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谷津吉美

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テーマ:ちょっと気になること


墨はススと阿膠と龍脳から

ナギの実は、昔、神社の燈明に使われ ていて、春日神社(春日大社の旧称)ではその油煙か ら春日墨を作っていたそうです。春日大社と神仏習合 の関係にある興福寺では、日本で最初に墨が作られま した。灯明で天井にたまったススをすす払いで集め、 それに阿膠(あきょう)とその匂い消しのために龍脳 を加えて作ります。阿膠は、お血をとる温経湯という 漢方薬などに入っている生薬です。むつごろう薬局に 飾ってある山東阿膠が、まるで習字で使う墨のようだ と思っていたので、阿膠が墨に使われているというの は納得です。 龍脳はベトナムの方に人気が高い「牛黄清心元」に入っています。龍脳の成分のボルネオールは、ラベン ダー、ローズマリーに含まれていて、仁丹や、塗り薬 の「赤まむし軟膏」に使われています。ボルネオール の由来はボルネオで龍脳が多く産出することからです。 香砂六君子湯や安中散の構成生薬の「縮砂(しゅく しゃ)」にも入っていることが分かりました。縮砂の香 りは漢方薬を調合していて、うっとりするほどです。 最初、苦手な香りと思っていた赤まむし軟膏が、調べ るにつれいい香りに思えるようになってきました。よ く知ることで感じ方が変わることもありますよね。

今に集中してみる

薬師寺の写経では、墨を自分で擦ってから、写経を するようです。墨に使われている龍脳の香りで、心が 落ち着きそうな感じがしますよね。写経は書くマイン ドフルネスでもあります。マインドフルネスで健康診 断の数値がよくなったとおっしゃっているお客さまも いらっしゃいます。マインドフルネスとは今に集中す る心のあり方で、今に集中することで、過去の後悔と 将来の不安から解放されます。しかし、写経は少しハー ドルが高いかもしれません。そこで簡単に取り入れる ことができる、食事の時には食事にだけ集中する食事 瞑想というものはいかがでしょうか。スマホなどは見ず、 食べ物をよく見て、一口ごとに箸を置き、しっかり咀 嚼して、咀嚼音、歯ざわり、舌ざわり、臭い、味に集 中します。食べるスピードも遅くなり、血糖値の上昇 もゆるやかになります。お砂糖が入った甘いものは水 分をためこみ体を冷やしてしまうので、控えるように お伝えしていますが、いただきものなど難しい時もあ ると思います。そんな時には罪悪感は持たずに、五感 でしっかり味わうことに集中してみてください。「今こ の瞬間」を大切にすることで、心が軽くなっていきま すように。

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谷津吉美
専門家

谷津吉美(薬剤師)

有限会社むつごろう薬局

漢方医学を専門に23年。不妊症をはじめ各種女性の悩み・アレルギー・皮膚病・自律神経失調症などの症状に、深い知識で丁寧に対応。また静岡県立高校の進路指導講演会や不妊専門雑誌などで漢方薬を広めています。

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