消費税率の引き上げ 自社での対応

鈴木圭史

鈴木圭史

テーマ:法律改正

平成31年10月1日より消費税率が8%から10%へ引き上げられます。これと同時に、軽減税率(特定の品目の課税率を低く定めること)が導入され、食料品や新聞は税率が8%のまま据え置かれることとなっています。
これに伴い、自社の商品について、「標準税率」が適用されるものと「軽減税率」が適用されるものを把握し、顧客からの問い合わせに対応できるよう従業員の教育・研修や、納品書・請求書等への影響を洗い出すといった作業が必要となります。
軽減税率の導入に伴う複数税率に対応した仕入れ税額控除として、「適格請求書等保存方式」(インボイス方式)が平成35年10月1日から導入されます。そして、適格請求書保存方式が導入されるまでの4年間、仕入れ税額控除制度として、「区分記載請求書等保存方式」が採用されます。
(平成30年10月末時点)

<消費税の仕組み>
例えば、2000円のお肉を消費者が購入、消費税8%で2160円をスーパーに支払います。そこで、スーパーは消費者から預かった160円をそのまま納税するのではなく、仕入れにかかった消費税を差し引いた額(仕入控除した額)を納税することになります。
軽減税率の導入後、品目により税率が異なるため、控除にも細かい書き込みが必要となってきます。

<区分記載請求書等保存方式>平成31年10月1日~平成35年9月30日
〇区分記載請求書等保存方式とは
現行の「請求書等保存方式」を維持しつつ、区分経理に対応するためのものです。

〇請求書等保存方式との違い
現行の「帳簿の記載事項」及び「請求書等の記載事項」に追加で以下の事項を記入する必要があります。
①「帳簿」…「軽減税率の対象品目である旨」
②「請求書等」…「軽減税率の対象品目である旨」、「税率ごとに合計した税込対価の額」
*仕入れ先から交付された請求書等に軽減税率対象商品の旨等の追加事項の記載がないときは、交付を受けた事業者自らが、取引の事実に基づき追記することができます。

<適格請求書等保存方式(インボイス方式)>平成35年10月1日~
〇適格請求書とは
一定の事項が記載された請求書(納品書)等で、売手が買手に正確な税率や消費税等を伝える手段です。

〇適格請求書を発行できる事業者とは
適格請求書を交付するには、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請」を提出し、登録を受ける必要があります。(登録申請書は平成33年10月1日から提出可能)

〇請求書等に記載すべき事項
区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、「適格請求書発行事業者の登録番号」と「消費税額及び地方消費税額の合計額」を記載する必要があります。

<軽減税率対象商品>
「食品表示法に規定する食品」及び「定期購買契約に基づく新聞(週2回以上発行されるもの)」が対象商品です。
〇食品の軽減税率の取り扱い
・酒類 
酒税法に規定する酒類(アルコール分1度以上の飲料)は軽減税率の対象外とされ、料理酒やみりんも対象外です。一方ノンアルコールビールはアルコール分1度未満の為、軽減税率の適用となります。

・外食とテイクアウト
外食とは食事の提供を行う事業者が、テーブルや椅子等の飲食施設がある場所で食べ物等を飲食させるサービスをいい、軽減税率の適用外となります。カラオケや社員食堂等での飲食料品の提供などがこれにあたります。ケータリングや出張料理等も軽減税率の対象外です。
これに対し、テイクアウトによる飲食料品の提供は軽減税率の適用となります。また、学校での給食や老人ホームで出される食事等は特例として軽減税率の対象とされています。

・一体資産(おもちゃ付きのお菓子等)
価格が1万円以下(税抜き)あって、食品の価格の占める割合が3分の2以上の場合に限
り全体が軽減税率の対象となります。

<税率改定前後の取引における判断基準>
一定の経過措置が設けられている者を除き、改正後の税率は原則、執行日以降に事業者が行う譲渡及び課税仕入れについて適用されます。その為、執行日の前日までの契約に基づき行われる譲渡及び課税仕入れであっても執行日以降に行われるものは新税率が適用されます。
例えば、施行日前に発注した商品が、執行日後(平成31年10月1日)に納品となった場合、執行日後に資産の譲渡等があったことになり、新税率が適用されます。一方、仕入れ先A社が平成31年9月30日に出荷・課税売上にかかる消費税率を旧税率で計算し、執行日後B社が商品を仕入れた場合、A社からの請求書に旧税率の記載がある場合、B社はそれに従い旧税率で計算することになります。

経過措置、税額の計算方法、価格の表示方法、今後軽減措置におけるトラブル(クレームや返品の対応等)を確認しておきましょう。
(平成30年10月末時点)

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鈴木圭史
専門家

鈴木圭史(特定社会保険労務士)

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

鈴木圭史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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