- プライバシーマーク(Pマーク)
- 同一労働同一賃金
- 影山社労士事務所
- 女性活躍社会
- 社会保険労務士個人情報保護事務所
- マイナンバー
- 有期雇用特別措置法
- 給与計算(代行)(アウトソーシング)
- 労働問題
- マタハラ
- パートタイム労働法
- 失業手当
- 年金事務所の調査
- 社会保険(健康・厚生年金)未加入問題
- 解雇
- 国民年金
- 人事制度、評価制度
- ワークライフバランス
- 退職金
- 労働相談 あっせん
- 遺族年金
- 賞与
- 限定正社員
- 健康保険
- 育児休業
- 雇用の規制緩和
- 是正勧告
- 懲戒処分
- 非正規雇用
- 出向
- 労働基準監督署
- 採用選考
- 派遣労働者
- セクハラ・パワハラ・マタハラ
- 労災
- 就業規則、作成・変更
- 失業率・就職率
- 労働力調査
- 春闘
- 労働安全衛生法
- 労働組合
- 労働基準法
- 水中写真
- マイカー通勤
- 生活保護
- 障害者雇用
- 厚生年金
- メンタルヘルス
- 社会保険
- 残業問題
- 助成金
- 高齢者雇用
- リストラ
- 最低賃金
カテゴリから記事を探す
影山正伸プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。