新型コロナ禍の検証~消毒サ-ビス事業を振りかえって~

松本尚典

松本尚典


1.新型コロナ禍の時代


2020年の年初から、世界を襲った新型コロナ禍は、世界のヒトの流れに大きな打撃を与え、経済を直撃しました。

この原稿を執筆している2022年7月は、日本は第七波の過程にあります。

ただ、世界的には、既に新型コロナ禍による経済的な打撃は乗り越えられ、復興の流れにのっています。日本は、世界からみると、コロナ禍への初期対応も遅かっただけでなく、逆にコロナ禍からの脱却も遅く、世界的な視点で観ると、非常に鈍感な対応に終始しました。

新型コロナ禍に対応する日本をみて、僕の率直な感想。

「日本は、本当に老化したな。」

一方、このコロナ禍で、僕が投資経営するURVグローバルグループや僕の個人事業は、海外事業での新規展開が留まったにもかかわらず、コロナに対応した事業が大きく伸び、結果的に業績の成長は止まりませんでした。コロナ初年度にあたる2019年度第5期は、対前年で77パーセントまで総売上高ベースで落ち込みましたが、2020年度第6期は、対前年で139パーセントで、回復。2021年第7期は、創業来最大の売上高を出しました。

そして、今期、2022年第8期は、グループと僕の個人事業の総売上高は、日本円換算ベースで、20億円を確実に突破する見込みです。

日本の国内事業でも、コロナ前の2019年に進出した中食事業(デリバリー事業)や、このコラムでとりあげる消毒サービスなどが、大きくグループの経営に寄与し、事業を新型コロナ禍でも成長させることができました。

2022年段階で、僕は、多くの経営者の方から、
「何故、URVさんは、新型コロナ禍でも、大きく業績が伸びたのですか?」
と質問を受けます。

そこで、今回のコラムでは、新型コロナ禍での象徴的な事業ともいうべき、消毒サービス事業について、それを立ち上げた経緯や、経営者としての僕の判断を、発信してみたいと思います。但し、お客様の企業様の感染情報に関わることなので、具体的なお客様に関する情報は、掲載できません。悪しからず、御容赦ください。

2.URVグローバルグループの消毒サービスの立ち上げの経緯


URVグローバルグループは、2022年7月現在、世界15都市に拠点を持ち、企業の海外進出支援や、総合商社としての事業を進めています。

従って、海外の各地域における最新の情報を収集する活動を各国で展開しています。

そんな中、2019年12月に、僕は、中国武漢で発生した新型コロナウイルスを知りました。

このウイルスは、空気感染をしないながらも、その感染力は爆発的で、しかも、人類は、いまだ、ワクチンや治療薬を持たないという最新情報を入手しました。

日本人が、いまだ、ウイルスの脅威にまったく気づいていない段階で、世界では、すでに、安全保障体制をとる国が現れ始め、発生源の中国では、大変な事態に至っていましたが、日本は、東京オリンピックを控えていたため、その発生源の中国からの人流を阻止する政策を、大幅に遅らせていました。

僕は、中国の状況に関する正確な情報を収集した結果、
「これは、中国の製造に依存している消毒用の製品や、マスクなどの商品が、大幅に欠乏するに違いない。」
と判断しました。

そこで、会社を守るため、アンチウイルスに関連する商品の仕入れを開始しました。

厚生労働省や世界の研究機関の正式な発表を勉強し、新型コロナウイルスに強い効果が期待される、高濃度エタノールや、防護服、防護マスクなどの商品の仕入れを2月には開始したのです。

案の定、4月に至り、日本では、マスクが小売店や薬局から消え、消毒薬も店頭から消えました。多くの個人がマスクを購入できず、企業がオフィスの消毒をするにも、消毒薬がありませんでした。

このようなパニック状態の中、日本政府や地方自治体は、「ヒトとウイルスの接触を減らす」政策を行うべきところ、「ヒトとヒトとの接触を80%減らす」という、目的と手段が齟齬したアンチウイルスの仮説を鵜吞みにして、迷走を始めます。

長期戦になるアンチコロナの闘いに、経済と厚生のバランスをとるという政治が果たすべき機能を忘れ、ヒトとヒトとの距離を離すという手段が目的と化し、そのための保障に莫大なカネを配り、日本という国を、一時的に社会主義国家に変えてしまいました。

これによる、日本の働き手や企業の、競争力の低下は、回復できないほどの「老化」を日本に齎していきます。

そんな中、株式会社URVプランニングサポーターズの不動産総合事業で、管理を任されているビルのテナントさんで、新型コロナ感染が生じました。ビルオーナーの管理会社から、ビルの消毒のご相談を受け、グループで確保した高濃度エタノールを使用した消毒作業をお引き受けしたことがきっかけになり、僕は、「新型コロナウイルスと闘う企業」というコンセプトを打ち立て、社会主義化する日本から、自分の組織の競争力を守る方針を打ち立てます。

そして、その中の一つのシンボルの政策として、消毒サービスを事業化することを目指しました。

厚生労働省の指定基準や、新型コロナウイルスの感染の最新情報を僕自身で勉強し、ウイルスに対する安全策を勉強しました。ウイルスが付着している可能性がある防護服の安全な脱着の仕方や、防護マスクの安全性、更に、夏季における機密性の高い防護服を着用することに供えた空調服の導入などを進め、安全に「ヒトをウイルスから守る」事業の体制を確立してゆきました。

緊急事態宣言が発令されると、多くの仕事を失った方が出ましたので、その方々を緊急に募集し、安全策を説明しての、消毒臨時部隊を結成しました。そして、安全をアピールするため、僕自身が、先頭にたって、消毒の現場に立ちました。

価格面も、当時は、消毒薬がなかったことから、消毒業者のサービス価格が高騰していましたが、弊社は、それを本業にしているわけではなったので、業界最安値での設定を行い、2020年8月には、ネット広告を開始しました。

3.消毒サービスの受注の推移の特徴


この後、本稿を執筆している2022年8月まで、約2年にわたり、消毒サービスを、株式会社URVプランニングサポーターズ 不動産総合事業デビジョンは、多くの企業様に提供をして参りました。

このサービスの提供を通して、僕の目で見た、新型コロナ禍にゆれる企業の、様々な企業の姿を例にとって、新型コロナ禍にゆれた企業の姿を検証してみたいと思います。

消毒サービスの受注に波と、コロナ感染者数の関係


URVグローバルグループのグループサイトには、消毒サービスのランディングページ(LP)を設定しました。

URVグローバルグループ 不動産総合事業 消毒サービス
https://urv-group.com/services/realestate/realestate-management/disinfections/


通常、LPというのは、リスティング広告をかけて集客を図ることを想定したページですが、僕は、消毒サービスについては、あえて、一切広告を行いませんでした。

このサービスは、東京商工会議所主催の「“勇気ある挑戦” 緊急掲示板」の、コロナ禍での社会に貢献する事業の取組事例に掲載され、また、週刊ビル経営などのメディアにとりあげられましたので、アクセス数が多くありました。

広告費をかけるのではなく、その分、価格を抑え、都内の消毒サービスでは、最安値を実現して、サイトに掲載をしました。

その結果、Google検索から観ていただく、たくさんの検索結果に恵まれました。

受注に関しては、以下のような特徴があげられます。

・お電話やメールでのお問い合わせが、非常に緊急性の高いものが多く、すぐに、消毒をしてもらえないか、という緊急対応を求めるものが多い。

・お問い合わせが、コロナ感染者数にではなく、政府の緊急事態宣言などの施策が発令されると極端に増える。

・繰り返しのリピートの企業様が、非常に多い。


消毒サービスでは、お問い合わせが、社内でのコロナ患者さんの発生により、緊急に消毒をしてほしい、一刻も早くウイルスをオフィスから除去したい、という切実なお問い合わせが殆どでした。

そこで、弊社コールセンターでは、お待たせすることなく、施工面積から施工金額を即割り出せる価格システムを導入し、お客様の決済が下り次第、現場に即応体制で、完全に防備した消毒スタッフが急行できる体制を目指しました。

一方で、お問い合わせが平均的に入ってくるのではなく、政府の緊急事態宣言が出るなどの社会的な緊張感の高まりに比例して、お問い合わせが高まるという傾向が顕著でした。

お問い合わせが集中して、現場のスタッフが足りなくなり、お断りをしなければならない事態も発生しました。

消毒を巡る企業の体制 その1 ~コロナ感染者の発生を契機に


一方で、一度、消毒をさせていただいた企業様から、弊社の即応体制にご信頼をいただき、コロナ患者の方が出ると、そのたびに、ご依頼をいただくケースも増えました。

最も、多かった企業様 A社様は、この2年間で、合計10回の消毒対応をさせていただきました。

A社様は、中国の方が代表取締役を務める会社で、従業員の方の殆どが中国の方という会社です。はじめて、A社様の総務担当の方が、URVグローバルグループの消毒サービスのお問い合わせページからアクセスをいただいたのは、2021年のお正月でした。

弊社グループのコールセンターの営業がお休みをいただいていたため、お電話で、代表者の僕が直接、対応の御連絡をとらせていただきました。お話をお聞きしたところ、年末の最終日に、社員の方の1名の、コロナ陽性が判明したことのこと。

年始の始業の前に、100㎡程度のオフィスを消毒してもらえないかという、ご依頼でした。

正月の期間中、弊社グループの担当社員も、全員お休みをいただいていましたが、とてもお困りのようなので、僕が、自分で出動して消毒を行うことにしました。

僕は、経営コンサルタント職を長年やってきましたが、消毒サービスが属する不動産総合事業では、専任の宅建士でもあり、かつ、ビル管理などの不動産管財業務でも、社員たちの先頭を切って、現場に立っています。

経営コンサルタントという職は、レポート屋で、現場を知らずに理屈ばかりこねくりまわしている空論の輩が多いという印象を持たれていると思いますが、僕は、単に、グループ各社の経営を行うだけでなく、海外進出支援事業や、不動産事業から、エンターテイメントに至るまで、自分が現場の先頭にたって、常に事業の旗を、現場で振るっています。

消毒サービスでも、防護服や、防護マスクで完全防備し、自らコロナ感染の、バイオハザードの現場に立って、自ら社員に安全性をアピールして、消毒業務を行いますので、この時も、自分で、現場に高濃度エタノールを運搬し、消毒を実施しました。

ちなみに、弊社が使用する高濃度エタノールは、メチルアルコールという危険物乙類第四種に属する液体で、運搬には、危険物取扱者乙類第四種の資格が必要ですが、僕自身が、この資格を持っており、僕の管理のもとに業務を進めていますので、僕自身が、危険物を車で運搬し、またはそれを監督する資格を持っています。

その時、正月三が日に、代表者である僕が、消毒に直接、お伺いしたことで、A社様から、大きな信頼をいただいたのだと思います。

A社様は、その後、定期的なオフィス消毒のご依頼をいただき、既に、10回以上、消毒を継続的にさせていただいております。

このようにオフィスに対するウイルスセキュリティ意識が高い企業様から、A社様を含めて、数社、定期的な消毒をご依頼いただくこととなり、消毒サービスは、弊社グループの、予想外の安定的な収益源の一つに成長しました。

消毒を巡る企業の体制 その2 ~危機意識の高い経営者や総務


一方、お客様の企業の中には、残念ながら、A社様のように危機意識の高い組織ばかりではありません。

次にご紹介するB社様は、一体、何のため、オフィスの消毒をしているのかと疑問に思うような体制の企業様でした。

B社様は、2フロアーのオフィスを持つ企業で、弊社では、社員の方のコロナ陽性者が発生するたび、合計3回、消毒を実施させていただいた企業様です。

通常、社員の中にコロナ陽性者が出ると、濃厚接触の社員は、会社からPCR検査を受けることが求められ、オフィスは、陽性者発生とともに閉鎖され、社員の方は、テレワークに入ります。

B社様は、コロナ陽性者発生から、総務部門の方から、弊社に消毒の依頼が入るのですが、その総務部門のオフィスの閉鎖が全くなされていませんでした。

従って、弊社のスタッフが消毒に伺うと、オフィスには、多くの社員がノーマスクで働いており、ミーティングスペースでは、ノーマスクで会議をやっているような社員の方もいました。総務部門からの、陽性者発生の連絡が行き届いておらず、社員の方々は、私どもが、防護服に防護マスクという、非常な姿で現場に現れると、驚いて、ようやく、オフィスから退室するというような状態でした。

社員の方に話を伺ってみると、コロナ陽性者が出ても、濃厚接触者の特定によるPCR検査も行っておられないようでした。

ただ、弊社への消毒のご依頼だけは、しっかりといただくので、おそらく、総務部門の、陽性者が発生した際のマニュアルには、消毒せよと書いてあるのかもしれません。

ただ、陽性者発生から、消毒まで、PCR検査を受けない社員が、集まってオフィスでミーティングを、しかもノーマスクでやっているのです。

そのため、消毒を要する陽性者発生が、数度もあり、危機意識が低いと、このような事態になるのだなあと、僕は、感じた次第です。

B社は、なんとも、不思議な会社でした。

4.次の脅威に向けた備え


新型コロナウイルスは、おそらく消失することはないでしょうが、他方、社会は、それへの対処方法を深化させ、感染者の波がきても、社会は落ち着きを取り戻しています。

しかし、これで終わったわけではありません。

人類が全く知らないウイルスの来襲、軍事侵攻の顕在化、大災害の発生。
これらの脅威は、今後も必ず、人類、そして日本社会を襲うでしょう。

僕が率いる、URVグローバルグループは、今回のコロナ禍で、消毒サービスによって、「ウイルスと闘う企業」として名乗りをあげ、多くの企業様に安全を提供し、そして、自社グループの社員からは、一人の感染者も出すことなく、新型コロナ禍を乗り切りました。

そして、多くの経験や、危機管理意識を、僕自身も学びました。

仮に、次の脅威が顕在化したときにも、URVグローバルグループは、首を竦めて、災害の過ぎるのを待つだけの会社ではなく、会社を守りながらも、社会のため、脅威と闘う強い会社であり続けたい思っています。

皆さんは、次に再来するであろう、脅威に、心と、会社の在り方の準備は、できていますか?

続く

松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス

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