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松本尚典(まつもとよしのり) / 経営コンサルタント

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コラム

合名会社を使って、債務を免れる「荒業師」たち

2022年6月22日 公開 / 2022年9月16日更新

テーマ:銀行口座 方法

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 事業計画書社会 勉強法ビジネスモデル


1.合名会社が、何故、令和の時代に、まだあるのか?


会社法の基本書を読むと、一番はじめに書いてある、会社の種類。

今の、日本の企業のほとんどは、株式会社。

ひと昔前には、有限会社という制度があり(今は、新たには設立できません)、株式会社と並んで、物的会社と呼ばれる仕組みです。

そして、それと対比される、人的会社という制度が残っています。

現在でも、多く利用される合同会社に加え、合名会社・合資会社という制度も、いまだに、人的会社として、会社法に残っています。

このうち、合名会社というのは、無限責任社員と呼ばれる、組合契約の組合員に類似した社員で構成される会社です。

会社債権者に対して、無限責任を負う社員で構成される会社で、極めて、前近代的な組織です。

多くの企業法務を学ぶ人には、
「こんな会社、もう、実用性がないでしょ!」
と、思われています。

ところが、調べてみると、令和の現代でも、合名会社は少数ですが、存在しています。その多くは、親族の同族経営の小規模な会社です。

一方で、一昔前、この合名会社という組織形態は、裏の「荒業師」たちによって、利用される、かなり、危ない制度でした。

今日のコラムは、この合名会社をめぐる、闇の紳士たちによって利用された、法律の罠的な話題を発信します。

2.合名会社は、個人の債務の返済を免れる、荒業の道具として利


合名会社は、無限責任社員だけによって構成されている会社です。

株式会社は、有限責任の原則が貫かれ、社員である株主は、資本の払い込み金額以上の責任を負いません。そのため、債権者保護の観点から、設立や新株発行の際の出資は、必ず全額の払い込みを要求されます。例えば、設立時の株式引受額の現実の払い込み確認できなければ、株式会社は設立の登記ができません。

一方、合名会社は、無限責任社員が社員ですから、設立時の資本の払い込みがなくても設立ができてしまいます。言い方を変えれば、払込なしで、社員とは別の法人格を取得する技術が合名会社なのです。

ここに莫大な借入金を起こした個人がいて、その金額と同額の現預金を保有しているとします。この個人が、借入と同時に、この現預金での返済を行わないことを企みます。そこで、払込をせずに、合名会社を設立し、その名義の銀行口座をつくり、個人の現預金をその口座に移してしまいます。

そうなると、債権者は、この個人への債権の取り立てのために、その現預金を差し押さえることが非常に難しくなります。なぜなら、その現預金は、合名会社という、社員とは別の法人格の財産だからです。

ちなみに、株式会社を設立し、現預金でその会社への出資をしてしまうと、その個人は、現預金金額に相当する株式の権利を持っていることになりますから、債権者は、この株式を差し押さえて回収することができます。

合名会社には、社員権はありますが、それは無限責任をおうという権利ですから、株式のように、簡単にはいきません。

このようにして、債権者の回収を阻止する方法として、合名会社は、過去に利用された経緯があります。

3.債権者による退社制度

債務者は、まず、様々なところから借入などを行い、債務を負います。

その後、自分1名が無限責任社員である、合名会社を設立します。株式会社の設立には、資本金の払い込み責任が発生しますが、合名会社にはそれがないため、資金がいらずに合名会社は設立できます。

現在は、株式会社は、資本金が1円でも設立できるようになりましたが、以前は、株式会社の最低資本金は1000万円、有限会社でも300万円が必要で、それを払込み、銀行の証明がなければ設立ができませんでしたので、それがいらない合名会社を利用したのです。

そして、この設立した合名会社に、自分の預金を移してしまい、自分は無資力になってしまいます。そうすると、債権者は、この合名会社の預金を差し押さえることができず、回収ができなくなってしまうわけです。

このような債務を免れる手段として、以前は、合名会社が悪用されました。
そこで、会社法は、債権者による、合名会社の社員の退社制度をもうけて、この悪用に対し、債権者を保護したのです。

4.現在では株式会社を、合名会社のかわりに悪用しようとする輩


現在の会社法は、先に述べたように、有限会社を廃止し、株式会社の最低資本金制度を辞めました。そして、株式会社の設立手続きを、非常に簡易にしています。

そのため、簡単に、かつ、ほとんど資金もいらずに、株式会社を設立することが可能となったため、上記の合名会社を利用していた荒業師たちが、株式会社を利用して、これを行うことも考えられます。

ただ、現在の制度は、このような法人格の悪用を封じ込められるようになっています。

銀行口座の開設の困難性


別のコラムでも解説をしましたが、現在、株式会社を設立して登記ができた場合でも、銀行の預金口座を作ることが、非常に難しくなっています。

https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/column/5108453/

特に、会社法では認められている資本金が非常に少ない会社を設立しても、その実態が怪しければ、銀行は、普通預金口座の開設を拒否します。

そうすると、実際上、このような悪用は、難しいということになります。

法人格否認の法理


では、仮に、このような規制を潜り抜けて、銀行口座を開け、債務者が財産を法人名義に移せたとしましょう。

それでも、債権者が、この法人名義の財産を、債務者個人の財産と同一視して、その財産の実行を可能にするのが、最高裁判例で確立された、法人格否認の法理です。

この法理は、法人格を濫用し、あるいは法人格が形骸化されていると判断される場合、その法人格を否認して、法人の財産を、支配株主経営者の財産と同一視して、その実行を認める理論です。最高裁判所の確立した判例法理ですので、上記のような荒業師の所業は、今では、実行できなっています。

続く

松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス

https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/

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