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新谷千里

高利益を出すスーパーマーケットにするコンサルタント

新谷千里(しんがいちさと) / 経営コンサルタント

有限会社サミットリテイリングセンター

コラム

生産性をアップする、『前工程』 と 『後工程』 の考え方!【商人舎Webコンテンツ3月号・原稿】

2019年3月15日 公開 / 2023年3月17日更新

テーマ:スーパーの業務改善

コラムカテゴリ:ビジネス

私は、スーパーマーケットの業務改善のコンサルティングを行う現場で、重要事項であると考えていることの一つに、仕事の『段取り力』があります。

戦略を立てて実行しても、思うような結果が出せないのは、オペレーション(業務運営)がうまく回っていないことに大きく関係します。

売ることに必死で、生産性のことについて考えていない会社が多くあります。
また、人手不足の中、生産性が低くて悩んでいる会社も少なくありません。

今回は、目に見えにくい、そして、気付きにくい、しかし、生産性に大きく関わる仕事の『段取り力』について、現場の事例を交えて解説したいと思います。

※段取り・・作業手順、人員配置、役割分担など、業務の効率的な進め方

■スポーツも作業も段取り(基本)が大事

スポーツの基本に、走ることがあると思います。

悪いフォームで走ると、成績をアップさせる以前に怪我をしてしまう可能性が高まります。それを防ぐには、基本動作を正しく習うことが大切でしょう。自己流では、限界があります。
このことは、仕事においても同じことが言えると思います。

そして、ウォーミングアップとクールダウンです。
ウォーミングアップは、筋肉をほぐし、体温を運動に適した高め、血液を体の隅々まで循環させます。
そのことによって、怪我や故障の確率を下げることに繋がり、同時にパフォーマンスレベルを上げることにも繋がります。
また、クールダウンは、運動終了後、筋肉の中にたまった疲労物質を排出する効果が期待できます。
運動で硬くなった筋肉をゆるめ、運動で傷ついた筋組織の修復を進める効果が期待できるため、傷害予防にもつながるそうです。

仕事の現場においても、生産性を高める『基本動作』があり、『手順』があります。
特に、スーパーマーケットにおいては、加工作業や補充作業などに、多くの時間(人時)を必要とします。生産性を上げるためには、ここのところを正しく理解して、技術を習得し、癖付けることが重要です。
このことが、個人とチームの生産性を高めると同時に、担当者の疲労軽減と傷害予防にもつながるのです。

■結果を大きく変える、前工程と後工程の考え方

全ての実地作業において、前工程(作業)と後工程(作業)があります。

例えば、店内の補充作業の流れで考えてみると、
荷受け ⇒ 振分け ⇒ 移動 ⇒ 補充(先入れ先出し)⇒ 片付け。
という様な手順で進みます。

写真① 荷受けから、売場毎に分けてカートに積込まれ移動し、売場に振分けられたカート
商人舎WEBコンテンツ1903
写真② カーゴテナーからカット台車に移され、売場毎に振り分ける工程
商人舎WEBコンテンツ1903②
写真①、②の様に、振分けが正確にできていることによって、各担当者は、補充陳列作業にすぐに取り掛かることが出来、移動などムダな時間が発生しません。
また、カット台車の利用により、担当者は、楽に早く作業を遂行することが出来ます。

一方、店内の加工作業の流れで考えてみると、
振分け ⇒ 切付け ⇒ 盛付け ⇒ 包装 ⇒ 値付け ⇒ (カートへ)積込み。
という様な手順になります。

写真③ (右から)振分け ⇒切付け ⇒包装 ⇒値付け、とムダのないスムーズな作業の流れ
商人舎WEBコンテンツ1903③
写真③は、生産性が高い段取り(工程管理)が出来ている事例です。
(右方向から)振分け、切付け、包装、値付け、積込みへと作業の流れが良く、ムダが無い状態です。

そして、一連の作業を、一人で行う場合もあれば、数人で行う場合も有ります。
この時に重要になって来るのも、前工程(作業)と後工程(作業)の考え方とその効率的なムダの少ない作業の流れです。

生鮮部門の場合、加工作業と補充作業は、連続して行われる場合が多くあります。
特に、午前中の作業は、売場完成の目的で、連続して行われることが多くなります。
この時の物の流れや作業の流れがスムーズで、ムダが少なくなっていることが生産性アップのためには重要です。

写真④ 値付け作業まで終わらせて積込みしている商品
商人舎WEBコンテンツ1903④
写真⑤ 加工作業で値付けが終わっていない状態(後工程へ回される)
商人舎WEBコンテンツ1903⑤
写真④の事例は、値付けまで終わり、且つ商品が整理されてコンテナ(通い箱)に入れられているため、後工程の陳列作業は、両手でスピーディに行うことが出来ます。
このことにより、補充担当者の売場での滞在時間が少なくて済み、効率的で生産性が高くなります。

一方、写真⑤の事例は、値付けが終わっていない状態です。
そのため、補充担当者は、売場でその作業をすることになります。
当然、売場で値付け作業と陳列作業を行うため、補充担当者の売場での滞在時間が長くなります。
また、動作としても写真⑥の様に、片手作業になりやすく、効率は更に悪くなります。

写真⑥ 値付け作業と片手作業
商人舎WEBコンテンツ1903⑥
図① 作業の流れの違い
商人舎WEBコンテンツ1903図①
これらのことを、図①で説明すると、
前工程(図①-①)が正しく完了していれば、後工程(図①-②)では、陳列だけで済むため、後工程②の作業効率が良くなります。
(図①-③)のような流れであれば、売場で値付けと陳列(写真⑥参照)の作業をすることになり、多くの場合④の作業量効率が悪くなり、生産性が低下することになります。

また、併せて重要なこととして、補充担当者は、目の前の作業に集中することにより、接客対応レベルも低下する傾向になることを忘れてはいけません。

この様に、作業は、多くの『動作』の集まりです。
同じ作業をやっても、個々の動作は勿論、手順や方法、そして、それらの組み合わせによって、生産性を大きく変えてしまうことになります。

■会議の前工程の重要性

会議にも生産性があります。
議題(大小の戦略や課題など)について、議論し実行方法を決定する場が会議です。

主要メンバーが集まり、コストも高く、ムダな時間を消費することは、避けたいものです。
当然、声の大きい人の鬱憤を晴らす(部下がやる気をなくす)ための場になってはいけません。

会議の生産性とその後成果を最大化させるためにも、段取りが重要です。

会議の主催者は、参加メンバーに対して、事前に会議の目的と目標を知らせておくことが重要です。参加メンバーが集まってから説明していては、大きな時間のロスを発生させることになります。
ですから、会議の目的と目標を文書や動画にして、会議の前に参加者全員に知らせておく必要があります。

参加者は、それをもとに互いの考え方(アイデア)をまとめた上で、会議に参加することが出来れば、会議の生産性は飛躍的にアップすることが期待出来ます。
また、このことにより、会議の最初から、中身の濃い議論に発展させることに繋がります。

この様にして行われる会議は、中身の濃い議論を呼び、今までに思いつかなかったような、革新的なアイデアが生まれることに繋がるかもしれません。

■正しい業務改善が、生産性を上げる!

この様に、仕事全般において、前工程と後工程の関係が重要であることを、お解りいただけたのではないかと思います。

そして、自社の生産性(オペレーション力)をアップさせるためには、現場の実地調査を行うことを抜きにしては考えられません。

そして、現場の生産性をアップさせるためには、現場を見る力(実地検証力)と正しく変える力(改善力)が重要です。
そして、その繰り返しが、現場のオペレーション力を確実にアップさせることに繋がるのです。
現状実行されている、作業の手順や人員配置、役割分担、そして、作業環境など、現場の作業はとても複雑であり、問題点も多くあります。それを調査する必要があるのです。

今回で紹介した事例は、社内で行われている作業(動作)のほんの一部であり、その数百倍の作業(動作)が現場には存在しています。
しかしその分、改善の芽は多く存在するとも言えるのです。

業務(作業)改善は、人手不足や人件費の上昇、採用難や定着率の低下などに関わる重要な問題であり、それらの解決策でもあります。
業務改善コンサルタントの立場から見て、スーパーマーケットの現場には、多くの課題解決の可能性が隠れています。

■お客が最後の後工程!

商品の流れを考えるとき、最後を務める担当者がお客です。お客の買い物は、店舗内での最終工程であると言えます。

そのためには、前工程の仕事として、売場は、「探しやすく」、「見やすく」、「取りやすく」、「選びやすく」なっている必要があります。
当然、商品自体が、地域一番の価値を持ったものであれば、一品単価もアップさせることも可能であるでしょう。

また、実践的マーケティング力によって、お客が納得すれば、買上率、買上点数、一品単価をアップさせ、売上(客単価)をアップさせることも出来ます。

そして、店舗を離れた商品は、お客の調理という最終工程に入るのです。
この時の「鮮度感」や「味」などに対する、お客の「良い経験」が、信用に繋がり、次の来店(購買頻度アップ)に繋がるのです。

お客が良い体験をするために、後工程を考えて行動することが、店舗内のムダを削減させ、オペレーションの質を上げ、生産性を上げることに繋がるのです。

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