売場を広げても、利益は増えない。  | スーパーマーケットは「管理できる売場」に絞る勇気が必要である

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーマーケットの経営戦略

スーパーマーケットの利益改善には、売場面積や品揃えを増やすことよりも、在庫管理・鮮度管理・作業管理の精度を高めることが重要である。

売れない商品を減らし、管理できる売場に絞ることで、売上と営業利益を同時に改善する考え方を解説する。

科学的な売場づくり
スーパーマーケットの経営では、売上を上げるために「売場を広げる」「品目を増やす」「大量に仕入れる」という発想になりがちである。

しかし、現場を見ていると、必ずしもそれが利益につながっているとは限らない。

むしろ、管理できない売場、売り切れない在庫、値引き前提の商品が増えることで、売上はあっても営業利益が残らない店舗が少なくない。

大切なのは、売場を広げることではない。
管理できる売場に絞り、商品の歩留まりを上げることである。

あるスーパーの店舗の事例

ある店舗では、売上を伸ばすために生鮮部門の品揃えを増やし、売場も広く取っていた。
青果、鮮魚、精肉、惣菜の各部門で、見た目の品揃えは豊富であった。
しかし、実際には次のような問題が起きていた。

・売れ筋以外の商品が残る
・閉店前の値引きが増える
・鮮度落ちによる廃棄が増える
・補充、陳列、値引き、廃棄作業に時間がかかる
・パート・社員の残業が増える
・売上はあるのに粗利益が残らない

つまり、売場は広いが、管理が追いついていなかったのである。

そこで、この店舗では思い切って、扱い商品と売場運用を見直した。

具体的には、
売れ行きの弱い商品、
値引き販売になりやすい商品、
作業負担の大きい商品を整理し、
管理対象を約2割減らした。

売場を小さくするというより、利益の出にくい商品と作業を減らしたのである。

品揃えを減らして、管理精度を上げた

この店舗が行ったことは、単純な縮小ではない。
重点商品を明確にし、売れる商品に人手と時間を集中させた。

青果であれば、鮮度感が伝わる主力野菜や果物に絞る。
鮮魚であれば、刺身・切身・丸魚の売れ筋を明確にする。
惣菜であれば、売れる時間帯に合わせて製造量を調整する。
精肉であれば、曜日別・時間帯別に売れる容量と価格帯を絞り込む。

品揃えを増やして売上を追うのではなく、売れる商品を売り切る精度を高めたのである。

その結果、売場管理に使える時間が増えた。

発注精度が上がり、補充のタイミングも改善された。
商品の鮮度チェックが丁寧になり、値引き判断も早くなった。
作業指示も明確になり、ムダな手直しや残業も減った。

結果として、売場の見た目は整理され、商品の鮮度感も上がった。

スーパーマーケットにおける「歩留まり」とは何か

農業で言えば、歩留まりとは、畑からどれだけ良品を収穫できるかである。

スーパーマーケットで言えば、歩留まりとは、仕入れた商品をどれだけ利益商品として販売できたかである。

つまり、次のような数値が重要になる。
・値引き率
・廃棄率
・ロス率
・欠品率
・粗利益率
・在庫回転率
・人時売上高
・人時粗利益高

売上だけを見ていると、経営の実態は見えない。

売上が上がっていても、値引きと廃棄が増え、作業時間が増えていれば、営業利益は残らない。

反対に、売上が大きく伸びていなくても、ロスが減り、粗利益率が上がり、作業時間が減れば、利益は改善する。

これが、スーパーマーケット経営における歩留まり改善である。
特に今、「利益率が低い」「利益が出ない」と感じている経営者は、重要な戦略ポイントと言える。

売れない商品を持たない勇気

多くの店舗では、「品揃えを減らすとお客様に不満が出るのではないか」と考える。

もちろん、必要な品揃えまで削ってはいけない。

しかし、売れない商品、利益が出ない商品、毎回値引きになる商品を持ち続けることは、経営にとって大きな負担である。

売れない商品には、見えないコストがかかっている。
発注する時間。
品出しする時間。
売場を直す時間。
値引きする時間。
廃棄する時間。
在庫を数える時間。
売場スペースを占有するコスト。

これらは、すべて営業利益を圧迫している。

だからこそ、スーパーマーケットには、売れない商品をやめる勇気が必要である。

売り先のある量だけ仕入れる

今回の事例で重要なのは、単に商品を減らしたことではない。

売り先のある量だけ仕入れたことである。

生鮮部門では、売れる量を超えて仕入れると、確実に鮮度は低下して、最後は値引き販売になる。

値引き販売が常態化すると、粗利益率は下がる。
廃棄も増える。
作業時間も増える。
お客様も「閉店前に安くなる」と覚えてしまう。

そうなると、定価販売の力が弱くなる。

本来、スーパーマーケットが目指すべきなのは、安売りで売り切ることではない。

適正な量を仕入れ、適正な時間に売り切ることである。

これができれば、平均単価は下がりにくくなる。
値引きも減る。
廃棄も減る。

結果として、粗利益と営業利益が改善する。

作業時間を「販売後処理」から「売場管理」に移す

利益が残らない店舗ほど、作業時間の使い方に問題がある。

売れ残った商品の値引き。
売場の手直し。
廃棄処理。
過剰在庫の整理。
欠品後の慌てた補充。

これらは、すべて後追い作業である。

一方、利益が残る店舗は、事前管理に時間を使っている。

発注前に販売実績を見る。
天候、曜日、催事、競合状況を確認する。
売れる時間帯に合わせて製造する。
ピーク前に補充する。
重点商品の売場を早めに作る。
値引きが出る前に売り切る方法を考える。

つまり、作業時間を「後始末」から「事前管理」に移している。

この差が、営業利益の差になる。
この事例から学ぶ三つのこと
この店舗の改善事例から、学ぶべきことは三つある。

1.売り先のない商品を減らす勇気

売れる根拠のない商品を仕入れ続けても、利益は残らない。

市場価格、競合価格、過去実績、曜日別販売数、時間帯別販売数を確認し、売り切れる量を決める必要がある。

品揃えは多ければ良いのではない。
利益につながる品揃えでなければならない。

2.売場を広げる前に、歩留まりを上げる勇気

売場面積を増やしても、管理精度が低ければロスは増える。

まず見るべきは、今ある売場でどれだけ利益を出せているかである。

値引きが多い売場。
廃棄が多い商品。
欠品が多い時間帯。
補充が遅れる重点商品。
売場在庫が多すぎるカテゴリー。

ここを改善することが、売上拡大より先である。

3.目先の作業より、管理に時間を使う勇気

目の前の品出し、値引き、製造、補充に追われていると、店舗は常に後手に回る。

しかし、利益を出す店舗は、作業そのものよりも、作業を発生させる原因を管理している。
発注数量。
製造数量。
補充時間。
売場在庫。
販売計画。
人員配置。
重点商品のKPI。

これらを管理することで、ムダな作業は減る。

作業量を減らすから、人件費も下がる。
人件費が下がるから、営業利益が残る。
営業利益が残るから、賃上げや設備投資にもつながる。

入りを増やし、出を減らす

経営改善の基本は、非常にシンプルである。

入りを増やす。
出を減らす。

しかし、スーパーマーケットの多くの現場では、売上という「入り」だけを追いかけてしまうことが多い。

本当に重要なのは、売上、粗利益、在庫、人件費、ロス、作業時間を一体で見ることである。

売上を増やすために、在庫を増やす。
在庫を増やすから、ロスが増える。
ロスが増えるから、値引きが増える。
値引きが増えるから、粗利益が下がる。
作業が増えるから、人件費が増える。

結果として、営業利益が残らない。

この悪循環を断ち切るには、売場を増やす発想から、売場を管理する発想に変える必要がある。

まとめ:スーパーマーケットは「増やす経営」から「絞って強くする経営」へ

これからのスーパーマーケット経営では、人手不足、最低賃金の上昇、仕入価格の上昇、競合激化が避けられない。

この環境で、ただ売場を広げ、品揃えを増やし、売上だけを追いかけても、利益は残りにくい。

必要なのは、管理できる範囲に絞ることである。

売れる商品に絞る。
売れる時間帯に合わせる。
売り切れる量を仕入れる。
値引きと廃棄を減らす。
作業時間を減らす。
粗利益を残す。

この積み重ねが、ムダを少なくして営業利益を改善する。

スーパーマーケットの経営改善は、派手な販促や大きな投資だけで実現するものではない。

むしろ、日々の発注、売場在庫、鮮度管理、作業管理、値引き管理を見直すことで、大きく変わる。

売場を広げる前に、今ある売場の歩留まりを上げる。

これが、これからの中小スーパーマーケットが利益を残すための重要な考え方である。
(文:新谷千里)

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