ローコストなエコの家の7年後
これからの高齢者住宅に求められるもの。
建物の耐震化
昭和40年代に建てられた住宅は、高度成長期の追い風に乗って建てられています。
当時は質よりも量が要求される時代で、建設業界は旺盛な需要に応えるべく、
量の生産に明け暮れていました。
その結果、建物の質は現在に比べると劣悪で、現在の耐震基準に耐えうる建物は
皆無に等しい状況です。また、建物の劣化に対する概念そのものが稚拙で、シロアリによる
食害に弱く、水廻りの腐朽にも何等抵抗する手段が講じられていません。
合板等の品質も現在とは比べるべくも無く、合板フローリング等は接着剤が
縁切れを起こし、床合板は底が抜ける危険性をはらんでいます。
また、木材の接合は殆どが釘による接合で、耐震金物等は一切用いられていません。
今後30年以内に、80%の確立で関東大震災クラスの地震が、発生すると予想
されている現在、これらの家の耐震化を推進する事が急務なのです。
建物の省エネ化
地球の温暖化に対する懸念が広がっている現在、如何に炭酸ガスを放出する
ことなく生活できるかが課題となっています。
しかしながら、昭和40年代の家には省エネの概念が全く取り入れられていません。
屋根・壁・床・開口部には、今日では断熱化工事を施すのが常識になっていますが、
現在もっとも、ありふれた断熱材であるグラスウールでさえ、市場に出回っていませんでした。
それ故に、現在の家と比較して、光熱費は1.5~2倍掛かり、環境に負荷を与えています。
勿論、浪費するエネルギーはタダではなく、収入に限りのある高齢者にとっても大きな
負担となっています。
バリアに抵抗力を持てる住まい
高度成長期に建てられた家の特徴として、部屋の個室化が挙げられます。
世帯主から子供に至るまで個室が与えられ、個室で多くの時間を過ごしていました。
個室と云っても4.5帖、大きい部屋でも6帖までで、子供が独立した現在は、
子供が残していった、ガラクタが残りもっぱら納戸の機能しか果たしていません。
述べ床面積が大きいわりに、使用している空間は狭く、トイレも階段下とか
小さな空間に追いやられています。
階段も急勾配で、敷居も足を一番引っ掛けやすい3~4cmの高さのものが多いです。
だからと云ってバリアを全て排除することが、今すぐ望まれているのでしょうか?
本当に手摺や段差のない床が求められるのは、脳梗塞等で脳にダメージを
受けない限り、寿命が尽きる1~2年の限られた期間です。
団塊の世代が迎えるこれからの生活の中では、不必要な段差は問題外ですが
全ての段差をなくす、玄関もスロープで出入り出来て生活の全てを平屋で過ごせる
様な家は、かえってバリアに対する抵抗力を失わせる結果になりかねません。
生活の中で知らず知らずのうちに体を動かせる環境を整えるべきではないでしょうか?
脳梗塞の心配があるのなら、なってからの住まいを気遣うのではなく、脳梗塞に
ならない住まい造りを考える方がポジティブではないでしょうか。