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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

「スキヤキ」と日本の住宅

2012年11月29日

テーマ:【カフェテラス】

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 畳 掃除畳 張り替え

「上を向いて歩こう」と云う世界的なスタンダードナンバーがあります。日本人が作詞作曲し日本人が最初に歌って世界中で流行した曲です。と云う事で日本人であれば、日本のオリジナルであることを信じて疑いません。ところが・・・

世界中に広がった「上を向いて歩こう」はアメリカに渡り「スキヤキ」と名を変えます。アレンジもされて何故か和音が中国音階。テンポもアメリカ人がイメージする中国のテンポに変わっています。「上を向いて歩こう」を知らない日本人が聞けば、これは日本の曲ではなく中国の曲だと思うでしょう。
その中国風の「スキヤキ」が世界中に広まって、日本と中国の音楽的な違いが世界中の人に誤解されたままになっています。

世界的に見れば、どちらも同じ東洋の国なので、どっちでも良い話しなのでしょう。日本人自身にも誤解を招く素養が多分にあります。外国製品、特に舶来品に弱いところです。日本の伝統文化よりも舶来品の方が格が上の様な気持ちになり、やたら真似をしたり身に着けたりして、いい気になっています。
これは日本人のDNAに染み付いている特質かも知れません。正倉院御物の中に中国やインド、遠くはギリシャのガラス工芸品まであり、その頃から舶来品には目が無かったのです。遣隋使・遣唐使で中国文化の影響をモロに受け、文明開化で西洋文明をがむしゃらに取り入れます。背広姿で街を歩き、家に帰ればステテコで畳の上に胡坐をかいてビールを飲むライフスタイルが定着します。紋付袴は見掛けない様になりましたが、吉田茂は紋付袴にステッキを持ち、葉巻をくわえています。

つまり、雑多な文化の集合体が日本の文化なのです。一歩間違えれば「猿真似」と呼ばれてしまうような、危うい文化です。京都の街の様にその雑多な文化を見事に日本流にアレンジして、これが日本と世界中を唸らせる技術も日本人は持ち合わせています。それに比べ日本の住宅のデザインはなんと貧相なことでしょう。世界に誇れる住宅建築美は桂離宮以外にはありません。庶民の住む家で世界中の人が憧れを持って迎えてくれる様なデザインに合った事がありません。地中海風の外観や、ビクトリアン様式の家も良いでしょうが、日本人が住むに相応しい世界の人が憧れる住宅デザインが日本に生まれても良い時期かと思います。

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