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Vol.1 Vol.2で、遥か古代メソポタミアから、第一次世界大戦までの歴史を辿りながら、ユダヤ人の信仰するユダヤ教とカトリックキリスト教の緊張関係、そしてユダヤ人国家とイスラム教国家のアラブ諸国との対立関係の原点を観てきました。
おそらく、この記事を詳細に読んでいただいている方の殆どは、僕が書いてきた、宗教対立に基づく歴史関係を読まれて、はじめて、ユダヤ人とイスラエルの、世界の対立構造の位置づけがわかったのではないでしょうか?
世界の重要な宗教を理解せずに、国際情勢は理解できない
日本の教育には、大きな欠点があります。それは、教育の中で、宗教というものを扱うことを、故意的に忌避する傾向です。憲法20条が信教の自由を保障し、戦前に国家が神道をもって皇室を神格化したことに起因して、暴走した大日本帝国時代へ反省から、日本では、世界史や現代社会の教育の中で、宗教と世界史を関連付けて説明をしません。それが、日本人のキリスト教・仏教・イスラム教・ユダヤ教などの、重要な世界宗教への知識の欠如に繋がり、日本人が世界史や国際関係論を理解しにくくしているのです。
宗教への理解なくして、国際的な視野を持って活動することは不可能です。
イスラム教が、何故、豚肉や酒を忌避するのか、という理由も知らないし、何故、カトリック教徒が、日曜日に教会にいくのかも知らない、という、宗教的無知の状態では、到底、世界の人たちを相手に、外交やビジネスはできません。それでは、世界の人たちの行動を理解できないし、お付き合いもできません。これが、日本人の常識の狭い範囲に閉じこもる状態を生んでしまう一因になっています。
宗教対立から、金融パワーvs原油パワー対立が生まれた
前回発信したように、オスマン帝国からアラブを分離させることを意図した大英帝国は、同時に、ユダヤからの莫大な戦争資金調達を行うため、アラブ人に独立を認めた地に、ユダヤ人の国イスラエルの建国を、同時に認める二枚舌外交をしてのけました。
その結果、旧約聖書が記す「約束の地」に、世界からユダヤ人が続々と結集し、そこに住んでいたアラブ人たちを、強制的に収容しました。当然、イスラム教の行き場を失った同胞を観たアラブのイスラム教徒の国々は、結束して、イスラエルに対抗します。パレスチナ解放機構(PLO)が組織され、アラブの強国がそれを支援しました。
そして、そのアラブ人たちの収める国々に、続々と、原油の油田が発掘されます。原油という、現代の最大の戦略物資を握ったアラブの王族たちは、金融業で財を築いたユダヤに連携して立ち向かいます。
双方ともに、莫大な富を背景にした対立に、欧米諸国は、なすすべがありませんでした。
キリスト教に対峙するイスラム教の巨大帝国である、オスマン帝国を分離させて力を弱めるために、自治を認めたアラブが、第二次大戦後に、最大の戦略物資である原油のチカラで、ここまで、強大な力をつけるとは、大英帝国も、全く予想していませんでした。
まさに、現代のイスラエル対アラブの戦争は、金融対原油という、資本対立の戦争なのです。
欧米は、ユダヤに大きな負い目を負っている
一方で、欧州には、イスラエルに対する、大きな負い目があります。
日本が、戦後、ことあるごとに、韓国や中国から持ち出される反日や戦後賠償問題と同様に、欧州は、中世・近代を通して、カトリックキリスト教の観点から、ユダヤ人を迫害し続けた過去があります。そして、その極めつけが、ドイツ民族優性思想に基づいて、民主的に独裁政権を樹立した、ナチスドイツによる、ユダヤ人絶滅計画です。
アウシュビッツの強制収容所にユダヤ人を大量に送り込み、その絶滅を図ったという、狂気の計画は、決して、大日本帝国と枢軸を築いたナチスドイツだけが異常だったことを示すものではありません。
イエスを十字架刑にする陰謀をローマに画策し、戒律主義に凝り固まり、選民思想によって、自分たちユダヤ人だけが、神に選ばれたと信じるユダヤ教徒に対する、激しい反感が、1000年以上にわたって、欧州のキリスト教徒たちを、反ユダヤ主義にしていたのです。ナチスドイツは、その感情を利用しただけでした。
その欧州のユダヤ人に対する今の負い目は、大東亜共栄圏構想のもとで、アジアの独立の盟主とならんとして、朝鮮人や支那人を差別した日本人の比ではありません。
その欧州の負い目が、イスラエルに対して、強い干渉ができない今の現代政治のパワーバランスを生んでいます。
原油パワーを持ったアラブを押さえることもできず、負い目のあるイスラエルも抑えることができないというのが、欧州の苦しい立場なのです。
もちろん、日本も同じです。サウジアラビアや、アラブ首長国連邦は、原油調達の、不可欠な重要国家であり、イランでさえ、日本は、無碍にはできません。アメリカが、そのユダヤパワーを政治的に利用したいがために、同盟するイスラエルに、日本は、そう簡単に近づくことはできないのです。一方で、イスラエルは、今でも、日本をナチスドイツと、かつて枢軸を築いた国だという目で見ています。日本とイスラエルが、仲良くできる要素は、どこにもないのです。
つまり、世界で、イスラエルと、アラブを抑えることができるパワーは、存在しません。
ともに、莫大な富に裏付けられた陣営が、妥協することもありえません。一時的に、停戦をしたとしても、相手を撲滅させるまで、中東が、本当に平和になることは、おそらくないでしょう。
イスラエルを巡る紛争が簡単に終わることはない
ユダヤ人は、今も、旧約聖書を唯一の聖典とし、選民思想と戒律主義のユダヤ教を強く信仰し続けています。古代から、迫害を受け続け、中世・近代と、2000年以上、続いてきた彼らの生活の仕方や考え方は、22世紀まで、あと三四半期を迎える今、急速に変わることはないでしょう。
世界に住むユダヤ人を結束させる象徴であるイスラエルは、戦争の有利不利というような戦略的発想にたつ国ではありません。キリスト教世界からいかに迫害されようが、イスラム世界が、いかにジハードを仕掛けようが、彼らは、旧約聖書によって、唯一の神に約束された、パレスチナの地を放棄し、アラブ人に割譲を許すことはないでしょう。
そして、もう一方の当事者であるアラブもまた、イスラムのもとに強い結束を続けて、妥協をすることはありません。
イスラエルは、これからも、2500年以上前に記された旧約聖書の世界に生きる異形の国家として、世界の火種になり続けるでしょうし、その地に本当の平和が到来することは、少なくても21世紀中は、ないでしょう。