『マージン・ミックス』、ほとんどの人が知らない戦略的・活用術【商人舎magazine7月号】原稿
毎日、誰よりも早く出勤し、品出しや製造を手伝い、閉店まで現場を支える。
それでも利益が増えず、社員も育たない。
スーパーの社長や店長がこの状態から抜け出すには、
自分の時間の使い方と、
現場の仕事の進め方を一緒に見直す必要があります。
生産性向上の要点は、
・必要な品質とサービスを保ちながらムダな作業を減らし、
・生まれた時間を粗利益の拡大と人材育成に振り向けることです。
社長や店長の頑張りを、店舗全体の成果につなげる『仕組み』をつくっていきましょう。
目次
忙しく働いても利益が増えない原因
品出しや接客、清掃、製造は、店を運営するうえで欠かせない仕事です。
ただし、その仕事に時間をかけた分だけ利益が増えるとは限りません。
例えば、
同じ商品を何度も運び直す、
道具を探す、
売れ残る商品を作り続ける、
担当者ごとに違う手順で作業する。
こうした状態が残っていれば、真面目に働く人ほど多くの手間を背負ってしまいます。
そこへ社長や店長が毎日応援に入ると、当日の作業は終わります。
しかし、作業量や手順が変わらなければ、翌日も同じ応援が必要になります。
応援した回数に加え、なぜ応援が必要だったのかを確認することが、改善の出発点です。
社長と店長が確保したい経営と管理の時間
社長には、利益を確保できる商品構成や取引条件、設備投資、人材配置を考える時間が必要です。
店長には、時間帯別の売場の状態を確かめ、部門間の応援を調整し、チーフを育てる時間が必要です。
例えば、夕方に惣菜が欠品するなら、店長が商品を運ぶだけでなく、製造時刻、製造数、担当者の勤務時間を確認します。
原因が午前中への製造の偏りにあるなら、午後の製造計画を変えることで、毎日の応援そのものを減らせる可能性があります。
現場に入る時間には、
・作業を支える時間と、
・原因を観察して仕組みを変える時間があります。
後者を予定表に組み込み、改善する対象を決めて現場を見ることが大切です。
仕事を減らす判断基準と標準化の進め方
まず、1週間程度、誰が何に何分使ったかを記録してください。
そのうえで、仕事ごとに
「何のために行うのか」
「回数や量を減らせるか」
「移動や手待ちを減らせるか」
を確かめます。
見直しの対象になるのは、使われていない報告書、重複する入力、必要以上の小分け運搬、保管場所が決まっていないために生じる探索などです。
食品の安全や品質、接客に必要な仕事は、その目的を満たす条件を守って改善します。
仕事を任せるときは、完成状態、手順、判断基準を具体的に伝えます。
補充であれば、対象商品、補充時刻、数量の目安、先入れ先出しの方法、欠品時の連絡先まで決めます。
写真付きの作業指示書があれば、口頭の説明だけに頼る状態を減らせます。
私は、仕事の見直しには3Sの視点が役立つと考えています。
標準化で仕事の再現性を高め、
単純化で不要な工程を減らし、
専門化で人の技能や強みを生かします。
手順を整えてから実施を任せ、結果を確認することで、社長や店長への確認の集中を減らしていきます。
生まれた時間を粗利益と顧客価値につなげる
作業を短くできたら、空いた時間で何をするかを決めます。
例えば、
・夕方の売れ筋の欠品確認、
・商品の食べ方を伝えるPOPづくり、
・関連商品の売場展開、
・新人への実技指導です。
惣菜部門であれば、売れ残りの多い商品の製造数を調整し、売れる時間帯に合わせて追加製造する方法が考えられます。
ただし、製造を減らして値引きが少なくなっても、欠品で販売機会を失えば改善とは言えません。値引きと欠品を一緒に確かめながら、商品ごとに調整します。
また、商品価値を伝える時間も確保したいところです。
魚の切身を並べる際に、調理方法や食べ切れる量を伝える。
惣菜に、夕食の組み合わせを提案する。
お客様の選びやすさにつながる仕事へ、現場の時間を振り向けます。
1日1時間の改善を年間の時間に換算する
ここでは、ある部門の作業を1日合計1人時短縮できたと仮定します。
1人時とは、1人が1時間働く作業量のことです。
2人がそれぞれ30分短縮した場合も、合計1人時になります。
年間360日、この改善が続けば、1人時 × 360日 = 年間360人時です。
1人時当たりの人件費を仮に1,500円とすると、年間54万円相当の作業時間になります。
この金額は説明用の仮定による計算であり、実際の改善実績ではありません。
ここで注意したいのは、同じ勤務時間の中で別の仕事に振り向ける場合、給与の支払額はそのままだという点です。
年間54万円が自動的に営業利益へ加算されるわけではありません。
残業などの実際の支出を減らせた場合は、その削減額を確認します。
時間を再配分した場合は、追加で得られた粗利益から、それに伴う費用を差し引いて効果を見ます。
同じ時間を、人件費削減と売場強化の両方に重複して計上しないことも必要です。
人時生産性と営業利益を一緒に確認する
改善を確かめる指標として、人時売上高と人時粗生産性(利益高)があります。
人時売上高は売上高を総労働時間で割った値、
人時粗生産性は粗利益高を総労働時間で割った値です。
期間と対象部門をそろえて比較してください。
人時売上高が上がっても、値引きや廃棄が増えて粗利益が減っていれば、利益改善にはつながりません。
人時生産性に加え、粗利益額、値引き・廃棄、欠品、残業時間を確認します。
店舗全体では営業利益まで追い、作業短縮の効果を判断します。
評価も、長く働いたことに偏らせないようにします。
・手順の改善、
・新人が一人でできる仕事の増加、
・売れ筋の欠品の減少
など、具体的な行動と結果を確認します。
改善を進めた人に仕事が集中し過ぎないよう、担当と作業量の調整も欠かせません。
明日から始める小さな改善
最初は、社長や店長が繰り返し応援している仕事を一つ選んでください。
担当者と一緒に作業を観察し、時間のかかっている工程を確かめ、手順や置き場所を変えて試します。
例えば1週間試し、作業時間と売場の状態、粗利益やロスへの影響を確認します。
うまくいった方法は作業指示書に残し、次の担当者にも教えます。
このように、実行から始めて確認、改善、次の計画につなげるD-CAPを回していきます。
社長や店長が毎日作業を引き受ける状態を少しずつ変え、現場の人が判断して動ける範囲を広げていく。
そのための時間をつくることが、店舗の利益改善と人材育成を進める経営の仕事です。
スーパーの生産性向上でよくある質問
Q.人手不足でも社長や店長の作業時間を減らせますか
まずは、移動、探す時間、重複入力などから見直します。
必要な作業量と時間帯別の人員を確認し、現場が回る条件を整えながら、管理者が抱えている仕事を段階的に移します。
Q.作業を任せた結果として品質が落ちるのを防ぐには
完成状態と手順を写真などで示し、実際にやってもらって確認します。
任せる範囲と、異常時に管理者へ相談する基準を決め、確認の機会を設けてください。
Q.時間短縮の成果は何で測ればよいですか
短縮した人時に加え、粗利益額、欠品、値引き・廃棄、実際の人件費を確認します。
空いた時間を別の業務に使った場合は、その業務の成果も評価します。
サミットリテイリングセンターでは、スーパーマーケットの作業改善、売場改善、人時生産性の向上、人材育成を支援しています。
会社や店舗の実情に合わせて、現場で実行できる改善方法を、現場を確認しながら一緒に考えます。
サミットリテイリングセンター 代表 新谷千里
スーパーマーケット業務改善コンサルタント
【著者と支援内容へのリンク】
■マイベストプロの著者ページ ⇒ https://mbp-japan.com/osaka/summit-rc/
■サミットリテイリングセンター公式サイト⇒ https://www.summit-rc.com/


