前略 墓の中から 第4章 ここはどこ?わたしは・・・最終話
お祀りは終わり、よりしろから離れたがまだそう遠くない。
家族がタイミングよくマサオの聞きたかった質問を神官さんにした。
「お父さんの魂ってお墓にはないんですか?」
「そうですね、お墓にはというよりご遺骨に御霊が宿っているわけではありません。」
「魂と遺骨って別々なんですか?」
「そうなりますね。お骨に関しては「穢れ(けがれ)」として扱います。御霊は神聖なものとなりますので別になるのです。」
マサオはなんとなく理解した。だからお墓にはいることができないということを。
御霊の意識として今自分があることを。
家族はさらに突っ込んだ部分を聞いた。
「魂がお墓に入っていないなら、お墓参り、いやお墓そのものがいらないんじゃないですか?」
マサオはどうせいつも来てないのにそこを突っ込むかと苦笑いしたが、言われてみればそうである。
この空中浮遊状態はいつまで続くのかそこもきになる。
「お墓は奥津城(おくつき)と表現され祝詞のなかにも出てきます。神道でけっして不要な存在ではないんですよ。そして、故人が存在した証でもある、『亡骸(なきがら)』がお骨となるわけです。
亡骸は先ほど言ったように穢れであり、それを預ける場所に一つの線を引くためにお墓は必要になると思います。失礼な話かもしれませんが神官はお骨=穢れなので直接触れません。ですがお墓には触れます。
いくらご家族の亡骸とはいえ、穢れとともに過ごすことはお勧めできません。そういった意味も含め、一つの仕切りとしてお墓はあるべきだとおもいますよ。」
「そういうことだったんですね。」
「御霊は私ども神社の中にある祖霊をまつる社殿がありますのでそちらでお預かりさせていただいております。ですが今日のように神籬(ひもろぎ)というよりしろにお招きすることもできるんですよ」
よくぞ聞いてくれた。マサオの疑問は9割解決しました。
空中浮遊状態はもしかしたら呼び出されているからなのかもしれない。でも知っている人がいなくなったら呼び出されなくなる。その辺のことが気になる。
「最後に、御霊はこのあと毎年でも結構なのです、3年祭、5年祭、10年祭、20年祭この先は10年ごとにお祀りがあります。そして50年祭をもって祀り上げとして、そのあとは神様となられます」
「49年後に俺って『神』?」
なぞはすべて解決したわけではないが、何となく照れくさくなって笑った。
おわり