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コラム

労災認定で労働基準監督署が入ったときの注意事項

2018年6月29日

テーマ:労災認定

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 労働基準監督署 相談

「労災認定」は、どのような要件があれば認められるのでしょうか。労働者災害保険法では、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つを労災の要件としています。労災であると疑いのある事故が起きたら、速やかに労働基準監督署に相談し、指示をあおぐのがベスト。労災が起きると、事業場にとってさまざまなデメリットがあるため、「労災隠し」の誘惑がありえますが、「労災隠し」は犯罪であるとしっかりと覚えておき、対処しましょう。

労災認定には「業務遂行性」と「業務起因性」が問われる

労働基準監督署が入ったときのことを説明する前に、「労災認定」とは果たしてどういうものなのか概要を押さえておきましょう。「労災認定」とは、業務に起因して発生した災害であると労働基準監督署が認定することです。ここで重要なことは「業務に起因して」という部分。つまり、業務以外、例えば従業員がレジャーで海に行き、海難事故にあってしまったというプライベートなケースでは、当然ながら労災とはならないわけです。

では、「業務に起因して」いるという点は、どのような要件があれば、そう認められるのでしょうか。労働者災害保険法では、労災の要件を「業務遂行性」と「業務起因性」の2つとしています。「業務遂行性」とは、文字通り、「業務中であったか否か」が焦点となります。この判断はなかには微妙なものもあります。

例えば、休憩時間に従業員が外出し、けがをしてしまったというケースです。この場合、プライベートな時間なので、「業務遂行性はない」という見解が一般的ですが、外出の内容によっては労災になる可能性はあります。あくまで個別判断になることはしっかりと覚えておきましょう。

一方、「業務起因性」は、文字通り、「事故の原因が業務に起因しているかどうか」です。視力が低下した人を例にとって「業務起因性」を考えてみましょう。工場で毎日細かな作業を長時間しているケースでは、視力低下の原因は業務に求められるかもしれません。その一方で、スマートフォンで長時間ゲームを楽しんでいた場合、個人の責任に帰するかもしれません。要は、同じ「視力の低下」という結果であっても、そのプロセスが業務に起因しているかどうか、個別に判断されるわけです。

労災の可能性のある事故が発生したら労働基準監督署に相談する

さて、ここからはケーススタディを行いましょう。建設会社の従業員が工事現場で骨折した場合を考えてみます。まず事故が起こるとその原因を探ります。このとき、業務中であれば、労働災害を疑うことが必要でしょう。労働災害を所轄しているのは、労働基準監督署。経営者は、労働災害の疑いがあれば、労働基準監督署に速やかに連絡をしましょう。その後、医師の意見書など、必要な報告書を作成するよう指示されます。

この工事現場のケースでは、労災の2つの要素に基づき「業務遂行性」と「業務起因性」が判断されます。例えば、鉄骨を運んでいて誤って足に落としたことにより、骨折したという場合は、どちらの要素も満たしているので、労災であると考えて間違いないでしょう。

一方、休憩時間中に野球をしていて、硬球が鉄骨の束に当たり、鉄骨が落下したことで骨折した場合は、少なくとも「業務起因性」がないと考えられるため、労災とは言えないかもしれません。とはいえ、労災認定は先述した通り、ケースバイケースで判断されます。労働基準監督署に労災について相談をした後は、労災のプロフェッショナルである労働基準監督官が調査を行うので、その指示に従いましょう。

なお、労災保険の内容は「療養補償給付」「休業補償給付」「その他の保険給付」と3つあります。「療養補償給付」とは、診療にかかった費用を給付することです。

労災の疑いのある事故が発生した場合、余裕があれば労災保険指定医療機関に行くのが賢明です。そうすれば、労災の給付について、さまざまなアドバイスがもらえるでしょう。

次に「休業補償給付」です。労働災害により休業した場合、第4日目から給付が行われます。ただし、休業4日未満の場合は、使用者が労働者に対して休業補償を行う必要があるので注意しましょう。「その他の保険給付」は、障害補償給付、葬祭料など、多数あります。必要に応じて調べてみるとよいでしょう。

「労災隠し」は犯罪であり司法処分が科されることもある

使用者は労働者が安心安全に働ける環境を提供する必要があります。これを労働安全衛生法では「安全配慮義務」と呼んでいます。使用者は労働者の健康を守る義務があるわけです。しかしながら、さまざまな条件が絡み合い、労働災害が起こってしまうこともあるでしょう。その際に散見されるのが「労災隠し」です。

「労災隠し」とは、労災があったことを労働基準監督署に対して隠すことです。繰り返し書きますが、使用者は労働者の安全安心を守る必要があります。「労災隠し」は悪質な犯罪なので、絶対に行ってはいけません。

「労災隠し」が発見された場合、労働基準監督署より然るべき措置が取られます。最悪の場合では、司法処分を含めた厳正な措置も覚悟しなければなりません。また、建設事業無災害表彰を受けた事業場にあっては、無災害表彰状を返還させる措置が取られます。さらに、メリット制の適用がある事業場では、還付金の回収が行われる恐れもあるので、注意しましょう。

この記事を書いたプロ

鈴木圭史

労務相談の専門家

鈴木圭史(ドラフト労務管理事務所)

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