経営者は、備品の購入の「落とし穴」に注意しよう

松本尚典

松本尚典

テーマ:補助金 法人税 


1.何が消耗品で、何が備品でしょうか?


個人事業主が事業をはじめれば、事業所得税の申告を確定申告で行わなければなりません。そして、会社を設立すれば、法人税の申告を決算後に行わなければなりません。

加えて、青色申告の特典をうけるためには、会計の帳簿を作成しなければなりません。会計の帳簿は、勘定科目に分類して作成をしていくことになります。

この勘定科目の中で、間違えやすいものがあるのですが、その中でも、一番、間違えやすいのが、消耗品です。

この消耗品に似た勘定科目で、備品という科目があります。

実は、この消耗品に計上するか、備品に計上するかは、会計・税務のルールで決まっているのです。

次に掲げるモノの中で、どれが消耗品で、どれが備品になるでしょうか?

1.1本150円のボールペン
2.1台30,000円のカメラ
3.1台50,000円のパソコン
4.1台90,000円の一眼レフボディと、1本30,000円の一眼レフレンズ(バラバラで購入)
5.1台120,000円の一眼レフカメラ(セットで購入)
6.1台400,000円の複合機


さて、どれが消耗品で、どれが備品でしょうか?

正解は、
1.2.3.4.が消耗品で計上可能。
5.6.が備品で計上することが義務付けられています。

そして、5.は税務上、一括で購入年度での損金計上が認められています。
6.は、減価償却資産として、減価償却の対象となり、購入年度での損金計上が、一部しか認められません。

2.消耗品と備品の違い


消耗品と備品は、似たモノながら、会計と税務の処理が異なります。

・消耗品は、販売費及び一般管理として計上でき、そのまま損金として認められる
・備品は、資産として計上され、減価償却の方法を選択して、費用化しなければならない


特に、4.と5.は、同じ商品でも、購入の仕方が異なるため、4.は消耗品で計上できますが、5.は、備品として計上しなければなりません。そして、5.を購入年度で損金として落とすためには、一旦、備品として計上したうえで、購入年度での一括損金計上をする処理をしなければなりません。

このように、消耗品と備品は、前者が損益計算書の世界で費用化して、損金計上が容易にできる(つまり購入した年度に、単純に経費として落とせる)のに対して、後者は貸借対照表の世界で資産として計上し、将来の費用として会社の財産に計上しなければならないという違いがあります。

3.消耗品と備品の基準


では、ここで、消耗品か、備品かの基準を書いておきましょう。

・取得原価(購入価格) 100,000円未満のものは、消耗品
・取得原価 100,000円以上300,000円未満のものは、備品として計上し、一括償却が可能
・取得原価 300,000円以上のものは、備品として原価償却の対象としなければならない


4.経営者として気を付けなければならない落とし穴


さて、ここからは、経営者がよく落ちてしまう落とし穴について、書いて参ります。

【事例1】 単価をばらせるものは、バラして購入する


この事例は、先にあげた、4.と5.に関する落とし穴です。

4.1台90,000円の一眼レフボディと、1本30,000円の一眼レフレンズ(バラバラで購入)
5.1台120,000円の一眼レフカメラ(セットで購入)


さて、この4.と5.は、同じものを購入しているのです。

5.の120,000円の一眼レフカメラを、4.では、ボディとレンズにわけて購入しているわけです。

そうすると、5.では備品として資産計上しなければならないのに対して、4.では、消耗品として経費で落とせてしまいます。

このような100,000円をまたぐ場合には、備品であっても一括で損金計上が認められますので、結果的には、大きな違いは損金計上では、でてきません。

しかし、これが、1,000,000円の備品を、250,000円の4つに分解して購入できるような場合であれば、大きな差がでてきます。

仮に、その備品が5年の定額法による償却の備品であるとすれば、1,000,000円で一括購入した場合、購入年度の現金のキャッシュアウトが、1,000,000円に対して、損金計上が200,000円しか認められません。

仮に法人税率(法人税及び法人地方税の合計)が35%とすれば、購入年度は 1,000,000-200,000円=800,000円 の損金で落とせないキャッシュアウトが発生し、法人税が 800,000円×35%=280,000円 多く支払わなければならなくなります。

単価をバラせるものはバラして購入し、できる限り、消耗品や一括償却が認められる備品で購入する道を考えるのは、賢い節税策です。

【事例2】 単価が300,000円以上の備品は、現金で購入せ


さて、上記のように、300,000円以上のモノを、それ以下に分割して購入できればよいのですが、常にそれができるとは限りません。

その場合、備品として減価償却資産として、キャッシュアウトを増やすことを避ける方法が、リースを利用して購入する方法です。

よく【事例2】 単価が300,000円以上の備品は、現金で購入せず、リースで購入する【事例2】 単価が300,000円以上の備品は、現金で購入せず、リースで購入するがあります。

個人の消費者が、カードローンなどで多額を借りたり、あるいは他人の連帯保証人になったりすることは、非常に慎重にしなければなりません。しかし、事業を行う経営者の場合、借入金は、事業のレバレッジをかけるために必須です。また、リースは、以下で述べるように、節税をするのに利用できます。

経営者は、是非、借入金やリースなどの使い方に精通するようにならなければなりません。

さて、事業を営む上で、活用するリースには、2つの種類があります。

・ファイナンスリース
・オペレーティングリース


このうち、多くの中小企業が活用するのは、オペレーティングリースです。

さて、このオペレーティングリースを使って、1,000,000円の備品を購入するとしましょう。

オペレーショングリースは、リース契約時に、その備品の所有権を取得するのではなく、あたかもリース会社から賃貸借契約をしているように、リース料を支払う会計処理をすることができます。

そうすると、備品の所有権を取得していませんので、この備品を資産として計上する必要はなく、減価償却の対象にもなりません。

従って、リ-ス料を支払った年度で、そのリース料を、全額損金計上することができます。
そうしますと、最初に1,000,000円の購入資金と、減価償却できない金額に相当する法人税の課税がありません。

これが、オペレーティングリースを活用するメリットです。

備品購入をして、更に、法人税を支払うという、キャッシュアウトを防ぐことができます。

【事例3】 補助金などの対象として一括購入する備品の、落とし


今、補助金申請を代行するコンサルタントの方が、大きく広告を展開しています。URVグローバルグループでも、企業の補助金の支援を行っていますが、URVグルーバルグループでは、補助金に精通した専門士業が、補助金のメリット・デメリットをきちんと説明し、理解をされたうえで申請するお手伝いをする方針を採用しています。

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しかし、そのような方針の方ばかりではありません。

メリットだけを強調し、申請の手付金と、許諾という補助金の「中間」段階で、成功報酬をとってしまうと、あとは、放り出してしまうようなコンサルタントも存在しています。

補助金の中には、備品の購入に対して、補助金を受け取ることができるものも少なくありません。

このような補助金を使う場合、注意をしなければならないのは、補助金を使っての備品購入は、補助金は入金されるはるか前の段階で、全額の支払いを行って購入し、その後に、補助金の申請手続きを行う、ことです。

補助金は、申請から入金まで、半年またはそれ以上の期間がかかります。そうすると、補助金の入金よりもはるか前に、購入の支払いを済ませる必要があります。

それだけではありません。

補助金の対象とするためには、前述のようなリースは組めません。そうすると、備品の購入代金のうち、損金で計上できるのは、数年分の1ということなります。それ以外の部分には、法人税が課税されます。

仮に、5年の減価償却期間の備品の場合、取得原価の20%しか、当期では損金計上できません。残りの80%に相当する益金に、約35%の法人税が課税されることになりますから、取得原価の28%が法人税で課税されることになります。

補助金で、購入価格の3分の1(つまり50%)が補助されるという補助金の場合でも、その半分以上が、法人税で課税されてしまうのです。

申請のコンサルタントトへの手数料や、申請の手間を考えて、それで見合うかどうか、充分、吟味して、補助金を使うかどうかを検討したほうがよいでしょう。

しかも、補助金の入金が、年度をまたぐ場合、備品購入代金と、法人税納税が先に必要となってしまうことすらあります。

儲かっているのは、申請コンサルタントだけ、というようなことが起きないように、注意をする必要があります。

続く

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