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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

愛着の沸かない家は30年も持たない

2013年2月5日

テーマ:【賢い家造り】

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 耐震補強

住宅の耐用年数についてよく相談されます。「木造住宅って30年持たないですよね?」と頭から決めてかかっている様な質問が結構多いです。その返答として「愛着が無ければ超高層ビルでも30年持ちませんよ」と答えています。

超高層ビルの解体で赤坂プリンスホテルの解体が、業界で話題になっています。屋根だけ残しておいてその直下階から建てる時と逆の順序で解体していきます。私は解体工法よりもその寿命に注目しました。竣工後28年にして解体です。物理的な耐用年数はまだまだあるはずです。耐震補強等のメンテナンス費用の増大から解体を決断したと云うのが公式な理由らしいですが、メンテナンスしなくて良い建物なんて一件もありません。経済的に採算が取れなくなったので解体されるのです。端的に云えばオーナーに飽きられたのです。愛着の沸かない建物は、物理的耐用年数以前に経済的耐用年数で寿命が決まるのです。

「木造住宅って30年持たないですよね?」の回答は、「他人任せで建てればそうなります」が最近の私の回答です。大手のハウスメーカーでも、100年住宅とか200年住宅とかを宣伝文句に使っています。謳っているのは、物理的耐用年数の話しばかりで、経済的耐用年数については何も語っていません。イメージとブランド力をアップさせる為の宣伝はもの凄いですが、イメージもブランドも流行モノで、10年・20年と云う単位で見れば儚く色褪せる存在です。つまりハウスメーカーの家は30年前後の耐用年数しか無い住宅しか造っていないのです。

親が一生を掛けて返済した家を、子供がいとも簡単に解体して、親と同じ借金を背負い込むのが今の日本の住宅事情です。この循環をどこかで断ち切らない限り、いつまで経っても日本人は欧米人並の生活水準には達しないでしょう。
設計事務所の仕事は許認可申請業務ではありません。資格さえあれば、申請業務だけなら誰にでも出来ます。本当の仕事は建築主にいつまでも愛され続ける事の出来る家を造るため、建築主の希望や思い入れを忠実にカタチにしていく事です。

この記事を書いたプロ

福味健治

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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