なぜ特徴のないスーパーは衰退するのか | 同質化から抜け出し、選ばれる店になるためのポジショニング戦略
サミットリテイリングセンター 新谷千里
スーパーマーケットで商品の価値が伝わらなければ、お客様は価格を主な判断材料にします。
売上と粗利益の改善には、使い方や選ぶ理由を具体的に伝える売場づくりが必要です。POPと接客を見直し、値下げに頼り過ぎない販売方法を解説します。
目次
売れないときは商品価値の伝え方を確認する
「品質には自信があるのに、思うように売れない」「少し価格を上げると、販売数量が落ちてしまう」。
そんなとき、商品の見直しと併せて確認したいのが、お客様に届いている情報です。
売る側は、原材料や製法、味の特徴をよく知っています。
しかし、お客様が同じ知識を持っているとは限りません。
「おすすめ」「こだわり」「お買い得」だけでは、自分の食卓にどのような良さがあるのか判断しにくいのです。
今回は、商品を選ぶために必要な情報を届けるという視点から、スーパーの販売促進と利益改善を考えます。
顧客教育でお客様の選択を助ける
マーケティングでいう「顧客教育」とは、商品の特徴や使い方を伝え、お客様が必要性や価値を理解できるようにする取り組みです。
売場では「選び方のお手伝い」と考えると、実践しやすくなります。
例えば、見慣れない魚が並んでいても、調理方法が分からなければ購入をためらう方がいます。「フライパンで焼ける」
「下処理済み」
と分かれば、夕食の候補に入るかもしれません。
ここで必要なのは、一方的に知識を教えることではありません。
お客様が迷う理由を見つけ、判断に必要な情報を分かりやすく添えることです。
説明すれば必ず売れるわけではありませんが、商品の良さを検討していただく土台になります。
商品説明はお客様の困りごとから組み立てる
売場の説明を考えるときは、商品の特徴を書き始める前に、どのような買物の場面で役立つのかを確認します。
次の順番で整理すると、伝える内容が具体的になります。
1.お客様の困りごとを決める。夕食づくりに時間がない、魚料理の下処理が苦手など。
2.その困りごとに役立つ特徴を確認する。下処理済み、少量包装、温め方が分かるなど。
3.食卓で得られる良さを伝える。調理の手間、食べ切りやすさ、料理との相性など。
4.購入前の疑問に答える。量の目安、調理方法、保存方法など。
産地や製法も大切な情報です。
ただし、それを紹介するだけで終わらず、
「どんな料理に向くか」
「どのような味や食感なのか」
までつなげて伝えます。
記載する内容は、商品仕様や実際の確認に基づくものにします。
青果と鮮魚と惣菜で使える商品価値の伝え方
以下は売場改善を考えるための例です。実際に使用する際は、対象商品の特徴や調理条件を確認してください。
青果では食べ方まで伝える
「旬のなすです」に加えて、「焼きなすにして、しょうがじょうゆで。今夜の一品に」と提案します。
料理写真と簡単な手順があれば、買った後の使い方を想像しやすくなります。
関連する調味料を近くに置くことも検討できます。
鮮魚では調理の不安を減らす
下処理済みの商品なら、その事実を分かりやすく表示します。
さらに、調理方法や食べ頃の見分け方を添えます。
「簡単」と書くだけでなく、どの手間が省けるのかを示すことがポイントです。
惣菜では食べる場面と量の目安を示す
「おすすめの唐揚げ」に加えて、内容量に応じた人数の目安や、商品に合った温め方を伝えます。
昼食向けなのか、家族の夕食向けなのかが分かれば、お客様は自分の用途に合わせて選びやすくなります。
POPと従業員の説明をそろえる
POPは、忙しい売場でもお客様に情報を届けられる道具です。
ただし、長い説明を詰め込むと、肝心の内容が読み取りにくくなります。
まず「誰の、どの困りごとに役立つのか」を短い言葉で示し、必要な補足を添えます。
店長や部門チーフは、重点商品の「おすすめする理由」を従業員と共有してください。
商品の特徴、向いている食べ方、お客様から聞かれやすいことを短くまとめておくと、接客とPOPの内容をそろえやすくなります。
売場で質問が繰り返されるなら、その内容は情報不足を見つける手掛かりです。
「何人分ですか」
「どう調理しますか」
という声を、次のPOPや商品づくりに反映します。
販売数量と粗利益と作業時間で効果を確認する
商品価値の伝え方を変えたら、POSデータなどで結果を確認します。
まず一つの商品を選び、価格や陳列条件をできるだけそろえて、実施前後の販売数量、売上高、値引き、廃棄を記録してください。
曜日、天候、欠品、チラシ掲載の有無も確認します。
売上高が増えても、値引きや廃棄、作業時間が増えれば、利益改善につながらないことがあります。
店舗の会計上の定義に合わせて粗利益額を確認し、POP作成や接客にかかった時間も併せて評価します。
一度の比較だけで効果を断定せず、条件を確認しながら繰り返すことが大切です。
D-CAP(実行・確認・改善・計画)の順で、伝える言葉や売場を修正していきます。
商品価値の伝え方についてよくある質問
価格が高い商品でも説明すれば売れますか
説明だけで購入が決まるわけではありません。
品質、価格、量、立地、お客様の用途なども関係します。
そのうえで、価格に見合う価値と、自分に合う理由を判断できる情報を届けます。
最初に何から取り組めばよいですか
おすすめする理由が明確で、販売実績を確認できる商品を一つ選んでください。
お客様の疑問を一つ解消するPOPから始め、販売数量と粗利益額を確認します。
今週の重点商品で選ぶ理由を一つ伝える
店長やバイヤーの皆さんは、今週の重点商品を一つ決め、その売場をお客様の目線で見てください。
商品名と価格を見ただけで、食べ方や選ぶ理由まで分かるでしょうか。
足りない情報があれば、POPや従業員の説明に一つ加えてみてください。
そして、売れ方と利益を確かめます。
この積み重ねが、商品価値を伝える販売力を育てます。
サミットリテイリングセンターでは、スーパーマーケットの売場改善、
実践的マーケティング、店舗オペレーションの改善を支援しています。
商品価値の伝え方と日々の仕事を一緒に見直し、営業利益の改善につなげていきましょう。
【著者と関連情報】
新谷千里 有限会社サミットリテイリングセンター代表取締役
スーパーマーケット業務改善コンサルタント。
売場改善、実践的マーケティング、店舗オペレーション改善を専門とする。
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