10人未満の会社が成長するための、社員管理と評価のコツ

松本尚典

松本尚典

テーマ:売上 組織 売上をあげる



経営組織論は、すべて超大企業を想定して造られていることを知れ


経営コンサルタントとして、売上高数億円規模の経営者の方の御相談に乗っている中で、この規模の会社の経営者の方の多くが抱かれる課題の一つは、
「社員の管理や評価をどうしたらよいか」
という課題です。

売上高が1億に満たない規模の零細企業の規模を脱し、数億円を売り上げるようになった企業の場合、次第に、従業員の数が増えてゆく状態にありますが、それまで社長と個別の従業員の人間関係でモタセテきた会社が、この規模から、それだけでは維持できなくなります。

この規模の会社でよく起きる問題は、人事系のコンサルや社会保険労務士に相談し、就業規則を作り、職能等級制度や人事考課制度を創ってみたものの、それがほとんど機能しないという事態に陥ります。

その結果、企業成長を支援する僕のところに、社員評価の方法や考え方・実施の仕方という課題が持ち込まれるのです。ほとんどの社長は、
「うまくいかないのは、自分の管理能力が低いからだ」
と思い込まれてしまいます。

このような経営者の方から、僕は最初に、現在の制度を詳しく聞き取ることからスタートします。

そうすると、
「うまくいかないのは、社長の個人の管理能力の問題ではない」
ことが、見えてくることが殆どです。

現在の制度が、その会社の「身の丈」に合っていないことが、殆どのケースの原因なのです。

人事系のコンサルや社会保険労務士の方が指導し作成する職能等級制度や人事考課、各種の労務上の規則は、大企業向けのものです


僕も、かつて中小企業診断士試験に合格し、アメリカの大学でMBAを取得しました。経営戦略論や、税務戦略・組織戦略論を、大量に勉強してきました。勉強したヒトしかわからないのですが、これらの経営関連のコンテンツというのは、すべて、「超」のつくほど、大きな大企業をモデルに創られています。

例えば、中小企業診断士の方が、中小企業の経営者向け経営セミナーなどで、よく使用するフレームワークの一つ、PPM(プロダクトフォーリオマネジメント)は、ボストンコンサルティンググループが開発したことで有名なフレームワークです。ボストンコンサルティンググループは、これを、ゼネラルエレクトロニック社をコンサルするために編み出したのです。

ゼネラルエレクトロニック社は、世界にグルーバルの広がる超・大企業です。そこ向けに開発したフレームワークを、日本のローカルな数億円の売り上げの企業に、そのまま適用できるはずがありません。

経営組織論もまた、超がつく大企業をモデルに創られたものです。それ自体が間違っているわけではありませんが、着る人によって、洋服のサイズを選ばなければならないように、経営のフレームワークも、企業のサイズごとに、選ばなければなりません。

Sサイズのヒトに、LLLサイズの服を買わせても、それは、全然使えないのです。

先にあげた、就業規則を作り、職能等級制度や人事考課制度が、売上高数億円の企業で適用ができないのは、それがその会社のサイズにあっていないソリューションであることが理由の場合が殆どです。

成長する会社は、その規模に応じて、組織体制が成長する


中小企業の経営者の中には、勉強家の方もたくさんおられます。そういう方は、経営のハウ・ツー本をたくさん読まれ、それを自分の経営に採り入れようとされます。

しかし、このようなハウ・ツー本は、それほど、学識が深くない著者によって、薄い理解のもとで書かれています。そこで用いられている経営の理論は、P・ドラッカーをはじめとする偉大な経営コンサルタントの先人が残した、教科書に出てくるフレームワークです。

その理論自体が間違ってはいません。但し、経営のフレームワークは、例外なく、世界的な超・グローバル企業をベンチマークして造られた理論です。

人事組織管理論でも、同じです。

例えば、科学的管理法という手法にアンチテーゼとして提唱された人間関係論という人事管理論があります。この人間関係論は、もともと、ホーソン実験に基づいて提唱された理論なのですが、ホーソン実験とは、ボストンコンサルティンググループが、巨大企業のホーソン工場を1年間にわたって分析した結果、ボストンコンサルティンググループのコンサルタントによって報告された報告書をベースにしたフレームワークです。

そのようなアメリカの巨大企業のマネジメントを、日本の中小企業がそのまま採り入れても、巧くゆくはずはありません。

成長している会社というのは、その成長の過程の中で、その規模に応じたマネジメントを、自分の身体にあわせたオーダーメイドで採り入れ、それを、成長の過程で、徐々にイノベーションし続けているのです。

社員が10人に達しない会社が成長したければ、就業規則を作ってはならない


例えば、就業規則の作成を考えてみましょう。

労働法上、就業規則は、従業員が10名以上の事業所(会社ではありません、事業所単位であることに注意してください)に、作成が義務付けられています。

つまり、会社の従業員が10名以上でも、ひとつの事業所に10名以上の従業員が勤務していなければ、その事業所では就業規則を作る必要はありません。

行政機関は、もちろん、従業員が少ない会社にも就業規則の作成を奨励していますし、社会保険労務士に相談すれば、間違いなく、少数の会社へも、就業規則の作成を勧められます(就業規則の作成は、殆ど定型の原案を基礎にできてしまい、それで報酬をえられますから、それの作成をしている専門家が作成を勧めるのが当然です)。

しかし、僕は、中小企業の経営者の立場に立つ、経営コンサルタントとして、一事業所の従業員が10名以上になるまでは、就業規則の作成を勧めません。

就業規則は、個別の労働契約の内容を、労働者の有利に就業規則の規定の定める水準まで高める法的効果があります。したがって、一旦、就業規則を定めてしまうと、労働者ごとに、異なる労働契約を結ぶことに大きな制約が出てしまいます。

しかし、事業所の従業員が10人未満の会社の場合、従業員ごとに、その勤務形態や、報酬など、個別に自由に契約ができなければ、機動的な業務対応ができません。従業員が10人以上の事務所の場合、人数が多くなり、個別の労働契約の管理が難しくなるため、就業規則によって、一律の働き方をさせるほうが合理的ですが、少数の社員の場合、会社の必要性と、個別の労働者の能力や経験に応じて、労働条件を変える管理をするほうが、成長性の高い事業所を創ることができるのです。

そして、一旦、就業規則を定めて労働基準監督署に申請してしまうと、その変更には従業員代表との協議と再申請が必要となり、その内容を変えることがかなり難しくなります。

成長性が高く、機動性が要求される少数精鋭の組織を創るためには、就業規則は、むしろ有害です。

その作成を商売にする士業の営業トークに乗せられて、法的義務のない段階で、就業規則を作らないように注意したほうがよいでしょう。

社員6名までの会社の、社員評価は、社長一人で行うこと


先に述べた通り、成長している会社というのは、その成長の過程の中で、その規模に応じたマネジメントを、自分の身体にあわせたオーダーメイドで採り入れ、それを、成長の過程で、徐々にイノベーションをし続けています。

それでは、「その規模に応じたマネジメント」とは、どのようなマネジメントなのでしょうか?

会社規模ごとに、説明してゆきます。

まず、社員が6名までの会社では、社員の評価やマネジメントは、一元的に社長にまとめて行うことが効率的です。

創業の段階で、複数のヒトが集まって創業するという会社の殆どは、規模の小さい段階で、創業者同志の考え方や事業ベクトル・成長に対する考え方にずれが生じて、経営が上手くいかなくなります。

経営は、民主主義政治ではありません。マネジメントと、民主主義政治を混同させることは、失敗の原因になります。

創業は、一人の経営者が自分で責任をすべて負い、自分の経営理念のもとで、自分のマネジメントのやり方で行うべきものです。民主主義では、創業は絶対にうまくいきません。

メンバー6名というのは、1名のマネジメントが把握できる適切な人数の限界です。したがって、社員が6名までの会社は、マネジメントを複数の役員で行なったり、経営者の下に中間のマネージャーを置くことは、意思決定や組織管理にとって、効率性を損ないます。

社員6名までの会社では、社長が、ワンマンの形で、自分自身で社員をマンジメントする形態が適切です。社長がマネジメントについて、経験が浅いなど、マネジメントの自信がない場合、例えば、僕のようなコンサルルタントを社員から見えない形でメンターとして配置するのも、一つのやり方です。いずれにしても、社員からみた場合、上司が社長だけという形態が、最も効率的です。

社員6名から9名 までの会社は、「組織入門」体制を整える


社員が6名を超えたあたりから、社長が社員を直接マネジメントすることに限界が出てきます。社長の、それまでの人的マネジメント経験にもよりますが、一般的な管理職が、直接、業務の報告・連絡・相談を受け、適切に評価ができるのは、5~6名が限界です。

従って、社員が6名以上の組織においては、その社員の中から、他の社員を管理し、育成することができる中間管理職をつける段階に入ってきます。

社長は、中間管理職にマネジメントを任せ、直接、社員を指揮命令することを辞めることが、重要です。

社長が、それまでのように、直接指揮命令を社員にしていた段階から、中間管理職を創り、その管理職に、経営理念や経営計画をしっかりと共有して、目標を自分で建てさせ、部下を指揮命令して、その目標を達成させることを中間管理職ができるように指導するのが、その後の社長の役割となります。

この移行を社長の意識が阻み、いつまでも直接、指揮命令を続ける組織は、成長が、止まってしまうのです。

社長の意識の変革が、会社の成長を決める段階が、このレベルの組織なのです。

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松本尚典
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松本尚典(経営コンサルタント)

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