売上と粗利益を簡単に上げるサイレントセールスマンを創る POPの力と基本原則を知る
サミットリテイリングセンター 新谷千里
スーパーの価格競争から抜け出すには、商品の品質と価格に加え、買物や食事の困り事を解決する顧客価値を具体化することが重要です。
今回のコラムは、スターバックスの考え方を手掛かりに、惣菜・鮮魚・青果の売場改善と、利益につなげる実践方法を解説します。
目次
スターバックスの一杯から考える顧客価値
お客様は、一杯のコーヒーに何を求めてお金を支払うのでしょうか。
味や香りに加え、くつろぐ時間、気分を切り替える場所、人との会話を求める方もいるでしょう。
スターバックス コーヒー ジャパンは、公式の会社案内で、家でも職場でもない「サードプレイス」の提案を紹介しています。
コーヒーという商品を通じて、過ごす時間や場所にも価値を生み出す考え方です。〔1〕
私は、この視点をスーパーの売場づくりにも生かせると考えています。
お客様が商品を買った後に、どのような助かること、うれしいことがあるのか。
そこまで考えると、商品の見せ方や売り方が変わります。
スーパーで選ばれる理由をお客様の暮らしから考える
スーパーにおける顧客価値とは、購入した商品や買物体験を通じて、お客様が得る便益です。
おいしさや鮮度だけでなく、献立に迷う時間が減ること、必要な量を無駄なく買えること、調理の不安が小さくなることなども含まれます。
例えば、惣菜を買う方は、
「帰宅後すぐに夕食を整えたい」、
魚を買う方は、
「家族に魚を食べさせたいけれど、下処理は負担」
と考えているかもしれません。
商品を部門や品種だけで捉えず、こうした利用場面から捉え直します。
大切なのは、店側の思い込みで決めないことです。
「この商品をどんな日に使いますか」
「量や調理で困ることはありませんか」
と短く尋ね、実際の買われ方と照らし合わせてください。
惣菜 鮮魚 青果で顧客価値を伝える売場の具体例

以下は、各店で検証するための実践例です。特定店舗の実績を示すものではありません。
惣菜は夕食を整える負担を減らす
主菜を単品で並べるだけでなく、副菜との組合せを提案します。
例えば、焼き魚の近くにひじき煮や和え物を展開し、食卓を想像できるようにします。
POPも「おすすめ」だけで終わらせず、
「焼き魚と小鉢で、今夜の献立が決まります」
と用途を伝えます。
商品に合った温め方や盛り付け例を示すことも、購入後の満足につながる提案です。
鮮魚は調理の不安を減らす
切身や下処理済み商品に、調理方法や味付けの目安を添えます。
「フライパンで調理できます」
「煮付け向き」
など、商品に即した具体的な案内を付けてください。
調理提案は、担当者が試作し、商品に合う方法を確かめてから案内します。
お客様が売場で選び、家庭でおいしく食べられるところまで支えることが、次の購入につながる信頼を育てます。
青果は使い切れる買い方を提案する
少人数世帯には、使い切りやすい量目と料理提案を組み合わせます。
大袋だけでなく少量パックも用意し、鍋物、汁物、炒め物などの使い道を売場で伝えます。
「安くたくさん買えた」に加えて、
「余らせずに食べ切れた」という満足を目指します。
ただし、小分けによる包材費や加工時間も増えるため、販売数量と作業負担の両方を確認する必要があります。
顧客価値を利益に結び付けるために確認する数字
価値を伝えるPOPを付けても、それだけで利益が増えるとは限りません。
販売数量が伸びても、値引きや廃棄、追加作業が増えれば、利益改善の効果は小さくなります。
重点商品を一つ決め、販売数量、売上高、粗利益額、値引き・廃棄、追加作業時間を確認しましょう。
部門合計も併せて見て、他商品の売上が移っただけなのか、部門全体の成果が増えたのかを確かめます。
比較する曜日や期間、価格、陳列場所をそろえ、天候や特売の影響も記録します。
POSで最終的に販売した価格を把握している場合、値引き額を重ねて差し引かないなど、集計の定義を統一してください。
粗利益額が改善し、追加の人件費や販促費も賄えているか。
ここまで確認すると、売場の工夫を営業利益につなげる判断ができます。
一つの売場で始める改善の進め方
私は、まず実践し、結果を確かめて改善するD-CAP(Do→Check→Action→Plan)を大切にしています。
最初から全店・全部門を変えようとせず、一つの売場で小さく試してください。
実践と検証の手順
1 Do 対象客と困り事を一つ決め、重点商品の量目、POP、関連陳列のいずれかを変える。
2 Check 実施前後の数字と、お客様の反応、担当者の作業時間を確認する。
3 Action 伝わりにくい表現や、負担の大きい作業を修正する。
4 Plan 検証結果から次の期間の販売数量、実施内容、担当者を決める。
成果が確認できた方法は、POPのひな形や陳列写真、作業手順に残します。
担当者が替わっても続けられる標準をつくることで、改善を積み重ねられます。
価格競争脱却と顧客価値についてのよくある質問
Q 顧客価値を高めるには、価格を上げる必要がありますか。
A 値上げは必須ではありません。
同じ価格でも、用途が分かる説明、買いやすい量目、欠品の少ない売場によって、選びやすさを改善できます。
価格変更を検討する場合は、お客様の反応と利益の両面で判断します。
Q 小規模スーパーでも取り組めますか。
A 取り組めます。
まず一商品で、買う目的と困り事を確認し、POP一枚や量目一種類から試します。
追加費用と作業時間を抑えて検証することが、継続の条件です。
Q 最初に何から始めればよいですか。
A 主力商品の中から、お客様に用途や良さが十分に伝わっていない一品を選んでください。
担当者と「誰の、どんな困り事を解決するか」を一文にし、売場で確かめます。
明日の売場で一商品を見直す
あなたのお店の主力商品は、お客様の暮らしをどのように助けているでしょうか。
その答えを、お客様に伝わる言葉と売場に変えてください。
私は、こうした小さな実践を数字で確かめ、現場で続けられる仕組みにすることが、価格競争に偏らない利益改善につながると考えています。
サミットリテイリングセンターでは、スーパーの売場改善、作業の標準化、KGI・KPIを活用した利益改善を支援しています。
自店で選ばれる理由を整理したい方は、MBPのプロフィール・お問い合わせ窓口からご相談ください。
著者情報
新谷千里 サミットリテイリングセンター。スーパーマーケットの業務改善コンサルタント。売場づくり、作業の標準化、ロス削減、KGI・KPI管理などを通じ、現場と数値の両面から利益改善を支援。
■プロフィールとお問い合わせ ⇒ https://mbp-japan.com/osaka/summit-rc/
■サミットリテイリングセンター 公式サイト ⇒ https://summit-rc.com/
【参考情報】
〔1〕スターバックス コーヒー ジャパン「会社案内」。サードプレイスの説明を参照。
確認日 2026年10月20日。
■スターバックス コーヒー ジャパン 会社案内 ⇒ https://www.starbucks.co.jp/company/


