2024年年始の香港より 中国化が進む香港の最新事情をお伝えします

松本尚典

松本尚典

テーマ:香港 今


1、2024年の年始の香港より


3年に及んだコロナ禍を抜け、2024年は、4年ぶりに、僕は新年を海外で迎えました。このコラムの原稿は、新年を迎えた元日の朝、香港の九龍 尖沙咀(チムチャツイ)のホテルで書いています。

香港を含む、中国圏では、新年は旧暦の春節で祝うものです。そのため、中国圏の元旦は、それほどお祝色はなく、静かです。

中国人の方々は、正月は早々に仕事をはじめます。

今回、僕は、株式会社URVグローバルミッションの香港支店が所属する、香港の経済団体の新年の祝賀交流会に出席するため、年末から、香港に来ています。コロナの影響で、3年間開催されなかった、この祝賀交流会も、ようやく開催が可能となり、今回は、多くの香港の経営者が参加されるということで、人脈の再構築の意味も含めて、僕も久々に香港にやってきました。

2、香港民主化運動の今と、香港の中国化


コロナ禍をえて、2024年年始の時点で、香港の民主化運動は、もうほぼ消えてなくなりました。

それとともに、香港の中心地 尖沙咀に立ってみると、英国の租界の影響がどんどん希薄化し、中国の色彩が強くなっていく様子を肌で感じます。

英国領時代、大きな力を持ち、香港の産業界に厳然とした影響力をいまだに持つ続ける、三合会(トライアッド)ですら、いまや、中国共産党との蜜月関係を作り出し、その強い影響力を維持しているほどです。三合会は、中国が英国とアヘン戦争を興す契機となった、英国の三角貿易による阿片の輸入で、英国の中国大陸への阿片販売を独占した経済人たちによって創設されたという、暗黒の歴史から生まれた経済団体です。100年以上前、英国の手先となって、中国に悪魔の商品 阿片を売った三合会が、今では、中国と蜜月関係を築いて、共産党の香港での影響力強化を支援し、西側の色彩を、香港から拭い去ろうとしています。

僕は、2007年まで、英国のシティを発祥とするコンサルティング会社のニューヨーク法人にて、シニアコンサルタントを務めていました。1997年の、香港の、英国から中国への返還と、その後の一国二制度下の香港を、英国資本の組織の金融コンサルタントの立場で目撃してきた過去もあります。西側の人間として、個人的なイデオロギーでは自由主義を信奉する僕も、香港を吞み込んでゆく共産党のチカラを、今後は無視できません。共産党政権もまた、また、僕のような共産主義イデオロギーや権威主義イデオロギーに組み込まれない外国資本を利用して、香港の中国化を着々と進めています。

中国人は、非常に現実的な民族であり、香港人もまた、極めて現実的です。雨傘運動のような民主化運動は、今や、歴史の中の一幕として、香港から嘘のように消え果て、コロナ前よりも、中国化した香港が、今、僕の目の前に広がっていいます。

3、街の中に増える中国広東語


年末の29日の夜に香港国際空港に僕は到着し、タクシーで尖沙咀のホテルに向かいました。荷物をホテルの部屋に下した僕は、そのまま、香港の街中に、独りで繰り出しました。

年の瀬の香港は、多くのヒトが繰り出し、その雑踏は、以前のままでした。

しかし、街の通りを歩きながら、耳を澄ませていると、そこに聞こえてくる言語は、圧倒的に中国語、おそらくはその中の福建語が多く、英語を話す香港人たちが、ほとんどいなくなっていると感じました。

以前は、尖沙咀のようなエリートの街では、半数ちかくの香港人が英語で仲間と会話していたのですが、今では、ほとんどの香港人たちが、中国語を使うようになっていると、感じました。特に、若者に、その傾向が強いようです。


香港の夜景 


4、英国と香港 その歴史を振り返る


ここで話は、はるか400年前の歴史を遡ります。今の中国と、香港の関係を理解するには、香港の歴史を知ることが早道です。

中国が清代となる頃、イギリスは、世界の覇権を、カトリックのスペイン・ポルトガルから奪取し、その後の大英帝国の基礎となる貿易と植民地ネットワークを切り開いていました。

当時、清朝中国の外国貿易の窓口は、広州でした。一方、イギリスは、中国から輸入する茶葉が高価で、大きな貿易赤字に苦しんでいました。17世紀末の時点では、イギリスと清朝中国との貿易力は、圧倒的に清朝中国が強かったのです。

イギリスが、この状況を打破すべく、考案したビジネスモデルが、三角貿易システムという禁じ手でした。イギリスの植民地となっていたインドで阿片を栽培させ、これを清朝中国に大量輸入させて、清朝中国との貿易赤字を、一転、黒字化するシステムを考え出したのです。

阿片・麻薬や覚せい剤というのは、人間をそれに常習化させる機能があるため、それにはまった人間の富をすべて吐き出させる経済的な働きを持っています。人格が破壊されるまで、それにはまった人間は、それを法外な高値で売る組織に対して、富をつぎ込み、廃人となるまでには、その富を吐き出してしまうのです。そして、国家にそれが浸透してしまうと、その国家は、外国から輸入される阿片・麻薬や覚せい剤を買い続けることになり、貿易赤字が膨らみます。さらに、国家の富を生みだす労働力を破壊し、その国家は、滅亡へと向かってしまうのです。

イギリスは、貿易赤字を解消し、中国を犠牲にして自国の富を増やす禁じ手として、三角貿易による阿片貿易を活用しました。

清朝も、その危機に気づきます。自国を破滅に至らしめる阿片の危険性を悟った清朝は、軍事力でのイギリスの排除に動き出しました。これに対し、イギリスの国会は、1票の僅差で清朝との戦争を決議。はるか極東に向けて、当時世界最強だったイギリス海軍が出動しました。ここに、清朝中国VSイギリスの、阿片戦争が勃発します。

1841年.チャールズ・エリオット大佐率いるイギリス海軍は、香港島の占領に成功。翌年、イギリスの勝利という結果に終わったこの戦争を終結させる南京条約締結され、その結果、この地、香港が、イギリスに割譲されたのです。

香港のイギリス支配は、中国から見ると、屈辱の結果でした。明らかに正義は、中国側にありましたが、圧倒的なイギリス海軍の火力による軍事力の前に、中国が屈服した象徴が、香港の割譲だったのです。

20世紀の100年間、2000年にわたって、世界の大国であり続けた中国とインドは、欧米のもとに、その力をそがれ、屈辱の貧しい時代を送りました。

そして21世紀に至り、中国は、鄧小平体制から集近平体制に至り、欧米と肩を並べる経済と軍事の大国として、復活しました。その中国が、欧米化した香港を、再中国化させようとするのは、自国のナショナリズムの見地からは、当然の流れです。

5、歴史や国際情勢を「いいもの」と「悪者」のような目で見るべきではない


今、自由主義陣営の一勢力となった日本から見ると、民主化勢力を弾圧して共産党支配を進める中国は「悪者」に見えます。しかし、中国からみると、それとは全く違う正義があるわけです。世界の情勢は、どちらかが「いいもの」で、どちらかが「悪者」というような、単純な子供じみた視点でみるべきではありません。

コロナ禍が終わり、活気を取り戻す、2024年の新年の香港に立っていると、その中国のナショナリズムの意志の強さを、ひしひしと、僕は感じるのです。

若者が動いた民主化運動は、今、完全に消失し、香港は、イギリスから離れ、中国化に向けて着実に動いています。街から英語が消え、中国語、それも広東語を話すヒトが増えています。

中国語というのは、僕が話す北京公語(いわゆる、マンダリン)と、方言語である広東語は、英語とフランス語くらいに違います。香港で、僕が、英語や、たどたどしいマンダリンで話しかけると、香港人の誰もがその言語で答えてくれますが、香港人同士の会話がはじまると、もはや、よそ者である僕には、まったく意味がとれなくなります。

6、香港ドルの動き


香港の通貨 香港ドルにも、中国化の傾向は現れています。香港ドルは、日本円のように、日銀紙幣に統一されているわけではありません。香港ドルの発行銀行は、香港上海銀行、スタンダード・チャータード銀行、中国銀行の3行あります。つまり、香港ドル札は、同じ額面でも、発行銀行ごとに、3種類の紙幣があるのです。

言うまでもなく、スタンダード・チャータード銀行は、イギリス資本。いわば、香港がイギリスの支配を受けていた時代の通貨です。そして、香港上海銀行と、中国銀行が、大陸系の銀行通貨です。

香港で、香港ドルを使っていると、香港上海銀行の紙幣がどんどん増えていくのを実感します。香港には、1996年から2007年まで、宗主国イギリス資本側の金融系コンサルティング会社の人間として通っていた僕にとって、香港上海銀行紙幣が占める割合が増える香港ドルは、「好きな女性を、ビジネスの仲間の漢に奪われていく」ような、「複雑な寂しさ」を感じるのです。

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