サヤ管(設備配管の為のスリーブ)
上棟作業
基礎工事の際は、建物は意外と小さく見えるものです。いつもの事ですが、棟が上がると、その大きさに一般の方は驚かれます。今回も、建て起こしてみると、今更ながら大きさを実感します。
私は、二階建ての建物にも、構造計算を行っていますので、一本一本の柱や梁にどの程度の力が加わるのかを全て把握しています。加わる力が判るから、その力に見合う強度の柱や梁を選定出来るのです。しかし、木造住宅の二階建ての建物の殆どは、構造計算を行っていません。つまり山勘で建てられているのです。
4号特例は消費者目線の制度ではない
建築基準法6条3には4号特例と云う、木造の構造を弱めている悪習が規定されています。4号特例とは、建築確認申請時において、一定規模の木造建築物(4号建築物)の構造図書の添付を省略出来る制度です。今まで大きな災害が発生する度に、何度も4号特例の廃止が検討されて来ましたが、その都度、沙汰闇になってしまう制度です。
これは、木造住宅の建設戸数が年間数十万件に及ぶため、特例を撤廃すると木造構造計算に熟達した技術者の不足が明らかで、市場が混乱してしまう為に見送られているのです。
つまり、木造住宅は、昔から建てられて来た、熟練技能者が多く存在する工法で、構造計算を行わなくても、技能者の勘や経験で処理出来る扱い易い工法と云う、解釈は誤りなのです。その証拠に、建築基準法では、申請義務を省略して良いとなっていますが、構造計算を行わなくても良いとは書いていません。申請しないで済む事を良い事に、構造計算を怠っているのです。
簡易な壁量計算は不十分
また、木造の構造を検討する手段として、建築基準法では、簡易は壁量計算をする事を義務付けしています。簡易な計算である為、構造材一本一本にどの程度の力が加わるのかは分かりません。建物の床面積や表面積に合わせて必要な壁の量を定めているだけの、簡易な計算です
実際に壁量計算をして、合格となった建物でも、構造計算を行うと、不合格になる建物が7割くらいあります。即ち壁量計算の基準が甘いのです。
しかし、壁量計算も、建築基準法に定められている計算法ですので、壁量計算で合法となれば、例え、新築早々なのに地震で倒壊してしまったからと云って、設計者や施工業者には、落ち度が無い事になってしまいます。
自衛する手段はただ一つ
一般の方が自衛する手段はただ一つです。設計をお願いする際に、構造計算を行って安全を検証してくれと依頼する事です。契約条項に構造計算を行う事と特約条項を入れれば、構造計算をしないと契約違反となります。構造計算をしても計算費用は普通の木造住宅であれば、20万円前後です。それどころか、力の流れが全て把握出来ますので、山勘で大きい目に入れられていた構造材のスリム化を図る事も出来ますので、工事費全体で見ると、返って経済的で有りさえします。
無駄なところの材料費を節約し、必要なところに重点的にお金を掛ける事が出来るのです。