建設業界の時間外労働猶予(働き方改革)

鈴木圭史

鈴木圭史

テーマ:法律改正

建設事業は、「働き方改革」において、時間外労働の上限規定が2024年3月31日まで適用猶予となりました。

<猶予対象となる事業の範囲>
建設業(土木、建築、その他工作物の建設、改造、保持、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業)は大企業・中小企業を問わず5年間の適用猶予となります。(建設事業であれば業務に関係なく猶予になるので、経理の業務の方も、工事現場の作業員の方も時間外労働の猶予対象となります。)
一方、建設技術サービス業(地質調査や、建設コンサルタント、建設設計など)は、一般企業と同様(大企業:2019年4月、中小企業:2020年4月から適用)の扱いとなります。

<改正前>
「工作物の建設等の事業」とは、土木、建築、その他工作物の建設、改造、修理、解体等の事業のことです。「工作物の建設等の事業」は、時間外労働の適用除外とされていました。
よって、36協定の限度基準(1か月に月45時間、1年について360時間)がなく、適用除外とされています。

<改正後>2024年4月1日
残業時間の上限
・原則、月45時間、年360時間
・臨時的な特別な事情がある場合(特別条項) 
①年720時間(休日労働含まない)
②2~6か月平均が80時間以内(休日労働含む)
③月100時間未満(休日労働含む)
④原則である月45時間を超えることができるのは、年間6回まで

違反した場合は、半年以下の懲役または、30万円以下の罰金が科せられます。
ただし、災害時における復旧・復興の事業については、②③については適用されません。

<上限規制適用に向けて>
働き方改革に向けて、関係者一丸となった取組や生産性向上や適正な工事設定等が行われることを目的として「建設事業における適正な工期設定等のためのガイドライン」が策定されています。
このガイドラインは、受注者及び発注者が相互の理解と協力が必要なものになっており、双方の役割として、
・「発注者」は、工事の手戻り等による、後工程における長時間労働に繋がらないよう設計図書等において施工条件をできるだけ明確にすること
・「受注者」は、長時間労働を前提とした不当に短い工期とならないよう、適正な工期の下、
設計図等に基づいて完成させ、契約で定めた期日までに発注者に渡すこと。
とされています。

〇工期の設定にあたって
・工事の規模及び難易度
・地域の特徴、自然現象による作業不可能日数(降雨日・降雪等)地域の特徴
・労働者の労働時間及び休日(週休2日に加え、祝日、年末年始及び夏季休暇)の確保
・労務や資材調達、BIM/SIM等の準備期間、現場の片づけ期間
等を考慮し、設定するよう努める。

工期設定等の検討にあたっては、国土交通省の「工期設定支援システム」や「公共建設工事
における工期設定の基本的考え方」、日本建設業連合会の「建設工事適正工期算定プログラ
ム」を参考とするとよいでしょう。また、天災その他の事由により、予定されていた工期に
完了することが困難な場合は、受注者及び発注者の双方で協議し、変更を行うといった対応
が望ましいです。

36協定で定める時間外労働の上限に向け、建設業従事者の長時間労働の是正や、週休2
日の確保等に向け、ガイドライン等を参考に取組んでいきましょう。
(2018年11月現在)

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鈴木圭史
専門家

鈴木圭史(特定社会保険労務士)

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

鈴木圭史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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