人時生産性をアップして、「稼ぐ力」を付ける‼【商人舎magazine6月号】原稿
サミットリテイリングセンター 代表 新谷千里
スーパーの利益改善では、製造数の適正化によって値引き・廃棄と作業人時を減らし、確保した時間を売場づくりや商品開発に使うことが有効です。
売上高に加えて、粗利益高と、その利益を得るために使った時間を確認する必要があります。
今回は、A店・B店・C店の1週間の実績を想定したシミュレーションから、製造計画の見直しと利益の関係を考えます。
B店はA店より売上高が20%少なくても、粗利益高は同じです。
人件費の差によって、年間の利益には12万4,800円の差が生まれます。
[大見出し]売上高が少ないB店とC店に利益が残る理由[/大見出し]
以下は実在店舗の実績ではなく、利益構造を説明する比較例です。
金額は円と仮定し、店舗内の対象商品群を1週間集計したものとしてご覧ください。
※元表に合わせ、値入率からロス率を差し引いて粗利益率を求める簡易モデルです。
ここでのロス率は、売上高に対する値引き・廃棄等の粗利益率への影響幅を表します。
実務では各比率の分母をそろえて検証してください。
A店とB店の粗利益高は、ともに2万円です。
しかしB店は人件費が2,400円少なく、利益が黒字になります。
C店は、さらに粗利益高を確保し、人件費も抑えた設定です。
製造量や作業人時の実測値は、この表には含まれていません。
A店とB店の週2,400円の利益差は年間12万4,800円になる
A店の週の利益はマイナス2,000円、B店はプラス400円です。
1週間だけを見ると小さな差に感じるかもしれません。
同じ収益構造が52週続くと仮定すると、次の差になります。
年間利益の差=[400-(▲2,000)]×52週=124,800円
B店はA店より年間売上高が104万円少なくても、年間利益は12万4,800円多くなる計算です。
さらに、C店の場合は、A店に対して30%少ない売上高ですが、A店との年間の利益の差は、
年間利益の差=[2,600-(▲2,000)]×52週=239,000円
と、大幅に拡大することになります。
B店は、12万4,800円、C店は23万9,000円、利益が多くなります。
季節変動、賞与などの変動は含めない単純年換算です。
売れ残る製造を減らして作業人時を確保する
この比較から実務で考えたいのは、売れ残りや値引きを前提にした製造をどれだけ減らせるかということです。
惣菜や寿司では、余分に作った商品にも、仕込み、加工、盛り付け、包装、品出しの時間がかかります。売れ残れば、値引きや廃棄処理の作業も発生します。
人時とは「人数×作業時間」です。
2人が1時間ずつ作業すれば2人時になります。
製造数量を減らしても、準備や洗浄が同じなら人時は比例して減りません。
製造回数、段取り、作業のまとめ方まで確認します。
たとえば、2人がそれぞれ1日30分短縮でき、それが週6日続けば、週6人時を確保できます。
年間52週なら312人時です。
これは表とは別に設定した例ですが、改善活動に使える時間の大きさを具体的に捉えられます。
目指すのは、お客様が買いたい時間の品揃えを保ちながら、過剰な作り置きを減らすことです。
売上を20%、30%と落とせばよいという意味ではありません。
時間帯別販売数に合わせて、初回製造と追加製造を組み直します。
確保した時間を付加価値の高い仕事に使う
製造の見直しで生まれた時間は、使い道を先に決めることが大切です。
私は、次のような仕事に振り向けることを提案します。
①商品の価値を伝える売場と接客
素材、味付け、手作りの工夫を、POPや接客で伝えます。
「国産鶏を使用」「店内でだしを取った煮物」など、実際の商品に即した情報を示し、価格に納得して選んでいただく売場をつくります。
②粗利益を確保できる商品の開発と育成
少量でも満足感のある寿司、野菜を組み合わせた惣菜、夕食を整えやすいセットなど、対象のお客様と利用場面を決めて試作します。
売価と原材料費に加え、製造時間、値引き、廃棄を確認し、最終的に残る粗利益を評価します。
③買いやすさを高める品揃えと関連販売
夕方の主菜に合う副菜を近くで提案するなど、お客様が献立を決めやすい売場に整えます。
売れ筋は必要な時間に補充し、過剰在庫と欠品を同時に減らします。商品の前出しだけで終わらせず、買う理由が伝わるかまで確認します。
④データ確認と従業員教育
販売数、最終販売時刻、値引き・廃棄数を確認し、翌日の製造に反映します。
同時に、盛り付けや包装の標準作業を教え、誰が担当しても品質と作業時間が安定するようにします。作業を教える時間も、将来の利益をつくる投資です。
人件費の削減と時間の再配分は分けて評価する
B店の週400円という利益は、人件費の支払額が12,000円から9,600円へ減る前提です。
残業や応援勤務などの支払いが実際に減れば、経費削減になります。
一方、短縮した時間をすべて別の仕事に使い、人件費が12,000円のままなら、粗利益高が同じ2万円の段階では利益はマイナス2,000円です。
その後、売場改善や商品開発によって増えた粗利益から、追加の経費を差し引いた金額が改善効果になります。
短縮した同じ時間について、人件費削減と再配分の効果を重ねて計上しないことが、正しい改善評価の条件です。
経費を減らす時間と、価値を生む仕事に使う時間を分けて管理しましょう。
製造数の適正化を進める5つの確認
まず1つの商品群で試し、結果を見て修正します。
実行から始めるD-CAP(Do→Check→Action→Plan)の考え方で、次の週の計画精度を高めます。
①商品別・曜日別・時間帯別に、製造数、販売数、値引き数、廃棄数を確認する。
売上だけでは作り過ぎの原因を捉えられません。
②売れ残りが繰り返される商品から初回製造を見直す。
追加製造に必要な時間も確かめ、ピーク前に補充できる数量を決めます。
③製造前後の作業時間を測る。
数量だけでなく、品目数、段取り、移動、包装作業も見直し、実際に減った人時を記録します。
④確保した時間の担当者と使い道を決める。
POP改善、商品試作、従業員教育など、実行日まで具体化します。
⑤1週間ごとに粗利益高、実際の人件費、利益、欠品時間を確認する。
人時粗利益高(粗利益高÷総労働人時)も併せて見ます。
人時粗利益高が上がっても、粗利益高そのものが大きく減っていれば、利益改善につながらない場合があります。
率と総額、作業時間を合わせて判断してください。
製造数と利益改善についてのよくある質問
Q.製造数を減らすと売上が下がりませんか
一律に減らせば欠品を招くおそれがあります。値引き・廃棄の多い商品と時間帯を絞り、売れ筋のピーク時の品揃えを守りながら調整します。比較表は、売上を落とすこと自体を勧めるものではありません。
Q.作業時間が短くなれば利益は増えますか
時間が短くなるだけでは利益は増えません。実際の人件費が減るか、再配分した仕事で追加の粗利益を生み出すことが必要です。
Q.自店の年間効果はどう計算しますか
改善前後の週の利益差に52週を掛けると概算できます。A店とB店では週2,400円、年間12万4,800円です。自店では繁忙期・閑散期などの違いも反映して見積もります。
社長や店長が確認したいのは、売上の大きさに加えて、何をどれだけ作り、何時間かけ、いくらの利益を残したかです。
まず、値引きと廃棄の多い商品群を1つ選び、製造計画と時間の使い方を一緒に見直してください。
サミットリテイリングセンターは、
スーパーマーケットの業務改善、製造計画、売場づくり、人時生産性の向上を支援しています。


