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大橋理宏(おおはしまさひろ) / 石工技能士

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コラム

前略 墓の中から 第5章 まさかの出向 その3

2013年10月3日 公開 / 2020年8月25日更新

テーマ:故人の気持ちになってみた

コラムカテゴリ:冠婚葬祭

コラムキーワード: お墓

遺言はすぐに見つかった。

兄弟はその内容に誰も文句をいうものもいなかったが肝心の「お墓」についてはとうとう出てこなかった。

遺言を託されていたナオキの友人の司法書士の話では、エンディングノートも書いていたようだということだけはわかった。

遺品整理をする前にノートをみつけなければナオキの意志がわからない。

ふと次女が言った。

「お父さん、いつも銀行マンの名残か、帳簿というか家計簿みたいなの付けていなかったっけ?」

そう気にも留めていなかったそのナオキの家計簿こそがエンディングノートだったのである。

「得意の≪疎開資料≫の隠し場所は身近なところにってことだね。生前おやじとよく話したな」

金融マンの長男はふとナオキと仕事の話をしたことを思い出しほくそえんだ。

こどもたちへの財産分与の緻密な計算から始まり、様々な想いや苦悩がつづられていた。

そして、お墓に関するメッセージが出てきた。

「親として面倒を掛けたくないという気持ちもあるが、今あるお墓はあなたたちの母も眠るお墓です。
私はそこで一緒に眠ると約束もしました。
そして、志半ばで人生を断ったあなたたちのおじいさんの眠るお墓でもあります。
お墓を誰に託すのが良いのかずっと悩み、結論はでず投げかけだけをしていく状態でこの世を去るかもしれません。
強制はしません。
しかし、想いがあることだけは知っておいてください。」

一同はハッとさせられた。

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