前略 墓の中から 第3章 風にのってる? 最終回
家族や先祖が眠るお墓。
兄弟はみな誰かがと思っていたが、問題はそこになく
一族が繋がっているということすらしっかり認識していなかったと反省した。
「離れていても護り方ってあるよな。誰もやらないっていえばお墓は片付けて、今はやりのビルの中の立駐みたいなお墓にしてしまおうと思っていたんだ」
長男が話を切り出した。
「ただ母さんとだけは一緒にしてやりたいなと思っていたんだけどそれもちょっと間違っていたみたいだな。おやじはおれたち子どもを含め自分の親のことも大切にする人だったからご先祖様と一緒に眠る選択をしなくちゃいけないな。
今すぐ、お墓に対しての結論を出すのではなくて、しばらくは今のお墓に行ってもらうのがおやじにとっての最良の選択だと思う。
お墓は相続税にも関係しないし、みなが一度引き受けられないという気持ちもあったわけだからそこも踏まえてしばらくは俺が管理してみる。海外赴任するときなんかは通知だけは兄弟の誰かの住所に届くようにするからその時はあとで精算するからたのむよ」
長男の一言にみなうなずいた。
そして納骨の日。
ナオキは生まれ育った場所の寺院のお墓の前に戻ってきた。
納骨が済み、兄弟で談笑が続く中、次女はいままでかんがえていたことを皆にはなしだした。
「うちは旦那の家のお墓あるじゃない、お義父さんとお義母さんしか入っていないから、今日納骨ができない状況だったら、お母さんのお骨を墓地から取り出して、お父さんと一緒に私の家のお墓で引き取ろうかと思っていたの。
でも、それってご先祖様と一緒に入るお墓があるのに違う家族のところに間借りするわけじゃない。だからずっと悩んでて口にだせなかったの。
それって、お父さんが嫌がっていた『出向』みたいなものじゃない。」
みな、噴き出した。
もちろんご先祖様と妻と一緒のお墓に入ることのできたナオキももちろん噴き出した。
「いつまでも半人前の子どもたちと思っていたけど、4人集まれば2人前。
これって倍返しだな。。。」
一人前になった子どもたちが選んでくれた選択にナオキは満足し安らかに眠りについた。