実刑が確定したら|収監までの流れと準備

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

実刑判決を受けた、あるいは受ける可能性が高いと告げられたとき、多くの方が最初に知りたいのは「いつ刑務所に入るのか」ということだと思います。ただ、この問いに一つの答えはありません。判決の日に身柄がどうなっているか、つまり勾留されているのか、保釈中なのか、在宅で裁判を受けていたのかによって、その後の進み方が大きく変わるからです。

 また、「実刑判決が言い渡された日」「判決が確定した日」「服役する刑務所が決まる日」は、それぞれ別の日です。報道では一続きの出来事のように語られますが、手続としては段階が分かれていて、段階ごとにできることも違います。

 この記事では、実刑判決が出てから刑事施設に収容され、服役先が決まるまでの流れを条文と公表資料に沿って整理し、あわせて収容までに確認しておきたい手続と生活の準備をまとめます。なお2023年から2025年にかけて刑事訴訟法が段階的に改正され、この場面のルールはいくつか変わりました。以前の解説と食い違う箇所については、その点も示しながら説明します。

この記事で扱うこと

 この記事は、拘禁刑の実刑判決(刑の全部の執行猶予が付かない判決)を受けた方と、そのご家族を想定しています。扱う範囲は次のとおりです。

  • 判決の言渡しから判決の確定までに起きること。
  • 確定してから刑事施設に収容されるまでの流れ。
  • 収容された後、服役する刑務所が決まるまでの手続。
  • 収容までの期間にしておきたい生活面・手続面の準備。


 量刑がどのように決まるかや、控訴すべきかどうかの判断そのものは扱いません。また、2025年6月1日に懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されているため、この記事では原則として「拘禁刑」と表記します。

「実刑が確定した」とはいつのことか

 刑事訴訟法471条は、裁判は確定した後に執行すると定めています。刑期の進行や刑事施設での服役は、判決が確定してから始まります。まずは、この「確定」がいつ起きるのかを押さえておく必要があります。

判決の言渡しから14日が過ぎると確定する

 控訴の申立てができる期間は14日です(刑事訴訟法373条)。この期間は裁判が告知された日から進行し(同法358条)、初日は数えないため(同法55条1項)、実務上は「判決の言渡しの日の翌日から14日以内」ということになります。裁判所は有罪判決を宣告するときにこの期間を告げることとされており、法廷では「明日から数えて14日以内」といった言い方がされます。この間に控訴が申し立てられなければ、期間の満了によって判決が確定します。

上訴を放棄・取り下げると、その時点で確定する

 14日を待たずに確定させることもできます(同法359条)。ただし、放棄または取下げをした人は、その事件について改めて上訴することができません(同法361条)。早く確定させれば早く刑期が始まるという面はありますが、後戻りのできない判断でもありますので、弁護人とよく相談したうえで決める場面です。

確定した日が刑期の起算日になる

 刑期は、裁判が確定した日から起算します(刑法23条1項)。判決が言い渡された日ではありません。そして同条2項は、拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても刑期に算入しないと定めています。つまり在宅のまま確定した場合、確定した日から収容されるまでの間は、時間が過ぎても刑期は進みません

 なお、判決までに勾留されていた期間については、裁判所が判決で未決勾留日数の全部または一部を刑に算入することができます(刑法21条)。算入の対象は実際に拘禁されていた日数ですので、保釈されていた期間は含まれません。

判決の日に何が起きるかは、身柄の状態で分かれる

 実刑判決が言い渡された日に何が起きるかは、その時点の身柄の状態によって3つに分かれます。

判決の日の身柄の状態判決の日に起きること刑事施設に入る時期
勾留されているそのまま刑事施設にとどまる判決の前から収容が続いている
保釈中・勾留の執行停止中保釈等の効力が失われ、その場で収容される判決の言渡しの日
在宅(身柄の拘束なし)その日は帰宅する確定後、検察庁の呼出しを受けて出頭した日


保釈中に実刑判決が言い渡された場合

 拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があったときは、保釈や勾留の執行停止はその効力を失います(刑事訴訟法343条1項)。保釈が失効すると元の勾留の効力が働くため、判決がまだ確定していない段階であっても、その日のうちに収容されるのが原則です。持ち物や連絡は、法廷に入る前に整理しておく必要があるということになります。なお、納めていた保釈保証金は、没取されなければ、収容された時点で還付の対象になります。

控訴審の判決の日にも出頭を命じられるようになった

 控訴審では、被告人は公判期日に出頭することを要しないのが原則です(同法390条)。この原則を前提に、「控訴審の判決の日には法廷にいないことも多いため、その場では収容されない」と説明している記事が今でも見られます。

 しかし2023年11月15日に施行された改正により、控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されていて保釈等をされている被告人については、判決を宣告する公判期日への出頭を命じなければならないこととされました(同法390条の2)。重い疾病その他やむを得ない事由により出頭が困難と認められる場合は例外です。さらに、その被告人が出頭しないときは、一定の判決を除いて判決を宣告することができないとされました(同法402条の2)。控訴審について書かれた解説は、この改正の前のものかどうかを確かめてください。

在宅のまま確定した場合|検察庁からの呼出し

 判決の日に身柄が拘束されていない場合、その日は帰宅することになります。裁判が確定すると、検察官の指揮によって刑が執行されます(同法472条)。検察庁の説明でも、確定した時点で勾留されていない場合は刑の執行のための呼出しがあり、出頭した後に刑務所に入って刑が始まる、とされています。

  1. 判決が確定する。
  2. 検察官が、執行のため出頭すべき日時と場所を指定して呼び出す(刑事訴訟法484条前段)。
  3. 指定された日時・場所に出頭する。
  4. 呼出しに応じないときは、収容状が発せられる(同条後段)。


 呼出しがいつ来るかについて期限を定めた規定はなく、時期には事件ごとに幅があります。この間に転居や連絡先の変更をする場合は、弁護人を通じて把握できる状態にしておくことをおすすめします。

呼出しに応じないと、それ自体が罪になる

 2023年11月15日施行の改正で、刑の執行のための呼出しを受けた人が、正当な理由がなく指定された日時・場所に出頭しないときは、2年以下の拘禁刑に処せられるという規定が新設されました(同法484条の2)。改正前は、出頭しないこと自体が犯罪になるわけではありませんでしたが、現在は別の罪に問われる可能性のある行為です。また、言渡しを受けた人が逃亡したとき、または逃亡するおそれがあるときは、検察官は直ちに収容状を発することができ(同法485条)、収容状は勾引状と同一の効力を持ちます(同法488条)。

 病気や入院、家族の事情などで指定された日に出頭することが難しい場合は、放置せず、事前に検察庁の担当部署に連絡して事情を伝えることが出発点になります。

待っている間は刑期が進まない

 先に触れたとおり、拘禁されていない日数は確定した後であっても刑期に算入されません(刑法23条2項)。呼出しを待つ期間が長くなっても、その分だけ服役する期間が短くなるわけではありません。「連絡が来ないまま時間が経てば刑が軽くなる」という理解は、条文とかみ合わないということになります。

判決の日から出国が制限される(2025年5月15日から)

 この場面で見落とされやすいのが、2025年5月15日に施行された出国制限の制度です。拘禁刑以上の刑に処する判決(刑の全部の執行猶予の言渡しをするものを除く)の宣告を受けた人は、裁判所の許可を受けなければ日本から出国してはならないとされています(刑事訴訟法342条の2)。この制限は判決の宣告を受けた時点から働き、刑が確定した後についても準用されます(同法483条の2)。検察庁も、拘禁刑以上の刑が言い渡された後は裁判確定の前後を問わず裁判所の許可を受けずに出国することは禁止されている、と説明しています。

  • 出国の許可は、判決の宣告を受けた本人のほか、弁護人や親族などが裁判所に請求できる(同法342条の3)。
  • 裁判所は、出国することを許すべき特別の事情があると認めるときに、期間を指定して許可する。判断の前に検察官の意見を聴く(同法342条の4)。
  • 許可をする場合、裁判所は帰国等保証金の額を定め、渡航先の制限などの条件を付けることもできる(同法342条の5)。
  • 指定された期間内に帰国しなかったときや、許可を受けずに出国したときは、保証金の没取や勾留・保釈の取消しの対象になる(同法342条の7、342条の8)。


 海外出張の予定がある方や家族が国外にいる方は、判決の前の段階から弁護人に伝えておくほうが動きやすくなります。制度が新しいため、この点に触れていない解説も少なくありません。

収容された後、服役する刑務所が決まるまで

 収容されたからといって、その日から刑務所での服役が始まるわけではありません。勾留中や保釈中だった方はいったん拘置所などの施設にとどまり、在宅だった方も出頭した後はまず拘置所などに入ります。そこで行われるのが「刑執行開始時調査」です。法務省の「受刑者の処遇調査等に関する訓令」によれば、この調査は刑の確定による収容開始後、処遇の方針(処遇要領)を作るために行われるもので、その結果を踏まえて服役する施設が決まります。

調査を行う施設行われること期間の目安
確定施設(多くは拘置所)9つの項目についての基礎的な調査おおむね10日間
処遇施設(移送先の刑事施設)同じ項目についてのより詳しい調査おおむね20日間
調査センター(対象となる方のみ)専門的な知識と技術による詳細な調査おおむね40日から55日間


 訓令は、刑執行開始時調査は刑の執行を開始した日からおおむね2か月以内に終了するよう努めるものとしています。調査センターは全国の矯正管区ごとに指定された施設で、比較的若い方や、性犯罪に関する調査が必要と判断された方などが対象とされています。

調査で確認される項目

 訓令が挙げる調査項目は次の9つです。

  • 精神状況。
  • 身体状況。
  • 生育歴、教育歴および職業歴。
  • 暴力団その他の反社会的集団への加入歴。
  • 非行歴および犯罪歴ならびに犯罪性の特徴。
  • 家族その他の生活環境。
  • 職業、教育等の適性および志向。
  • 将来の生活設計および社会復帰に当たって支援を必要とする事情。
  • その他受刑者の処遇上参考となる事項。


 8番目の項目は2023年12月1日から加わったものです。帰る場所、頼れる人、健康や生活上の事情といった情報が、処遇の内容を決めるための材料として位置づけられていることになります。収容の前に家族と話し合って整理しておいた内容は、この場面で意味を持ちます。

収容先の刑務所は家族に通知されない

 どの刑務所に移送されたかは、外にいる家族や刑事裁判を担当した弁護人に通知される仕組みにはなっていない、と説明されています。家族が知る手がかりは、多くの場合、本人から届く手紙です。収容の前に、手紙の宛先にする住所を決めておくことが実務的な備えになります。また、受刑者と面会できる人の範囲は法律で定められており、親族のほか、重大な利害に関わる用務の処理のために面会が必要な人などに限られます。友人や知人が当然に面会できるわけではない点も、あらかじめ共有しておくとよいでしょう。

収容までにしておきたい準備

 ここからは生活面の準備です。判決の日にそのまま収容される場合と、確定後の呼出しを待つ場合とでは使える時間がまったく違いますが、確認しておく項目自体は共通しています。

仕事

 退職するのか休職として扱えるのかは、就業規則と勤務先の判断によります。自分から退職届を出す前に、就業規則の懲戒や休職の条項を確認しておくことをおすすめします。退職する場合は、離職票などの送付先、社会保険の手続、貸与品の返却を先に決めておくと、家族が代わりに対応しやすくなります。

お金と契約

 毎月引き落とされるものを一覧にし、続けるもの、解約するもの、家族に引き継ぐものを分けます。自動引き落としは残高が尽きた時点で滞納になりますので、収容される期間の見込みと残高を突き合わせておく必要があります。携帯電話やサブスクリプションのように使わないまま料金が発生し続ける契約は、解約や一時停止の可否を確認しておきます。

住まいと持ち物

 賃貸住宅を維持するか解約するかは、刑期の見込みと家賃の負担で判断が分かれます。解約する場合は、荷物の保管場所、退去の立会い、鍵の返却を誰が行うかを決めておきます。自動車の駐車場代や保険料が続くこと、ペットの預け先も見落としやすい点です。

家族に関する手続

 健康保険や年金の扱い、住民票、子どもの学校への説明などは、家庭ごとに事情が異なります。国民年金には保険料の免除や納付猶予の制度がありますので、収入がなくなる見込みであれば市区町村の窓口で相談しておくと後の負担が変わります。家族が本人名義の手続を進める場面に備え、委任状や必要書類を先に用意しておく方法もあります。

書類と連絡手段

 判決書の謄本は後の手続で使う場面があります。裁判が終わった後でも当事者は裁判所に交付を申請できますが、収容されてからでは動きにくくなるため、可能であれば早い段階で確保しておくほうが安全です。弁護人との連絡方法や家族の問い合わせ先も、紙に書いて共有しておくと慌てずに済みます。

期限が決まっている手続

 この時期には、期限が決まっている手続がいくつかあります。

手続期限
控訴の申立て判決の言渡しの日の翌日から14日以内
訴訟費用の執行免除の申立て裁判が確定した後20日以内
罰金の納付検察庁から通知される期限まで


 訴訟費用の負担を命じられた場合、貧困のために完納することができないときは、裁判が確定した後20日以内に、裁判所に対して訴訟費用の執行免除を申し立てることができます(刑事訴訟法500条)。判決の主文で訴訟費用の負担を命じられていないかを、判決の日に確認しておいてください。

 罰金が併せて科されている場合は、通知された期限までに納付します。納付しないときは財産に対する強制執行が行われ、執行すべき財産がないときは労役場に留置されます。1日あたりの換算額は判決で定められますが、5,000円とされる例が多く、罰金20万円であれば40日となります。留置の期間は長くても2年です。

収容が止まる・延びる場面はあるのか

 実刑が確定した場合でも、刑の執行が停止される場合が定められています。まず、拘禁刑または拘留の言渡しを受けた人が心神喪失の状態にあるときは、その状態が回復するまで執行が停止されます(刑事訴訟法480条)。こちらは停止する扱いです。

 次に、同法482条は、検察官の指揮によって執行を停止することが「できる」場合として、刑の執行によって著しく健康を害するときや生命を保つことができないおそれがあるとき、70歳以上であるとき、出産の前後にあたるとき、高齢や重病の親または幼い子や孫を他に保護する親族がいないときなど、8つの事由を挙げています。

 ただし、この規定には申立権を定めた条文がありません。本人や家族が申し立てれば審理が始まるという形の手続ではなく、資料を添えて検察官に職権の発動を求めるという進め方になります。重い病気が判明した、介護を担っていた親族が倒れたといった事情が生じた場合は、早い段階で弁護士に相談し、診断書などの資料を整えて検察庁に伝える方法を検討することになります。

仮釈放を見据えて、収容前にできること

 仮釈放は、改悛の状があるときに、有期の拘禁刑については刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後に、行政官庁の処分によって仮に釈放する制度です(刑法28条)。刑事施設の長の申出を受けて、地方更生保護委員会が審理します。

 審理では、刑事施設での生活の状況のほか、保護観察所が調べた帰住先と引受人の状況が材料になります。どこに帰り、誰が受け入れるのかが定まっていないと、この点についての判断が難しくなります。受刑者の側に仮釈放を求める権利があるわけではありませんが、帰る場所と引き受ける人について収容の前に話し合っておくことは、後の審理に向けた実質的な準備になります。刑執行開始時調査の項目に「社会復帰に当たって支援を必要とする事情」が含まれているのも、同じ方向を向いています。

避けたい対応

 最後に、この時期に避けたい対応を挙げます。

  • 検察庁からの呼出しを無視する、または連絡先を変えたまま放置する。
  • 出国制限の対象であることを知らないまま、海外渡航の予定を進める。
  • 「収容されるまでに時間が経てば刑期が短くなる」と考えて動かないでいる。
  • 家族に事情を伝えないまま収容され、契約や支払いが止まらない状態が続く。
  • 財産を家族名義に移すなど、後から説明が難しくなる資産の動かし方をする。


おわりに

 この記事の要点を整理します。

  • 刑の執行は判決が確定した後に始まり、確定は言渡しの日の翌日から14日の経過などによって生じる。
  • 判決の日に何が起きるかは、勾留中・保釈中・在宅の別によって分かれる。
  • 保釈中に実刑判決が言い渡されると、その日のうちに収容されるのが原則である。
  • 在宅で確定した場合は検察庁から呼出しがあり、正当な理由がなく応じなければ別の罪に問われる。
  • 2025年5月15日から、実刑判決の宣告を受けた人は裁判所の許可を受けずに出国できない。
  • 収容された後は拘置所などで刑執行開始時調査が行われ、その結果で服役先が決まる。
  • 訴訟費用の執行免除の申立てには、確定後20日という期限がある。


 実刑判決が見込まれる段階では判決の内容そのものに目が向きがちですが、判決の後に動き出す手続と期限は、その時点から数えて短いものが少なくありません。何をどの順番で準備すればよいかは、刑の長さ、判決の日の身柄の状態、家族の事情によって変わります。判決の前後で迷うことがあれば、弁護士に事情を伝えたうえで、残された時間の使い方を一緒に整理することをご検討ください。

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専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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