年収のカラクリ ~年商5億円を超えた経営者たちの、自分の年収の決め方の技~
目次
2、巨大地震、富士山の大噴火など、「いつか起きる」危機に、企業は備えているか?
3、対策は、「食料備蓄」だけではない! 基盤データや通信手段の多様化、クラウドによりバックアップなど、情報の危機対応は、出来ているか?
1、台湾が取り組む戦略 デジタル遷都とは何か?
今、台湾では、中国との緊張関係やサイバー攻撃、海底通信ケーブルの障害、大規模自然災害などを想定し、国家機能や通信機能を止めないための「デジタルレジリエンス」の強化が進められています。
本稿では、その中でも、通信手段や重要データ、行政サービスなどを一つの場所や一つのシステムに依存させず、国内外に分散し、危機が発生しても国家機能を継続できるようにする取り組みを、わかりやすく「デジタル遷都」と呼びます。
台湾を取り巻く安全保障環境は、決して楽観できるものではありません。
2026年現在も、台湾周辺では中国人民解放軍の航空機や艦艇による活動が継続して確認されており、台湾は軍事的脅威だけでなく、通信障害、サイバー攻撃、偽情報、重要インフラへの障害などを含めた複合的なリスクへの対応を進めています。
この時、国としての台湾の存続を左右する重要な要因の一つが、テクノロジーと情報通信インフラです。
現代国家は、政府の指揮命令、金融、物流、医療、エネルギー、企業活動、国民への情報提供まで、その大部分がデジタルネットワークによって支えられています。
つまり、軍事施設だけを守っても、通信やデータが止まれば、現代社会の機能そのものが大きく低下する可能性があります。
台湾数位発展部によると、現在、台湾には15本の国際海底通信ケーブルと10本の国内海底通信ケーブルがあります。
しかし、海底ケーブルは地震などの自然災害だけでなく、船舶の錨などによっても損傷する可能性があります。台湾政府が2026年に公表した2025年の海底ケーブル損傷分析でも、沿岸部では人為的要因、沖合では自然災害が重要なリスクとして指摘されています。
実際、2025年から2026年にかけても台湾周辺では複数の海底ケーブル障害が発生しました。
重要なのは、台湾政府が「ケーブルを絶対に切られないようにする」という発想だけで対策しているのではない、という点です。
一つが使えなくなっても、別の手段に切り替える。
その手段も使えなくなったら、さらに別の手段に切り替える。
台湾数位発展部は、この考え方を「備援再備援」、つまり「バックアップのさらにバックアップ」という考え方で進めています。
海底ケーブルだけでなく、マイクロ波通信、非静止軌道衛星、移動通信、クラウドなど、異なる技術を組み合わせることで、通信経路そのものを多重化するわけです。
これこそが、これからの企業経営にも必要になる「レジリエンス」の考え方です。
台湾の進めるデジタル遷都を企業経営の視点から整理すると、次の3段階に分けて考えることができます。
1. 衛星・海底ケーブル・マイクロ波など、通信手段を多重化する
2. 基盤データや重要システムを地理的に分散して保存する
3. クラウドや分散型システムを利用し、拠点を失っても行政機能を継続できるようにする
これは、「データのバックアップを取る」という単純な話ではありません。
重要なのは、通信、データ、システム、意思決定のすべてについて、特定の一拠点、一企業、一回線、一つのクラウドサービスに依存しない仕組みを設計することです。
台湾政府は、政府の重要拠点に非静止軌道衛星による通信環境を整備するとともに、マイクロ波通信容量や海底ケーブルを拡充し、さらにクラウドを利用したシステムのバックアップや、クラウドネイティブ技術、分散型Web技術などを活用したデジタルサービスの強靱化も進めています。
国家でさえ、情報インフラを一つの場所、一つの通信手段、一つの技術に集中させない方向に進んでいるのです。
企業経営者も、この思想から学ぶ必要があります。
2、巨大地震、富士山の大噴火など、「いつか起きる」危機に、企業は備えているか?
この台湾のデジタル遷都は、日本企業にとっても決して他人事ではありません。
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では、石川県で最大震度7を観測し、津波も発生しました。
元日に突然発生した大災害は、災害は企業側の事情や営業日を選んで発生するものではないという、極めて当然でありながら忘れがちな事実を改めて日本社会に突きつけました。
さらに、日本企業が想定すべき大規模災害は能登半島地震だけではありません。
地震調査研究推進本部は、南海トラフ地震について、今後30年以内の発生確率を「60~90%程度以上」とする評価を示しています。
首都直下地震も、日本の政治、金融、企業活動、物流、通信、人材などが東京圏に極端に集中していることを考えれば、単なる地域災害として扱うことはできません。
また、富士山で大規模噴火が発生した場合には、首都圏を含む広い地域が火山灰の影響を受ける可能性があります。
内閣府も2025年3月に「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」を取りまとめています。
火山灰によって影響を受けるのは、人の移動だけではありません。
道路や鉄道、航空、電力、物流、通信設備、精密機器、空調設備など、現代企業の活動を支えているさまざまなインフラに影響が及ぶ可能性があります。
データセンターそのものが無事であったとしても、そこへ電力が供給されない、通信経路が切れる、運用担当者が出社できないというだけで、企業が利用するITサービスが正常に機能しなくなる可能性があります。
だからこそ、企業の災害対策では「本社ビルが壊れるか」という一点だけを考えるべきではありません。
本社が使えない。
主要なデータセンターに接続できない。
社員が出社できない。
携帯電話が混雑する。
取引先と連絡できない。
物流が止まる。
経営者が意思決定できない。
こうした複数の問題が同時に発生することを前提に、事業継続の仕組みを設計しておく必要があります。
東日本大震災でも、活動拠点やサプライチェーン、情報システムなどを分散させていた企業と、一つの地域や設備への依存度が高かった企業では、復旧までのスピードに差が生じました。
ここから企業経営者が学ばなければならないのは、「災害を予測する能力」ではありません。
予測できない事態が起きたときでも会社を動かせる経営構造を、平時に作っておく能力です。
台湾が軍事・災害・通信障害を想定して国家レベルのデジタルレジリエンスを進めるのと同様、日本企業にも「企業版デジタル遷都」が必要なのです。
3、対策は、「食料備蓄」だけではない! 基盤データや通信手段の多様化、クラウドによりバックアップなど、情報の危機対応は、出来ているか?
東日本大震災以降、日本企業でも食料、水、簡易トイレなどの備蓄はかなり浸透してきました。
東京都帰宅困難者対策条例でも、事業者には従業員の一斉帰宅抑制や3日分の飲料水・食料などの備蓄について努力義務が課されています。
しかし、食料と水があれば、企業活動を継続できるわけではありません。
社員が会社に残ることができても、インターネットが使えない。
顧客情報を見ることができない。
クラウドシステムにログインできない。
決済ができない。
取引先に連絡できない。
受発注システムが止まる。
経営陣が社員に指示を出せない。
この状態になれば、社員が安全でも、企業としての機能は停止します。
特に現在の企業活動は、Microsoft 365やGoogle Workspaceをはじめとするクラウドサービス、各種SaaS、クラウド型会計・販売管理システム、オンラインバンキング、Web会議、チャットツールなど、多くの外部ITサービスに支えられています。
クラウドそのものは、一般的に自社サーバーだけで運用する場合より高い冗長性を持つことがあります。
したがって、「クラウドは危険だから自社サーバーに戻す」という話ではありません。
重要なのは、自社が利用しているクラウドサービスが、どのリージョンやデータセンターで動いているのか、障害が起きた場合にどこまで冗長化されるのか、自社側にバックアップがあるのか、通信回線が切れた場合でも重要業務を継続できるのかを把握しておくことです。
そして、バックアップについても、「データをコピーしてある」だけでは十分とは限りません。
いざというときに復元できるのか。
復元に何時間かかるのか。
誰が復元するのか。
担当者が被災した場合には誰が代行するのか。
サイバー攻撃によって本番データとバックアップが同時に暗号化されることはないのか。
こうしたところまで設計して初めて、バックアップは経営上の意味を持ちます。
企業版デジタル遷都とは、単なるデータ保存ではありません。
情報システム、通信、データ、人材、意思決定権限を分散し、特定の拠点が機能を停止しても、別の場所、別の人材、別の通信手段、別のシステムによって業務を継続できる企業構造をつくることです。
たとえば、本社とバックアップ拠点を同じ首都圏に置いてしまえば、同一の巨大災害で双方が影響を受ける可能性があります。
同様に、複数のバックアップを用意していても、すべてが同じクラウド事業者、同じ通信会社、同じ認証基盤に依存していれば、「見かけ上の分散」にすぎない場合があります。
台湾が「備援再備援」を進めている理由もここにあります。
第一のバックアップだけではなく、そのバックアップが使えない場合まで考える。
企業経営においても、この発想が必要です。
情報システムや通信体制を、有事や災害を前提として設計しておくこと。
それが、危機が起きたときにも企業活動を止めず、顧客への責任を果たし、売上と雇用を守り続ける重要な条件になっています。
4、その時も、事業をとめず、収益を上げ続ける企業と、止まって動けなくなる企業の間に、その後の大きな格差が開く
大地震、津波、噴火、豪雨、感染症、サイバー攻撃、国際紛争、通信障害。
企業を襲う危機にはさまざまなものがあります。
しかも、それが「いつ」「どこで」「どの規模で」起きるのかを、経営者が正確に予測することはできません。
台湾周辺でも2026年現在、中国人民解放軍による航空機や艦艇の活動が継続して確認されており、台湾自身が通信、サイバーセキュリティ、重要インフラ、社会全体のレジリエンス強化を進めています。
日本企業にとって台湾海峡の問題も、決して遠い国際政治の話ではありません。
台湾は世界の半導体・電子部品サプライチェーンにおける重要な拠点です。
台湾海峡や東アジアの物流・通信に大きな混乱が発生すれば、日本企業にも部品調達、物流、金融市場、為替、通信、海外取引などを通じて影響が波及する可能性があります。
重要なのは、どのリスクが実際に発生するかを当てることではありません。
どのリスクが発生しても、「重要な事業を継続できる企業」をつくることです。
そのために必要なのが、BCP、すなわち事業継続計画です。
しかも、BCPは一度文書を作って書庫や共有フォルダに保存して終わるものではありません。
経営戦略、人事、財務、IT、サイバーセキュリティ、調達、物流、海外展開までを横断して設計し、定期的に訓練し、実際に機能するかを検証する必要があります。
経営者は少なくとも、次の問いに答えられる状態を作っておくべきです。
・有事や災害の際、経営陣への連絡がつかなくなった場合、経営の意思決定は、どのような順序でだれが行うか
・従業員への連絡体制をどうするか、稼働を続けられる従業員で、どう事業を継続するか
・情報通信の拠点を多角化して、地域リスクを分散させるか?
・情報通信の状態を把握し、誰がどのように復旧をするか?
・顧客やクライアントへ、サービスの継続をどう、連絡するか?
・取引業者やパートナーと、どのように連絡をとり、物販の状況を把握し、事業を継続するか?
・社員の通勤や安全性を確保し、どのような体制で業務を継続するか?
・社員が社内で食べる食料や水、トイレが使用できなくなった場合の措置など、検討できているか?
さらに経営者には、このチェックリストを一段深く考えていただきたいと思います。
経営者自身が連絡不能になった場合、誰に、いくらまでの支払い権限を与えるのか。
メインバンクのオンラインバンキングが利用できなくなった場合、給与や仕入代金をどう決済するのか。
本社の電話番号が利用できない場合、顧客にどのチャネルから情報を届けるのか。
主要取引先が被災した場合、第二、第三の調達先があるのか。
国内の物流が停止した場合、海外拠点や別地域から代替供給できるのか。
これらは、IT担当者だけの仕事ではありません。
すべて経営の問題です。
コロナ禍でも明確になったように、危機が発生した際には、政府の規制、専門家の見解、社会的要請、顧客行動などが短期間で大きく変化します。
その中で経営者に求められるのは、特定の情報や見解だけに依存することではなく、複数の情報源から事実を収集し、従業員と顧客の安全を最優先にしながら、自社の財務状況や事業特性を踏まえて意思決定を続ける能力です。
そして、利用できる補助金、融資、支援制度、保険なども把握し、キャッシュを守りながら事業を継続する。
危機の最中にも顧客への価値提供を続ける。
危機後には、競合他社より速く通常営業へ戻る。
この差が、危機後の企業間格差につながります。
有事や災害そのものを避けることはできません。
しかし、有事や災害が起きたときに「何が止まれば会社が止まるのか」を平時から把握し、その依存関係を一つずつ減らしておくことはできます。
企業の強さとは、何も起きないことを前提に成長できることだけではありません。
何かが起きても、事業を継続し、社員を守り、顧客への責任を果たし、再び成長軌道に戻れることです。
これが、これからの時代の企業レジリエンスだと僕は考えています。
5、事業の海外展開や、収益の外貨獲得による、為替セキュリティも重要
そして僕は、企業のレジリエンスを考える場合、ITや災害対策だけで終わってはいけないと考えています。
日本円の為替変動、日本市場の縮小、国内人口の減少、特定地域への売上集中などに備えることも、経営上の「セキュリティ」の一つです。
URVグローバルグループは、すでに、売上高の90%が円以外の外貨で、海外での売上となっています。
そのため、円安が進行したコロナ禍後の環境では、円換算したグループ売上高を押し上げる効果も生まれました。
これは、単に「海外で儲ける」という話ではありません。
経営資源の集中リスクを減らすという考え方です。
本社所在地を分散する。
データを分散する。
通信経路を分散する。
調達先を分散する。
顧客を分散する。
販売市場を分散する。
そして、売上を生み出す通貨も分散する。
企業版デジタル遷都を突き詰めていけば、最終的には、このような「経営資源全体の分散」という経営戦略につながります。
仮に首都圏を巨大地震が襲えば、日本の人口、企業、金融、物流、行政機能が集中している以上、国内市場にも大きな影響が及ぶ可能性があります。
一方、海外の特定地域に売上を集中させれば、今度はその国の政治、経済、為替、災害などのリスクを集中的に受けます。
だからこそ、日本だけ、海外だけ、円だけ、特定の国だけに依存するのではなく、市場・拠点・通貨・情報・人材を適切に分散することが重要なのです。
もちろん、このような海外展開や情報システムの再設計には、時間、専門知識、アイデア、そして一定の投資が必要です。
災害や有事が発生してから、慌てて海外拠点をつくることはできません。
通信が止まってから、バックアップ回線を契約することもできません。
データを失ってから、バックアップを設計することもできません。
主要顧客を失ってから、翌日に海外市場を開拓することもできません。
だからこそ、企業に体力がある平時に進めなければならないのです。
台湾のデジタルレジリエンスから日本企業が学ぶべき本質は、「危機が来ることを恐れること」ではありません。
危機が来ても止まらない構造を、危機が来る前につくることです。
URVグローバルグループでは、情報化支援を単なるITツールの導入とは捉えていません。
AI、ビッグデータ、クラウド、情報セキュリティなどのテクノロジーを、経営戦略や企業の生産活動、働き方、海外展開と結びつけ、企業が将来にわたって競争力を維持するための経営基盤として考えています。
企業の情報資産や業務フローを整理し、どこに事業停止リスクが集中しているのかを把握する。
IT・通信・データのバックアップや分散を考える。
AIや情報技術を活用して業務そのものを変革する。
さらに、必要であれば海外展開やグローバルな人材・企業とのアライアンスまで視野に入れる。
「災害対策」「IT」「経営戦略」「海外展開」を別々の問題として考えるのではなく、一つの企業レジリエンス戦略として設計することが、これからの経営には必要です。
自社の情報システムは、大規模災害が起きても本当に動き続けるのか。
主要なクラウドや通信回線が利用できなくなった場合、事業を何時間、何日で復旧できるのか。
本社が利用できなくても、経営判断と顧客対応を継続できるのか。
そして、日本市場そのものが大きな影響を受けた場合にも、売上を生み出し続ける別の市場を持っているのか。
こうした問いを経営課題として検討される企業経営者の方には、URVグローバルグループの情報化支援事業をご覧いただきたいと思います。
「ITを導入する」ことを目的にするのではなく、「何が起きても事業を継続できる企業をどうつくるか」という経営の視点から、自社の情報化戦略を改めて考えてみてください。
URVグローバルグループの情報化支援事業
https://urv-group.com/services/it-support/


