スーパーマーケットの売上が伸びない本当の理由 | お客様は商品ではなく「悩みの解決」を買っている

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーマーケットの販売戦略

スーパーマーケットで売上が伸びない、粗利益が残らない、客数が減っている。その原因は、商品力だけではなく「お客様の痛み」を言語化できていないことにあります。

売場改善・POP・販促・インストアMDの視点から、売れる理由を解説します。

お客様は「商品」ではなく「痛みからの解放」を買っている


人がモノを買う理由は、実にシンプルです。

それは、
「痛みから解放されたい」

という欲求が最も強いと言われまい。

ここで言う痛みとは、身体的な痛みだけではありません。
「夕食の献立が決まらない」
「忙しくて料理に時間をかけられない」
「家族に美味しいものを食べさせたい」
「物価高で、できるだけムダな買い物をしたくない」
「健康には気をつけたいが、何を選べばいいか分からない」

こうした不安、
迷い、
面倒、
損をしたくない気持ちも、
すべてお客様の“痛み”です。

スーパーマーケットの売場で、お客様が商品を手に取る瞬間も同じです。

お客様は、単に「大根」「豚肉」「刺身」「惣菜」を買っているのではありません。
その商品によって、今日の悩みが少し軽くなる。
・家族の食卓が整う。
・料理の手間が省ける。
・美味しいものを食べて満足できる。
このような“解決”を買っているのです。
スーパーマーケットでの親切な接客

売れない売場は「何を治してくれるのか」が伝わっていない

売場を見ていると、商品は並んでいるのに売れないケースがあります。

鮮度も悪くない。
価格も極端に高くない。
品揃えも不足していない。
それでも売れない。

その理由の一つは、売場からお客様に対して、
「この商品は、あなたのどんな悩みを解決します」
というメッセージが伝わっていないからです。

例えば、
青果売場で小松菜をただ並べているだけでは、お客様の心は動きにくい。

しかし、次のように伝えると意味が変わります。
「下ゆで不要。炒め物にも味噌汁にも使えて、夕食づくりが時短になります」
「鉄分・カルシウムが気になる方に。毎日の食卓に一品追加しやすい野菜です」
「豚肉と一緒に炒めるだけで、10分で主菜が完成します」

商品は同じでも、お客様の受け取り方は変わります。
これは、単なるPOPの表現テクニックではありません。

お客様の生活上の“痛み”を見つけ、その解決策として商品を提示するマーケティングです。
[大見出し]「便利そう」「美味しそう」の奥にある本音を読む[/大見出し]
お客様は、売場で必ずしも本音を言葉にしてくれるわけではありません。

「便利そうだから買った」
「美味しそうだから買った」
「安かったから買った」
表面的には、そのように見えます。

しかし、
その奥には、もっと深い心理があります。

便利そうだから買うのは、料理の手間を減らしたいからです。
美味しそうだから買うのは、家族に喜んでもらいたいからです。
安かったから買うのは、家計の不安を少しでも減らしたいからです。

つまり、お客様の購買理由を掘り下げると、必ず何らかの「不安・不満・不便・不足」があります。

売場づくりで重要なのは、この本音を読むことです。

スーパーマーケットが提供すべき「治癒の約束」とは何か

私は、商品やサービスには「治癒の約束」が必要だと考えています。

治癒の約束とは、
「この商品を買えば、あなたのこの悩みが軽くなります」

と明確に伝えることです。

スーパーマーケットで言えば、次のような約束です。
・献立の悩みを解決する
・料理時間を短縮する
・健康的な食生活を支援する
・家計のムダを減らす
・家族が喜ぶ食卓をつくる
・季節感のある食事を楽しめる
・調理の失敗を減らす
・買い物の迷いを少なくする

この約束が売場から伝わると、お客様は商品を選びやすくなります。

逆に、
何も約束していない売場は、単なる商品陳列で終わります。

それでは、価格競争に巻き込まれやすくなります。

POPは「商品説明」ではなく「悩み解決の入口」である


多くの売場では、POPが商品説明で終わっています。

「本日入荷」
「おすすめ」
「お買得」
「産地直送」
「鮮度抜群」

もちろん、これらも大切です。

しかし、
それだけではお客様の行動を大きく変えるには弱い場合があります。

お客様が反応しやすいPOPは、商品の特徴だけでなく、買った後のメリットが見えるPOPです。
例えば、次のような表現です。
「今夜の一品、これで決まり」
「焼くだけで主菜完成」
「忙しい日の味方」
「野菜不足が気になる方へ」
「冷蔵庫にあるだけで安心」
「あと一品に迷ったら」
「お弁当にも夕食にも使えます」

このような言葉は、お客様の生活シーンと直結しています。

POPの役割は、目立たせることだけではありません。
お客様の頭の中にある悩みと、目の前の商品を結びつけることです。

売場改善は「お客様の痛みリスト」から始める

売上改善を考えるとき、最初にやるべきことは、商品を増やすことではありません。
価格を下げることでもありません。
チラシを強化することでもありません。

まず必要なのは、
お客様の痛みをリスト化すること
です。

例えば、
食品スーパーのお客様には、次のような痛みがあります。
・毎日の献立を考えるのが大変
・料理に時間をかけられない
・物価高で買い物に慎重になっている
・健康に良いものを選びたいが、判断できない
・少量で買いたい
・鮮度の良いものを選びたい
・調理方法が分からない
・高くても失敗したくない
・家族の好みに合うものを選びたい
・買った食材を使い切れず、ロスにしてしまう

この痛みを明確にすれば、売場づくりの方向性が見えてきます。

どの商品を重点商品にするのか。
どの場所に陳列するのか。
どんなPOPを付けるのか。
どの商品と関連販売するのか。
試食やレシピ提案をどう行うのか。
すべての判断基準が変わります。

インストアMDは「痛み」と「商品」を結びつける技術である

インストアMDとは、単に商品を並べる技術ではありません。

お客様の購買行動を理解し、売場の中で買う理由をつくる技術です。

例えば、
・鍋つゆの横にカット野菜を置く。
・刺身の近くに大葉、わさび、醤油を置く。
・焼肉用の肉の近くにキムチ、焼肉のたれ、サンチュを置く。
・トマトの近くにモッツァレラチーズやオリーブオイルを置く。
これは、単なる関連陳列ではありません。

お客様の「何を作ろうか」という悩みを売場で解決しているのです。

つまり、インストアMDの本質は、
お客様の痛みと商品を売場の中でつなぐこと
です。

価格訴求だけでは、営業利益は残りにくい

売上が厳しくなると、多くの店は価格訴求を強めます。

もちろん、価格は重要です。
しかし、価格だけに頼ると、粗利益は残りにくくなります。

特に中小スーパーマーケットは、大手ディスカウントやドラッグストアと同じ土俵で価格競争を続けると、体力を消耗します。

だからこそ、価格以外の買う理由をつくる必要があります。
「この店で買うと、献立に迷わない」
「この店の惣菜は美味しい」
「この店の鮮魚は安心できる」
「この店は、季節の食べ方を教えてくれる」
「この店に来ると、今日の夕食が決まる」
こうした価値が伝わると、価格だけではない購買理由が生まれます。

粗利益を残すためには、商品を安く売る前に、商品価値を正しく伝える必要があります。

店長・チーフが持つべき問い

売場を改善したい店長、チーフ、バイヤーは、次の問いを持つべきです。

「この商品は、お客様の何を楽にするのか」
「この商品は、どんな不安を解消するのか」
「この売場は、どんな生活シーンを提案しているのか」
「POPは、商品説明で終わっていないか」
「関連販売は、お客様の献立づくりを助けているか」
「価格以外の買う理由を伝えているか」
この問いを持つだけで、売場の見方が変わります。

売場は、商品を置く場所ではありません。
お客様の悩みを解決する場所です。

まとめ|売れるマーケティングは「痛みの言語化」から始まる

マーケティングの力は、派手な言葉やデザインだけで決まるものではありません。

大切なのは、
お客様が何に困っているのかを見抜き、それを言葉にすること
です。

お客様は、商品を買っているようで、実は悩みの解決を買っています。
不安の解消を買っています。
時間の短縮を買っています。
家族の満足を買っています。
失敗しない安心を買っています。
だから、スーパーマーケットの売場には「治癒の約束」が必要です。

この商品は、何を解決するのか。
この売場は、お客様のどんな痛みを軽くするのか。
このPOPは、買う理由を伝えているのか。
ここを明確に言葉にしたとき、売場のマーケティングは一気に力を持ちます。

売上改善、粗利益改善、買上点数アップは、商品を増やすことだけで実現するものではありません。

お客様の痛みを理解し、その解決策として商品を提案することから始まります。

スーパーマーケット経営において、売場は単なる販売場所ではありません。
地域のお客様の食生活の悩みを解決する、最も身近なマーケティングの現場なのです。

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新谷千里
専門家

新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングとオペレーション改善とコスト削減。他では教えてくれない理論と実践で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

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