向き合う間に透明のカベ
今回の「認知症遠距離介護者日記」は
認知症と診断されたお袋が
まだ訪問介護を受けずに独居生活を
している頃の話。
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お袋は、糖尿と心臓に加えて
認知症の薬まで増え、薬のオンパレード。
私でも飲み忘れるような種類と量を
飲まなければいけないのに
ほとんど飲み忘れていたのです。
それが判明したのが、
病院の検体検査で思わしくない
結果が出てしまい、やむなく、
訪問介護を依頼することにしました。
同日検査した脳のMRIの検査結果は、
まだ脳の萎縮はなかったけれど
過去の梗塞が脳に数カ所あった。
認知症の症状の直接の原因は前頭葉の
一部の血管に問題があるかもしれない。
とのこと、詳しいことは
血流検査しないと解らないとのこと。
循環器内科の検体検査の結果で
主治医からこっぴどく叱られたので、
検査結果をお袋に少し大袈裟に
こう伝えてやった。
「お袋の頭の中は、爆弾がいつ爆発しても
おかしくない状態だったぞ」
このように言ったところ、
お袋が「爆発」という言い回しが気に入ったらしく
「私の頭はいつ爆発するか分からんのか?ありゃりゃ」
と楽しそうに言うようになった。
危機感を煽って薬を飲まそうとしたが、
逆効果で本人は言葉遊びを楽しんでいる。
認知症の症状が大きく出始めたのが
今年の1月で、私が最も辛い時期だったのが2月。
認知症を受け入れられないまま、出口の見えない
長い長いトンネルに入った時期でした。
自分の仕事を犠牲にしながらやっているのに
お袋から泥棒呼ばわりされ、情けなさと怒りで
お袋を罵倒しては後悔という繰り返しで
電話をするのさえ、億劫になっていました。
そんなお袋が、
私のことを信頼してくれるようになったのは
これらの中に理由があるのかもしれない。
行動したこと
・実家に届く請求書の全てを京都に転送し、
・彼女の財布からお金が出ていかないようにした。
・請求を年金の通帳から引き落とす手続きを取り
・一目瞭然で出費の流れがお袋に解るようにした。
・年金を引き出す時には必ずお袋と二人で行き、
・私と行かないと引き出せないことを認知させた。
・通帳を管理する」と言わずに
・「お袋の大切なモノを守らせてほしい」と言って
・帰郷した際には記帳した通帳を本人に確認してもらう。
精神的なこと
・1人住まいをしていても、多くの人が見守っている
・ことを伝えてお袋の存在感を大切にした。
・「こんなことをしてはダメ!」という否定形を
・会話に使わず、「こうした方が良いと思うよ」
・という肯定形を使うようにした。
・たまに出るお袋の激しい言葉を流すようにした。
・彼女の妄想を否定せず、私も妄想の中に入り込んで共感した。
・妄想の中に登場する人物に興味を持つようにした。
これを実践し始めて、しばらくすると、
徐々に信頼関係ができてきた。
「認知症は何を言っても忘れる」
と決めつけずに、何度でも諦めずに
愛情を持った言葉を刷り込んでいくと
本人にとって潜在意識を刺激する
言葉があるはずです。
全ての人に当てはまるとは思いませんが、
やってみる価値はありますよね。
【小さな実践】
健常者の脳も否定語は理解できないので
普段から肯定語を使う習慣にすることで
相手がどのように変化するか観察してみる