経営者が知っておくべき雇用者が過労死やうつで労災認定を申請した際の対処法

鈴木圭史

鈴木圭史

テーマ:労災認定

労働災害にはさまざまなものがあります。労働災害が目立つのは、製造業や建設業、運輸業、福祉業などです。機械の操作や高所作業、人手不足に起因した長時間労働などで、最悪の場合、死に至ることもあります。この記事では、労働災害の態様のほか、経営者が労働災害に対処するための方法について解説します。

労災認定に至るケースとは?

労働災害は決して起こしてはいけないことです。しかし、ときとして意図しない重大な労働災害が起きてしまうこともあります。労働災害は、常日頃からの注意が大切。まずは労働災害にはどのような場合があるのか把握し、ケーススタディを行うべきでしょう。

言うまでもないことですが、労働災害は業種によって態様が異なります。それでは、労働災害にはどのようなものがあるのか、詳しく見ていきましょう。やはり、労働災害が目立つのは、製造業や建設業、運輸業、福祉業です。製造業では、機械を作動させているときに発生する労働災害が中心です。なかには、死亡事故に至る痛ましいケースもあるため、注意をしすぎてもしすぎることはありません。

例えば、製造業の工場には、CNC旋盤や自動送り装置を備えた丸のこ盤、鋳物砂軽量装置、チップ製造機、プレス機械など、取り扱いに注意すべき機械が備え付けられています。全国では、CNC旋盤に巻き込まれたり、鋳物砂軽量装置の可動部にはさまれ死亡する事例などが散見されます。

長時間労働が過労死を招く

次に建設業の労働災害について見ていきましょう。建設業は、雇用契約の異なる専門技能を持ったさまざまなメンバーが作業しています。一人親方である大工がその代表例でしょう。このような作業環境の場合、報連相の不足によって労働災害が発生してしまう恐れがあります。建設業の現場では、高所作業が多いため、転落や墜落が相次いでおり、最悪の場合、死に至ることもあります。

建設業では、いったん労働災害を起こしてしまうと、労災保険料が上昇し、金銭的な被害をもたらすおそれがあります。有能な現場監督を配置し、いわゆる「ヒヤリハット事例」を朝礼でメンバーと共有するなど、労働災害を減らすための地道な努力が求められるでしょう。

運輸業における労働災害も深刻です。運輸業は、昨今、人手不足が問題となっており、長時間労働を余儀なくされていることから、過労死も散見されます。また、福祉業も人手不足は同様です。これらの業種では、腰痛などの身体的負担を伴う労働災害のほか、うつ病などの精神疾患が目立っています。経営者は、労働災害の態様が身体的なものだけでなく、精神的なものにまで拡大していることをしっかりと記憶しておくべきでしょう。

業務に起因したうつであるか争われる

うつ病などの精神疾患は、原因が業務上にあるかどうかが争点になります。身体的負担による労働災害は、見た目でわかることから、争われることは少ないですが、精神疾患は外部から見ても態様がわからないため、泥沼化しやすいのが現状です。では、もし労働者から労働災害を請求された場合、どのように対処すべきでしょうか。このとき、肝に銘じておきたいのは、労働災害を隠すことは犯罪であることです。労働者から労働災害の請求があった場合は、速やかに対応することが重要です。

労働災害を所轄しているのは、労働基準監督署。経営者は、労働者の請求に基づき、労働基準監督署に連絡をしましょう。その後、労働災害の状況を確認し、必要な報告書を作成することになります。このとき、医療機関から医師の意見書などが必要となるケースもあります。

労働災害がときに泥沼化するのは、経営者と労働者間で言い分が異なるからです。特に、うつ病など、精神疾患の場合は、それが顕著です。本当に業務によって、精神疾患を抱えることになったのか、証明するのは難しいのが実態です。とはいえ、精神疾患のベンチマークとなる資料はあります。それが、厚生労働省が掲げている「心理的負荷による精神障害の認定基準」です。ここには、パワハラなど、職場環境に関する問題のほか、時間外労働の数値や過酷な労働環境に置かれた期間などが明示されているので、必ずチェックしておきましょう。

参考:厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj-att/2r9852000001z43h.pdf

労働災害の多くは、日頃の心がけによって防ぐことができます。まずは、ヒヤリハット事例を共有し、従業員教育を徹底することが大切です。それから、経営者は、利益よりも従業員の命を大切にしていることをしっかりと明示すべきです。そうすることによって、従業員はストレスなく安心して働けるようになります。建設業などでは、ときとして短納期に対応するため、安全よりも仕事を優先する傾向があります。このようなことがないよう、管理を怠らないようにしましょう。

また、精神疾患を防ぐための措置も重要です。近年は、ストレスチェックなど、従業員の心の健康を守るための施策が注目されています。残念ながら、このような施策もかけ声倒れで終わっている現状があります。こういった地道な施策もお題目だけにせず、実効性のあるものにすることが求められています。

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鈴木圭史
専門家

鈴木圭史(特定社会保険労務士)

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

鈴木圭史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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