3LDK・4LDKと云った間取り例で家を決めて良いのでしょうか

福味健治

福味健治

テーマ:【賢い家造り】


お施主様の依頼に応じて、家のご希望をお伺いする際、必ず耳にするのは「最低3LDKは欲しい」「4LDKが希望です」と云う言葉です。

私はこう云う質問をします。
「年に何回ぐらい、あらたまったお客様が来られますか?」
「下駄箱から靴は溢れていませんか?」
「ご主人やお子様は帰宅されて何処で着替えしますか?」
「パソコンは何台ありますか?どこにパソコンを置くのがベストですか?」
「お子様は自分から個室が欲しいと云っていますか?」
「お子様が個室を望まれた場合、家族の団欒をどの様に過ごすのが良いですか?」

「年に何回ぐらい、あらたまったお客様が来られますか?」
個室としての応接室・リビングに接した客間。利用形態によりいっそ無くしませんかと云う提案をします。

「下駄箱から靴は溢れていませんか?」
昔、靴と言えば普段履くものと外出用の二足程度のものでした。今は服に合わせて靴を変えます。背の高い下駄箱にした程度では殆どの家は収まっていません。階段下の物入れは靴箱で溢れています。シューズクロークの必要性を問いかけます。

「ご主人やお子様は帰宅されて何処で着替えしますか?」
リビングが散らかる原因の多くは衣類の散乱です。個室や寝室があってもそこで着替えをしません。ロッカールームの必要性を問いかけています。

「パソコンは何台ありますか?どこにパソコンを置くのがベストですか?」
家の中でも、誰もが使えて、しかもパーソナルな空間と云うのは限られてきます。台数と何処に置くかは、今後テレビの位置を何処にするかよりも重要になってきます。

「お子様は自分から個室が欲しいと云っていますか?」
お子様が自ら個室を望んでいないのに親が、子供が大きくなれば必要だからと、造ってしまう傾向にあります。仕切り方や家具の配置次第で間仕切らなくても個室空間は演出できます。

「お子様が個室を望まれた場合、家族の団欒をどの様に過ごすのが良いですか?」
個室の居心地が良すぎると子供は、食事以外は自分の部屋に引き篭もる様になります。そのことは精神衛生上本当に良いことなのでしょうか?

断熱性能が悪かった時代の住宅は、空調効率を高める為、個別空調した方が省エネと考えられてきました。しかし個室空調は部屋を仕切る事を前提にしている為風通しを悪くして、自然換気を阻害して来ました。「外は涼しいのに家の中に入ると蒸し暑い」と感じておられる方の家はこのパターンです。
断熱性能が向上した現代の住宅は間仕切りを少なくして、吹き抜け等縦の風の流れを起こして家全体を一つの空調機で賄う発想が必要になっています。

休日の朝、新聞には新築、中古を問わず住宅のチラシが何枚も入っています。新築を考えている人や、間取りが好きな人は良く目を通されると思います。
私も間取りが好きで、この仕事を始める前からよく間取りを眺めていました。今でも習慣的に目を通しています。

日本の民家住宅の間取りの原点は「田の字型」住居です。端に土間があって牛や馬もそこで飼っていました。土間に面して板間があり囲炉裏が切ってあり、その奥に座敷があります。この形態の間取りが江戸時代から明治の初めにかけて300年間続きました。
町屋でも牛や馬がいなかったり、土間が店に変わったりするだけで形態は変わりません。

明治後半から大正にかけて西洋から新しい住居形式がもたらされて来ます。
民家にも独立した玄関が現れ、それに続く廊下に部屋がつながると云う「中廊下式」と呼ばれる住居形態です。明治43年に阪急の創始者小林一三が池田市に室町住宅を開発し日本初の分譲住宅を販売しています。玄関横に応接間があり茶の間・座敷と続きます。廊下の反対側は台所・トイレ・家庭風呂と云った構成です。この形態の住居も昭和20年代頃まで全国的に造られました。

大正時代に当時の住宅公社、「同潤会」が東京青山に日本初のマンション「青山アパート」を建設しています。
その流れを汲んで、日本住宅公団が戦後、全国に鉄筋のアパートの建設を始めます。
文化住宅と呼ばれる木造二階建て長屋と比べると遥かに文化的でしたので、新婚世帯の憧れの的となりました。賃貸住宅が主流で、募集の際に「○DK」とか「○LDK」とか記号を読んだだけで間取りを把握出来る呼び方を考案し、素人でも部屋の大きさを直ぐに把握できた為この呼び方が、マンションだけに留まらず戸建て住宅にも広がりました。

一戸建ての住宅ですが、実は「中廊下式」住居以降あまり変わっていません。台所はキッチン、茶の間はリビング、座敷は応接室と名前は変えていますが、間取りの配置形態に目立った変容はありません。部屋から部屋へ移る「田の字型」から廊下を通って部屋に入る「中廊下式」住居が、個人のプライバシーを守るのに都合が良いため、今もその呪縛から抜け出せないでいます。

これだけ時代が大きく変化している時に大正年間から続く間取り構成を、3LDK・4LDKと呼び方を変えただけで、そのまま踏襲して良いのでしょうか?

建築技術革新が進んだ現代の住宅に、大正時代の間取りを考える事は愚作だと思いませんか?

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福味健治
専門家

福味健治(一級建築士)

岡田一級建築士事務所

どうして良いか判らない貴方の為に、私はここにいます。まずは、お友達になりましょう。そして悩みや夢を語り合いましょう。理想の家造りはそこから始まります。私は友達を裏切りません。無料相談大歓迎。コラム必見

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