グルーミングルームのある間取り
構造材としての集成材
構造用集成材が開発されて100年が経過します。しかし、日本で本格的に用いられ始めたのは、ここ30~40年ほどの話しです。それでも安定的な強度を備え、集成材が原因で建物が損傷したと云う話しをまだ耳にしません。
市場に出回り始めた頃は、木そのものよりも、木と木をつなぐ接着剤の耐久性が疑問視され、中々普及しませんでした。
木と木を接着剤で接合する建材に合板があります。昔の合板は接着剤の性能が悪く、特に湿気に弱く、古い家を調査しますと、一階のフローリング等でフワフワした足ざわりの物件によく遭遇します。接着剤が劣化して、合板が剥がれてしまった為に起きる現象です。
集成材も合板と同様、接着剤で木と木を繋いでいるのですから同様の懸念が専門家の間でも取沙汰されていました。
その後、20年ほど前から、準大手のハウスメーカーが集成材を構造材として使用し始め、実績を残すと同時に、世間でも認められる様になり、現在では無垢の構造材と同じ様に使われ始めています。
接着剤の改良・進化が大きな安心感となり最近では、木造集成材による高層建築物や大規模建築物も登場し始めています。
集成材の特徴
無垢材にも等級が定められている様に、集成材にも等級が定められています。違うのは、無垢材は木の品質を定めているのに対し、集成材は木の強度を定めています。
無垢材は節の有無や、角の欠け・丸みの有無を重視するのに対し、集成材は強度を等級にしています。集成材に貼られたシールに「E95-F315」と云った文字を確認する事が出来ます。Eはその木材の伸縮を表す度合い、Fはその木材の強度を表す度合いとなっていて、数字が大きい程強い木であると云えます。
集成材は、様々な木を重ねて接着していますので、反りや捻じれ曲がりと云った無垢材にある癖が無く、どの製品でも一定の品質を確保する事が出来ます。
かつては、大工さんが構造材の選定に当たり、木の癖を読みながら、墨付け・刻み作業を行ったものですが、現在ではそう言う目の確かな大工さんが減ってしまい、無垢材であっても闇雲にプレカット業者に刻み作業を依頼しているのが現状で、最近では墨付け・刻み作業を行う作業場も見なくなりました。
昨今の住宅の構造
37年前に発生した阪神大震災以降、急速に根太レス構法が普及しています。構造材と床板の間にあった根太を省略して、床の合板を直接構造材に固定する工法です。利点として根太を介するよりも、床面の水平剛性が増して(二倍程度の強度になります)それだけ地震に強い建物となる為です。
根太レス構法の欠点は、構造材の反りや捻りが直接仕上げ材に影響を及ぼしてしまう事です。無垢の梁を用いると経年変化や季節変化で、梁が反ったり捻ったりしますが、その都度床面を持ち上げたり、床鳴りを起こしたりする可能性があるのです。かつては、そう言った影響を抑える為に根太を施していたのですが、耐震の関係で根太を省略する方向に流れていると云う事です。
そこで根太レス構法の欠点を無くす意味合いから、反り・捻じれの起こらない構造材として、集成材が用いられる様になって来ました。また、手作業による墨付け・刻み作業では施工精度にムラが出て水平面を確保する事が難しい為プレカット工法が発達しました。
今後の集成材の行方
日本は地震国ですので、今後益々住宅の耐震化が図られます。一般的な木造住宅でも構造計算をしっかり行って、どの柱にどの程度の力が加わるかを、勘や経験でなく数値で表して施工する時代になって行きます。
その為にも品質の安定した構造用集成材の需要は拡大して行くでしょう。
それとは対照的に自然素材を用いた、無垢の木の家造りも注目を浴びています。接着剤は化学製品ですから今後アレルギー等の薬害対象にならないとも限りません。そう言う意味合いから無垢の木で家を造る事も間違いではありません。
その場合でも、日本は地震国ですから、集成材の家よりも、無垢の木の家が構造的に弱くて良いハズがありません。
無垢の木で造る家こそ、構造計算をしっかりと行い、根太を用いた家であっても、耐震的に安心できる家にする事が重要となります。
無垢の木の持つ、心地よさ、住み易さと云った抽象的な宣伝文句に踊らされず、地に足をつけた家造りをお勧めします。