価格競争から抜け出すには、「高く売れている場所」を見に行け スーパーマーケットの利益改善は、見ている世界を変えることから始まる

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーの営業戦略

スーパーマーケットの売上改善・利益改善で重要なのは、価格を下げることだけではありません。
高くても選ばれる店、富裕層が価値を感じる売場、サービス、商品を実際に見ることで、経営者・店長・チーフの発想は大きく変わります。

私はよく、スーパーマーケットの経営者や店長、チーフにこう伝えます。
「一度、富裕層が買い物をしている世界を見に行ってください」

すると、こう聞かれることがあります。
「高級スーパーの品揃えをしろ、ということですか?」

違います。
品揃えをしろと言っているのではありません。
まずは、見ることが大切なのです。
なぜなら、
人は見たことがないものを、なかなか欲しいと思えないからです。

そして、
見たことがない売場、
見たことがない商品価値、
見たことがない接客レベルを、
自分の店で実現しようとは思えないからです。

価格競争しか見ていないと、価格競争から抜け出せない

多くのスーパーマーケットでは、日々このような言葉が飛び交っています。

「競合が安い」
「お客様は価格しか見ていない」
「景気が悪いから高い商品は売れない」
「値上げしたら売れなくなる」

確かに、生活防衛意識が高まっているお客様は多くいます。
食品スーパーにおいて、価格対応が重要であることも事実です。
しかし、ここで考えなければならないことがあります。

本当に世の中のお客様は、安いものしか買っていないのでしょうか。
本当に、価値のある商品にはお金を払わないのでしょうか。


答えは違います。

高級ホテル、高級レストラン、高級リゾート、百貨店の食品売場、専門店、富裕層向けのショッピングモールでは、今日も高単価の商品やサービスにお金が使われています。

つまり、世の中には確実に、
「高くても買うお客様」
「価値が伝われば買うお客様」
「自分の暮らしを豊かにする商品にはお金を払うお客様」

が存在しているのです。

見ている売場が、自店の限界をつくる

スーパーマーケットの利益改善が進まない店には、共通点があります。
それは、経営者や店長、チーフが見ている世界が狭いことです。

毎日、自店と近隣競合だけを見ている。
価格訴求のチラシばかり見ている。
安売りの成功事例ばかり追いかけている。
競合店の売価だけを見て、売場づくりや価値訴求を考えていない。
これでは、発想がどうしても価格中心になります。

「いくら安くするか」
「どれだけ値引きするか」
「どの商品を目玉にするか」

もちろん、価格政策は必要です。
しかし、価格政策だけでは営業利益は残せません。

粗利益率を上げる。
買上点数を増やす。
重点商品のマージンミックスを高める。
ロスを減らす。
作業効率を高める。
お客様に選ばれる売場をつくる。

これらを実現するには、安売りの世界だけでなく、高くても選ばれている世界を見るのが早道です。

富裕層の世界を見る目的は、「高級品を並べること」ではない

ここで誤解してはいけないことがあります。

富裕層の世界を見る目的は、自店に高級品ばかりを並べることではありません。
地方の中小スーパーが、いきなり高級ホテルや百貨店と同じ商品構成にする必要はありません。

見るべきポイントは、商品そのものの価格ではありません。
見るべきは、次のような部分です。

・なぜ、その商品が高くても選ばれているのか
・どのような見せ方で価値を伝えているのか
・お客様は何に満足してお金を払っているのか
・商品の品質、鮮度、安心感、ストーリーをどう表現しているのか
・接客や空間づくりが購買意欲にどう影響しているのか
・価格ではなく、価値をどう言語化しているのか

これは、スーパーマーケットの現場にそのまま活かせます。

たとえば青果なら、
単に「トマト 198円」と売るのではなく、産地、甘み(糖度)、食べ方、保存方法、料理用途を伝える。

鮮魚なら、
単に「刺身盛合せ」と売るのではなく、鮮度、切り方、職人の技術、夕食シーンを見せる。

精肉なら、
単に「国産牛」と売るのではなく、肉質、部位、調理提案、家族の食卓を想像させる。

惣菜なら、
単に「手作り」と言うのではなく、店内調理、できたて感、家庭では出しにくい味を伝える。

こうした価値訴求ができる店は、価格だけの競争から少しずつ抜け出していきます。

「お客様は安いものしか買わない」は、売場側の思い込みかもし

現場でよく聞く言葉があります。

「うちのお客様は高いものを買わない」
しかし私は、その言葉を簡単には信じません。
なぜなら、多くの場合、
高い商品が売れないのではなく、高くても買いたくなる理由を売場が伝えていない
ことが多いからです。

価値が見えない商品は、高く感じます。
理由が伝わらない商品は、比較されます。
使い方が分からない商品は、手に取られません。
美味しさが想像できない商品は、買われません。


逆に言えば、
価値が伝われば、売価は変わります。
お客様の反応も変わります。
売場の粗利益も変わります。


スーパーマーケットの利益改善において重要なのは、値上げそのものではありません。
お客様が納得して買える価値を、売場で『見える化』することです。

店長・チーフは、もっと上の売場を見た方がいい

私は、店長やチーフには、もっと多くの売場を見てほしいと思っています。

近隣の競合スーパーだけではなく、百貨店の食品売場、専門店、人気のベーカリー、繁盛している惣菜店、高級スーパー、道の駅、観光地の物販店、ホテルの朝食会場などを見るべきです。
そこには、価格競争だけではないヒントがあります。

商品の並べ方。
POPの伝えている言葉。
照明の当て方。
香りの使い方。
試食の出し方。
接客との距離感。
売場の余白。
季節感の演出。
お客様が写真を撮りたくなる仕掛け。

これらは、すべてマーケティングです。
そして、スーパーマーケットの売場改善にも直結します。
価値観が変われば、売場づくりが変わる
人は、見ている世界に引っ張られます。

周りが節約の話ばかりしていれば、節約の発想になります。
競合の安売りばかり見ていれば、安売りの発想になります。
値引き処分ばかり考えていれば、ロス削減ではなく後始末の発想になります。

しかし、高くても選ばれている売場を見ると、発想が変わります。

「この商品は、もっと美味しさを伝えられるのではないか」
「この売場は、もっと季節感を出せるのではないか」
「この惣菜は、夕食提案として見せれば売れるのではないか」
「この刺身は、素材の特別感と店内加工をもっと前面に出せるのではないか」
「この野菜は、食べ方まで提案すれば買上率が上がるのではないか」

価値観が変われば、行動が変わります。
行動が変われば、売場が変わります。
売場が変われば、お客様の反応が変わります。

お客様の反応が変われば、売上と粗利益が変わります。

利益改善は、数字だけではなく「見ている世界」から始まる

営業利益を改善するためには、もちろん数値管理が必要です。

POSデータの活用。
KGI・KPIの設定。
在庫管理。
ロス管理。
人時売上高の改善。
FLコストのコントロール。
重点商品のマージンミックス管理。
作業改善と標準化。

これらは、スーパーマーケット経営において欠かせない基本です。
しかし、数字だけを見ていても、売場は魅力的になりません。

数字は現状を教えてくれますが、未来の売場のイメージまでは作ってくれません。

未来の売場を作るためには、
経営者、店長、チーフ自身が、
もっと豊かな売場、
もっと価値が伝わる売場、
もっとお客様が喜んでお金を払っている世界
を見る必要があります。

まとめ:価格ではなく、価値で選ばれる店になる

スーパーマーケットが価格競争から抜け出すために必要なのは、単なる高級化ではありません。
必要なのは、
お客様が価値を感じる理由を売場で伝える力です。

その力を磨くためには、安売りの現場だけを見ていてはいけません。
高くても売れている場所を見に行くことです。

✓ 富裕層が何に満足し、何にお金を払っているのかを観察することです。
✓ 価値が伝わる売場、サービス、商品づくりを学ぶことです。


成功できない店の多くは、能力がないのではありません。
見ている世界が狭いのです。

だから私は、スーパーマーケットの経営者、店長、チーフに伝えたい。

✓ もっと上の売場を見てください。
✓ もっと価値が伝わる世界を見てください。
✓ もっとお客様が喜んでお金を払っている現場を見てください。
富は、価値が見えている人のところに集まります。
そして利益は、価値を売場で表現できる店に残るのです。


営業利益改善、売場改善、在庫削減、作業改善、KGI・KPI設定などでお悩みのスーパーマーケット経営者・店長・幹部の方は、サミットリテイリングセンターの現場改善支援をご活用ください。
現場診断、売場改善、数値管理、人時生産性改善まで、実際の店舗課題に合わせて支援いたします。

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新谷千里
専門家

新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングとオペレーション改善とコスト削減。他では教えてくれない理論と実践で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

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