国際ビジネス小説「頂にのびる山路」 副業飲食起業編 第2話「開店」をリライトしました
1.「六次化」とは、何か?
「六次化」という言葉をご存じでしょうか?
六次化とは、「一次産業」(農漁畜産などの食糧生産業)、「二次産業」(製造加工業)、「三次産業」(販売サービス業、外食中食産業)の、1+2+3=6、の六次化を意味します。
一次産業・二次産業・三次産業の、川上から川下までのすべてを、一貫して行う事業体に移行することを、六次化と呼びます。
一次産業者が、二次産業や三次産業に進出し、一方、三次産業者が、一次産業・二次産業に進出するなど、川上と川下の、相互の乗り入れが激しくなっています。
2.六次化に向かう外食産業
とりわけ、いま、注目すべきは、三次産業である外食産業の事業者が、二次産業に参入し、更に、一次産業との提携を進めたうえで、自ら一次産業に進出する動きが盛んに行われていることです。
最も目立つのは、外食産業が、大手だけでなく、中小企業が、自ら、一次産業者となって、農業生産や畜産に進出する動きです。
外食チェーンが、自らの農園を保有し、自ら製造工場を保有する、という動きが活発化しているのです。
なぜ、外食産業は、このような六次化の動きにでるのでしょうか?
いま、消費者の健康志向や、競合との差別化の動きの中で、よい食材の仕入れが必須になっています。他社が仕入れることができない差別化できる食材を、安定的に、安いコストで獲得できる仕組みを造る必要があります。
食材というものは、その流通過程で、多くの中間事業者が介在します。その典型が、卸や、仲買人さんという事業者です。生産者の手から、三次産業事業者の手に渡るまで、協同組合や、市場、そして仲買人と、多くの事業者の手にわたり、そして、その中で、「競り」が行われて、価格が高くなり、中間事業者の利益が生まれるとともに、最も高値で競り落とした事業者がこれを買うことができる仕組みも、長年にわたって、慣習的に動いています。
このような仕組みの中で、よい食材を購買すると、その安定的な確保がしにくく、仕入れ価格は高くなり、三次産業事業者の利益を圧迫します。
このような慣行を三次産業者が打ち破るには、一次産業を行っている農園主さんと直接提携し、あるいは、自ら農園主となってそれを経営するという行動に出るのが、最も効果的な方法です。
中に入っていた事業者を排除することで、仕入価格が大きく圧縮でき、生産された産物を、最優先で、自社で調理・販売することができます。
3.世界の食糧事情 ~日本人が餓死する未来は、もうすぐそこにきている
このような六次化は、未来の日本社会にとって、更に重要かつ戦略的な意味があると、僕は考えています。
日本は、少子高齢化が世界の国民国家の中で、最も進む国です。しかし、一方、世界の人口は、増大を続けています。世界の人口は、そのピークを、2080年代に迎えると考えられており、それまで、インドやアフリカで、人口が増大してゆきます。
もし、インドやアフリカの諸国が政治的に安定し、経済力がアップして、中間層が激増した場合、世界の食糧は、これらの国に、吸収されていきます。
一方、日本は、人口減少が著しく、今後、経済力が、これらの新興国に対して、大きく落ちてゆくでしょう。そうなると、日本が食糧を確保できない時代が到来する可能性があります。
日本人が餓死する未来は、もうすぐそこにあるのです。
4.飲食業が未来を生き残るためには、生産から加工調理販売までの総合力が求められる
国家単位のレベルでは、この問題が食糧安保問題として議論されますが、これは、個別の飲食事業者に襲い掛かる問題でもあります。
飲食事業を、持続的に成長させ、発展を続けることを考えるならば、生産者とアライアンスを組む、更に進んで、自ら生産体制をとる、という、川上への事業展開が必要になります。
よい食材を安いコストで、持続的に獲得し続けるためには、自社による六次化は、重要な戦略ということになります。
外食産業が、自社が調理販売する食べ物の原材料を、市場で調達しにくい、あるいは調達に、相当なコストを要するという時代が、到来する可能性を、多くの専門家が指摘しています。
世界人口の増大、途上国の新興国化と中流階級の大量な発生、日本の人口減少による少子化とそれによる経済力の減退、円安。こういった要因が重なり、日本の外食産業の食糧獲得の未来は、かなりの困難が待ち受けるでしょう。
その困難に備える「先物取引」が、六次化という戦略です。
5. URVグローバルグループの 飲食六次化事業
URVグローバルグループは、僕の個人事業としての飲食事業を引き継いだうえ、その事業を、飲食六次化事業と改称しました。
URVグローバルグループ 飲食六次化事業
https://urv-group.com/services/foodbusiness-sixthsector/
そして、インドの二か所に、野菜生産工場を現地企業と合弁で設立し、その野菜のインドかの輸出を開始しました。
現在のビジネスは、URVグローバルグループの外食事業の原材料としての食材の生産という形ではなく、一次産業への進出とノウハウの育成、そしてその野菜商品の輸出という商社ビジネスにとどまっています。
しかし、近い将来、URVグローバルグループは、現在の進出の基本的地盤である東南アジアから、インドをはじめとする南アジアへ、外食事業の進出のベクトルを向けていくことになるでしょう。
松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/