労働基準監督署から調査通知が届いたとき、会社はどう対応すべきか【人事トラブル相談室19】
会社のパソコンでゲームをする社員に、会社はどう対応すべきか
勤務時間中の私的利用とPCチェックの注意点
今日もありがとうございます。
人事トラブルを整理する「人の専門家」
ハーレー好きの社会保険労務士、キャプテン ヒデです。
「先生、勤務時間中に会社のパソコンでゲームをしている社員がいるようです」
「ネットの閲覧履歴を確認してもよいのでしょうか」
「注意してもやめない場合、懲戒処分にできますか」
このような相談を受けることがあります。
会社としては、当然、腹立たしい問題です。
仕事をしているはずの時間にゲームをしていた。
他の社員は真面目に働いている。
注意しても、本人に悪びれた様子がない。
そうなると、社長や管理職としては、
「これは処分すべきではないか」
と考えたくなります。
ただし、ここで感情的に処分を決めてしまうと、後から会社側の対応が問題にされることがあります。
最初に押さえておきたい結論は、次のとおりです。
勤務時間中に会社のパソコンでゲームをすることは、原則として問題のある行為です。
職務専念義務や服務規律に反する可能性があります。
しかし、すぐに懲戒処分にするのではなく、
まずは事実確認、注意指導、記録化、再発防止の手順を踏むことが大切です。
また、社員のパソコンやメール、閲覧履歴を確認する場合も、会社だから何でも自由に見てよい、というわけではありません。
事前のルール、確認の目的、確認する範囲、本人への説明が問題になります。
勤務時間中のゲームはなぜ問題になるのか
社員は、勤務時間中、会社の指示に従って誠実に仕事をする義務があります。
会社のパソコンでゲームをしている時間は、当然ながら業務を行っていません。
その時間については、労務を提供していないと評価される可能性があります。
また、単に「仕事をしていない」という問題だけではありません。
たとえば、次のような問題につながります。
・他の社員の不満につながる
・職場の規律が緩む
・注意しても改善しない社員が出てくる
・ウイルス感染や情報漏えいのリスクがある
・会社のネットワークや機器を私的に使うことが常態化する
特に最近は、会社貸与PCを使っている社員がテレワークをすることもあります。
会社の目が届きにくい環境では、
「どこまでが許される私的利用なのか」
「会社はどこまで確認できるのか」
を事前に決めておかないと、後からトラブルになります。
休憩時間ならゲームをしてもよいのか
ここも誤解されやすいところです。
休憩時間は、原則として社員が自由に利用できる時間です。
そのため、休憩時間に自分のスマートフォンでゲームをすることまで、会社が一律に禁止するのは慎重に考える必要があります。
ただし、会社のパソコン、会社のWi-Fi、会社のネットワークを使う場合は別です。
休憩時間であっても、会社の設備や備品を私的に使ってよいかどうかは、会社が一定のルールを定めることができます。
たとえば、
「会社貸与PCを私的なゲーム、動画視聴、私用メール、個人的なSNS投稿に使用してはならない」
「会社のネットワークを業務外の目的で使用してはならない」
「情報セキュリティ上、不適切なサイトへのアクセスは禁止する」
といったルールを就業規則や情報機器利用規程に定めておくことが考えられます。
ここで大切なのは、後から都合よく禁止するのではなく、事前にルールとして周知しておくことです。
会社は社員のパソコンを確認してもよいのか
会社貸与のパソコンであれば、会社の所有物です。
そのため、業務上必要な範囲で、利用状況やログを確認すること自体は考えられます。
ただし、ここで注意が必要です。
会社のパソコンだからといって、社員のメールや履歴を無制限に確認してよいわけではありません。
特に、次のような対応はトラブルになりやすいです。
・事前に何のルールもないのに、突然メールを全部確認する
・関係のない私的な内容まで読み込む
・一部の社員だけを狙い撃ちして監視する
・確認した内容を社内で不用意に共有する
・本人に説明せず、処分の材料だけに使う
会社として確認する場合には、少なくとも次の点を整理しておく必要があります。
・何の目的で確認するのか
・どの範囲を確認するのか
・誰が確認するのか
・確認結果を誰まで共有するのか
・就業規則や情報機器利用規程に根拠があるか
・社員に事前に周知されているか
たとえば、
「情報漏えい防止のため」
「業務用PCの適正利用を確認するため」
「ウイルス感染防止のため」
という目的で、必要な範囲に限定して確認することが基本です。
興味本位で中身を見るような運用は避けるべきです。
懲戒処分にする前に確認すべきこと
勤務時間中にゲームをしていたことがわかった場合でも、いきなり懲戒処分を決めるのは危険です。
まず、次の点を確認します。
・いつ、どの時間帯にゲームをしていたのか
・勤務時間中なのか、休憩時間中なのか
・どの程度の時間、頻度だったのか
・会社のPCやネットワークを使っていたのか
・業務への影響があったのか
・過去に注意したことがあるのか
・同じような私的利用を他の社員にも黙認していないか
・就業規則に禁止規定や懲戒規定があるか
・本人に弁明の機会を与えたか
特に重要なのは、過去の運用です。
たとえば、他の社員の私用メールやネット閲覧は黙認していたのに、特定の社員だけを急に処分すると、不公平だと受け取られる可能性があります。
もちろん、勤務時間中に長時間ゲームをしていた、何度注意しても改善しない、業務に支障が出ている、ウイルス感染や情報漏えいのリスクを生じさせた、という事情があれば、懲戒処分を検討する余地はあります。
しかし、その場合でも、処分の重さは慎重に判断する必要があります。
一度の軽微な私的利用で、いきなり重い処分をするのは避けた方がよいでしょう。
実務では、まず注意指導と記録化から始める
会社が最初に行うべきことは、事実確認です。
本人を呼び出して、感情的に責めるのではなく、事実を確認します。
「勤務時間中に、業務とは関係のないゲーム画面が表示されていたとの報告があります」
「会社貸与PCの利用状況について確認したいことがあります」
「いつ、どのような目的で使用していたのか説明してください」
このように、まず本人の説明を聞きます。
そのうえで、事実が確認できた場合には、口頭注意または文書注意を行います。
文書にする場合は、次のような内容を残しておくとよいです。
・確認された事実
・会社として問題と考える理由
・今後禁止する行為
・再発した場合には懲戒処分の対象になり得ること
・本人に説明した日付
・本人の反応
ここで大切なのは、処分を急がないことです。
一度注意した。
それでも繰り返した。
再度、文書で警告した。
それでも改善しなかった。
この流れがあって初めて、会社としても処分を検討しやすくなります。
やってはいけない対応
このテーマで、会社がやってはいけない対応もあります。
まず、本人に確認せず、いきなり処分を決めることです。
「ログがあるから処分」
「画面を見た社員がいるから処分」
という進め方は危険です。
本人の説明を聞かずに処分すると、後から手続きの不十分さを指摘される可能性があります。
次に、社内で見せしめにすることです。
「〇〇さんがゲームをしていた」
「みんなも気をつけるように」
と名前を出して周知するような対応は、別のトラブルを生むことがあります。
注意すべき行為を社内に周知することは必要ですが、個人を必要以上にさらす必要はありません。
また、PCの中身を必要以上に確認することも避けるべきです。
調査目的と関係のないメール、画像、個人的な情報まで確認してしまうと、社員側からプライバシー侵害だと主張される可能性があります。
就業規則・情報機器利用規程で決めておきたいこと
この問題は、起きてから対応するよりも、事前にルールを整えておくことが大切です。
会社としては、次のような内容を確認しておきましょう。
・勤務時間中の職務専念義務
・会社施設、備品、PC、ネットワークの私的利用禁止
・会社貸与PCの利用範囲
・私用メール、ゲーム、動画視聴、SNS利用の扱い
・情報セキュリティ上禁止する行為
・会社が利用状況やログを確認することがある旨
・確認する目的、範囲、担当者
・違反した場合の注意、警告、懲戒処分
・テレワーク時のPC利用ルール
特にテレワークがある会社では、会社貸与PCの使い方をあいまいにしない方がよいです。
「自宅だから少しくらいよいだろう」
「休憩時間だから会社PCで動画を見てもよいだろう」
「家族が少し使うくらい問題ないだろう」
このような感覚のズレが、情報漏えいや労務トラブルにつながることがあります。
よくある誤解
このテーマでよくある誤解があります。
それは、
「会社のパソコンだから、会社は何を見てもよい」
という考え方です。
会社貸与PCであっても、社員の利用状況を確認する場合には、目的と範囲が必要です。
確認する側の管理職にも、ルールを理解させておく必要があります。
もう一つの誤解は、
「就業規則に書いてあるから、すぐ懲戒処分にできる」
という考え方です。
就業規則に禁止規定があっても、処分の重さが相当かどうかは別問題です。
一度の軽微な私的利用なのか。
何度も繰り返しているのか。
業務に大きな支障があったのか。
会社が過去に注意していたのか。
こうした事情を踏まえて判断する必要があります。
会社がすぐに確認すべきこと
このような相談があった場合、会社は次の資料を確認してください。
・就業規則の服務規律
・懲戒規定
・情報機器利用規程
・テレワーク規程
・会社貸与PCの誓約書
・過去の注意指導記録
・PC利用ルールの周知資料
・ログ確認やモニタリングの運用ルール
・他の社員への運用実態
規程に書いてあることと、実際の運用が違っている場合は注意が必要です。
規程では禁止しているが、実際には長年黙認していた。
管理職も私的利用をしている。
特定の社員だけ厳しくしている。
このような状態では、処分をしたときに会社の説明が苦しくなります。
まとめ
会社のパソコンでゲームをする社員への対応は、単純に
「ダメだから処分」
で済む問題ではありません。
勤務時間中のゲームは、職務専念義務や服務規律に反する可能性があります。
会社として注意指導し、改善を求めることは当然考えられます。
ただし、懲戒処分を検討する場合には、事実確認、本人への説明、注意指導の記録、過去の運用との整合性が必要です。
また、PCやメール、ログを確認する場合には、会社の管理権だけでなく、社員のプライバシーや個人情報保護にも配慮する必要があります。
このテーマで本当に大切なのは、問題が起きた後に慌てて調査することではありません。
会社貸与PCをどう使うのか。
私的利用をどこまで認めるのか。
会社はどのような場合にログを確認するのか。
違反した場合にどのような手順で注意・処分するのか。
こうしたルールを、就業規則や情報機器利用規程として整理し、社員に説明しておくことです。
「昔から何となく禁止している」
「常識でわかるはず」
という運用では、いざ問題が起きたときに会社が説明できません。
会社のPC利用ルール、テレワーク時の情報管理、就業規則の服務規律が今の働き方に合っているか。
一度、現場の運用と照らし合わせて確認しておくと安心です。


