パチンコにおける労務トラブル事例

鈴木圭史

鈴木圭史

テーマ:労務トラブル

パチンコ業界が苦境に直面しています。右肩下がりで売り上げが減少し、給与面での魅力が薄れるなか、人が集まりにくくなっています。

パチンコ店は一般的に13時間もの長時間営業であるため、長時間労働が常態化しています。そのため、未払い残業代や精神疾患など、さまざまな労務トラブルが発生しています。

この記事では、パチンコ店における労務トラブルの事例とその解決策の一例について解説します。

人手不足が労務トラブルを呼ぶ

パチンコ業界では労務トラブルが多発しています。パチンコ店は地域によって差がありますが、10時~23時営業が一般的です。

パチンコは基本的にパチンコ機に依存する設備型のビジネスであるものの、13時間もの営業時間を円滑に回すためには、正社員はもちろん、パートやアルバイトを含めた適正な労務管理が必要不可欠になっています。

近年は、人口減少に伴い、各業界で人手不足が顕在化しています。パチンコ業界もそのあおりを受けており、人が集まりにくくなっています。そのため、従業員ひとりひとりの負担が大きくなる傾向にあり、長時間労働がはびこっています。

また、パチンコ業界ではさまざまな規則改正が行われ、売り上げが右肩下がりで落ち込むなか、従業員は利益管理にまで気を遣わざるを得ない状況になっています。

パチンコ業界は高時給であるため、求人を出せば人が集まっていました。しかし、人口減少社会に入り、その状況は変わりつつあります。適正な労務管理なしには、人を採用することはより一層困難になるでしょう。

また、たばこや騒音など、職場環境の悪さを懸念して、応募を避ける傾向があるのも事実です。年々喫煙率が下がるなか、職場環境の整備も人材採用と定着においては必須のことでしょう。

長時間労働が常態化しているパチンコ業界の労務トラブル事例

それでは、パチンコ業界における労務トラブルの典型事例について解説します。

真っ先に挙げられるのが「長時間労働」です。これまでのコラムでも解説してきた通り、「長時間労働」はさまざまな労務トラブルを発生させます。その一例は「残業代」。

労務管理意識の高まりやブラック企業への糾弾が激化するなか、労働者が残業代を請求する動きが顕在化しています。パチンコ業界は先述した通り、営業時間が長く、人手不足であるため、どうしても長時間労働になりがちです。そのため、残業代がかさむ傾向にあります。

残業代の支払いを避けようと、「名ばかり管理職」を乱用する傾向も見られます。「名ばかり管理職」とは、管理監督者としての名称を与えられているものの、実質的な監督権限はなく、ほかの労働者と立場が変わらない者のことを指します。

管理監督者には残業代を支払う必要がありません。この管理監督者のメリットを悪用して、残業代の支払いを回避しようとするパチンコ店があります。

飲食業界を中心に「名ばかり管理職」に関する問題がクローズアップされ、改善が進んでいますが、いまだによく見られる事例です。

長時間労働による弊害で次に挙げられるのが「メンタルヘルス」でしょう。長時間労働が続くと、精神疾患を患い、労働者は休職や退職に追い込まれる恐れがあります。

近年、国はメンタルヘルスに対する健康確保措置を講じるよう、事業所に働きかけています。精神疾患は、骨折など、一目でわかる特徴がないため、迅速に気づくことができないのが実態です。店舗運営を担う大切な従業員が精神疾患になる恐れを軽減するため、保健師による面談など、メンタルヘルスの健康確保措置をしっかりと講じたいものです。

パチンコ経営で重要な労働時間管理

パチンコ店では適正な労務管理が必須です。そのためにまず始めたいのが「労働時間管理」です。

パチンコ店は、絶えず客が出入りする場所であるため、休憩を取りにくい状況があります。人手が薄い時間帯は、休憩時間を返上して働いている従業員もいることでしょう。
こうした従業員の善意に甘えていては、今後の経営は立ちゆかないでしょう。

店舗の繁閑を予想して、適切に休憩時間を与えることが必要です。休憩時間は、労働時間が6時間未満の場合はなし、6時間以上8時間未満の場合は45分間、8時間以上の場合は1時間与える必要があります。

例えば、9時間働く従業員がいる場合、1時間休憩時間を与えなければなりませんが、15分と45分というように分割して与えることも可能です。休憩時間を工夫することで、従業員の生産性に対する意識が高まるなど、労務トラブルの防止だけでなく、さまざまなメリットを感じることができるでしょう。

今後、パチンコ業界は、人手不足が顕在化するなか、さらなる生産性の向上を求められます。近年、パチンコ球やメダルを自動で計測するシステムが普及しつつあり、人手不足解消に役立っています。

また、メンタルヘルスをはじめとした従業員の健康確保措置も大切でしょう。喫煙や騒音による健康被害は後を絶ちませんので、それを軽減していけるような対策を講じることが大切です。

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鈴木圭史
専門家

鈴木圭史(特定社会保険労務士)

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

鈴木圭史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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