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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

300年間愛されている家

2011年6月4日 公開 / 2014年5月23日更新

テーマ:【カフェテラス】

コラムカテゴリ:住宅・建物


先日、京都嵯峨野の落柿舎を35年振りに尋ねました。私が学生時代に先輩から「300年前に建った家があるから見て来い」と云われて見に行った建物です。落柿舎は、松尾芭蕉の門人、向井去来の閑居で当時の庶民の住居の佇まいを良く残しています。

決して贅沢な造りではありません。屋根は当時庶民まで普及し始めた瓦屋根ではなく、藁葺き屋根です。壁も漆喰壁ではなく土塗りの荒壁のままです。柱に至っては今で言う間伐材です。学生だった私は、この家が何故300年間も壊れず、壊されず今まで残ったのか理解出来ませんでした。



今回尋ねて、何故この家が残ったのか判る気がしました。嵯峨野と云う風土、向井去来と云う人物が落柿舎と符合しているのです。その土地にだけ合う家、その人にだけ合う家が、嵯峨野を愛する人に愛され、向井去来を慕う人に愛されたのです。だからこそ300年の風雪に耐えられたのです。

繰り返しますが、決して贅沢な家ではありません。当時なら何処にでもある普通の家だったでしょう。



大量生産する家にもそれなりの良さがありますが、建てる側の論理で構築された家は、貴方を愛していません。同じお金を掛けるなら家に愛され、自分も家を愛せる家造りを目指してください。そうでないと、月々のローン返済が重荷になります。

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福味健治

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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