プロに任せておけば良いの嘘
読者の方から、私の造る家とハウスメーカーの造る家の違いをコラムにしてくれとリクエストを頂きました。
私が書く事ですので我田引水になる事を割り引いて読んで頂ければと思います。
私は若い頃住宅会社に勤めていました。そこで知り合った大工さんや上司先輩の教えが、私の原点になっている事は間違いありません。ですので、ハウスメーカーの良さも熟知しています。
一定品質の家を低コストで大量に生産出来るのはハウスメーカーの長所です。ユニットバスが開発されたのもハウスメーカーのお陰です。ユニットバスに留まらず室内ユニット建具や各種内装建材も低コストでシステム的に建物に組み込む事が可能になりました。
この辺は、ハウスメーカーの長所ですので、調達コストでは及ばないものの、私も設計に取り入れています。
短所は何かと言いますと、折角低コストに出来たのに、余剰利益を購入者に還元出来ていない事です。余剰利益は宣伝広告費に変わり、イメージ戦略・ブランド化戦略に使用されています。言い換えれば建物の価格の何割かは宣伝費という事になります。
次に私の造る家の長所を書きます。
寿命の長い家造りを考えています。住宅の寿命は、現在の工法では、劣化や地震・台風被害で決まる事がありません。では何故30年前後で建替えられるのでしょうか。
それは飽きられたからなのです。まだリフォームすれば住める家でも、新築に目移りして建替えを決断される方が数多くいます。
ハウスメーカーは建て替えてもらわないと、商売になりませんので、「100年住宅」とか物理的な耐用年数を宣伝文句として使いながら、真の意味で寿命の長い家は造って欲しくないと考えています。その為ローンが終わる頃建物の寿命も尽きてしまうのです。
愛着のあるものは長く使います。命の無いものの宿命として、出来た時が一番美しく綺麗なのは言うまでもありません。しかし、愛着の沸く家は、古く汚れても、それが味わいとなります。
人に愛され続ける家は、どうして造るのかという事に、常に仕事を通して対峙しています。
私の得た結論は、建築主様にも家造りに参加してもらうと云う事です。建築と云う体験を通して、楽しんでもらったり、苦労してもらいながら、一緒に思い出を造る過程を経て始めて家に愛着が持てるのでは、と考えています。
私の家造りの短所は、時間が掛かると云う事です。ハウスメーカーの営業マンの様にノルマがありませんので、積極的に営業活動をすることはありません。士業商売してますので営業が下手なのです。そのため出会いから竣工に至るまで、早い方でも一年以上、中には数年前からお付き合いが続いている方もおられます。
ですので、プロに頼んだのだから、任せていれば勝手に家は出来上がると考えられている人は、とんでもない目に合うことになります